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答弁本文情報

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平成十三年七月十七日受領
答弁第一三五号

  内閣衆質一五一第一三五号
  平成十三年七月十七日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員保坂展人君提出検事らの待遇と死刑執行などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出検事らの待遇と死刑執行などに関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 検事(検事総長、次長検事及び検事長を含む。)及び裁判官の各号俸ごとの年間給与額は、別表一のとおりである。

一の(2)について

 国家公務員の給与の比較対象となる民間企業の従業員の給与については、人事院が毎年「職種別民間給与実態調査」を実施、把握しているところである。同調査は、職種別の月例給与を調査するものであるため、民間企業の従業員の平均年収(年齢計及び四十歳以上)の集計は行っていないが、「平成十二年職種別民間給与実態調査」を基礎として、企業規模百人以上の民間企業に勤務する管理的業務を行う代表的な役職である事務部長及び事務課長の平均年収(全国及び東京都)を試算したものは、別表二のとおりである。
 ちなみに、厚生労働省が実施した「平成十二年賃金構造基本統計調査」(十人以上の常用労働者を雇用する民営事業所を対象)を基礎として、企業規模十人以上の民間企業に勤務する従業員(パートタイム労働者を除く。)の平均年収を試算したものは、別表三のとおりであり、また、国税庁が実施した「平成十一年民間給与実態統計調査」(従業員一人以上の民間事業所に勤務する給与所得者(パートタイム労働者を含む。)を対象)によれば、民間事業所に勤務する給与所得者(一年を通じて勤務した者に限る。)の平均年収は、別表四のとおりである。

一の(3)について

 戦後、裁判官の給与については、裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第六十五号)が、また、検察官の給与については、検察官の俸給等の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第六十六号)が制定、施行されたが、昭和二十三年に政府職員の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第十二号)が制定、施行された結果、一般の政府職員の給与体系が確立されたことに対応して、裁判官については、その職務と責任の特殊性にかんがみ、現行の裁判官の報酬等に関する法律(昭和二十三年法律第七十五号)が、また、検察官については、その職責の準司法官的性格を重視し、他の一般行政官とは異なり、裁判官に対する待遇に準じた待遇を行うべきものとして、現行の検察官の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第七十六号)がそれぞれ制定、施行された。
 その後、一般の政府職員の給与改定に伴い、金額においておおむね対応する一般の政府職員の俸給の増額に準じて裁判官の報酬及び検察官の俸給の改定が行われるなどして、現在の水準となっている。

一の(4)について

 法務省の所掌事務の中には、司法制度に関する法令、民事及び刑事の基本法令の立案、訴訟事件の遂行、検察に関する事項等法律に関する専門的な知識・経験を要する事務が多く、これらの事務を適正かつ能率的に行うためには、法律の専門家として検事などの実務経験を有する者から担当者を任用する必要がある。
 しかし、検事の職にある者を事務官に転官させることは、検察官の身分保障との関係で、人事行政上困難であることから、一部の検事を検事のまま、法務省の職員(検察庁の職員を除く。)に充てることができるとされており、したがって、その給与についても、検察官の俸給等に関する法律等が適用されている。
 また、裁判所においては、最高裁判所事務総局において司法行政上の事務に携わる裁判官は、裁判官としての身分を保有しているので、裁判官の報酬等に関する法律に基づく報酬等を受けている。このような扱いをしているのは、裁判官を事務総局に勤務させる際に裁判所事務官に転官させると、給与面で相当額の減額を余儀なくされ、経済面での不利益を受けることになり、一時的であれ裁判官の身分を失うという身分上の不安もあって、適任者を得られないおそれがあるためと承知している。

一の(5)について

 事務次官と同額以上の給与を受けている検事(検事総長、次長検事及び検事長を含む。)は、平成十三年七月一日現在で六十四名である。
 また、事務次官と同額以上の給与を受けている裁判官においては、同日現在で二百五十一名と承知している。

一の(6)について

 財務省主計局の担当官が財政当局の立場として、裁判官及び検察官の増員について国民の理解を得るためには、増員の必要性の検討と併せて、給与制度の在り方等についての検討も必要ではないかとの考え方を関係省庁や国会議員等の関係者との意見交換の中で述べたことはあると承知している。

一の(7)について

 御指摘のような事実は承知していない。

一の(8)について

 平成十三年七月一日現在、検事出身の公証人は二百二十九名、裁判官出身の公証人は百五十五名である。

一の(9)について

 平成十三年七月一日現在、公証人五百三十八名中、検事又は裁判官の出身者は三百八十四名である。公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第十二条に基づく試験は、一度も実施されていない。

一の(10)について

 お尋ねの検事及び裁判官の人事制度及び給与制度については、今後の司法制度改革や公務員制度改革の動向等を踏まえて、政府及び裁判所において検討を進めていく必要があると考えている。

二の(1)について

 本年六月二十五日に欧州評議会の議員会議(以下「議員会議」という。)がオブザーバー国である日本とアメリカ合衆国(以下「米国」という。)の死刑制度に関して行った決議内容の主要な点は、次のとおりである。
 1 議員会議は、場所のいかんにかかわらず死刑執行を非難し、特に、人権の尊重を約したオブザーバー国における死刑執行について懸念を有している。議員会議は、少年の犯罪者、精神病又は知的遅延を持つ者に対して死刑を執行すること及び死刑判決に対する強制上訴制度を欠いていることを非難する。また、議員会議は、日本及び米国の死刑囚房において精神的な苦痛がこう進する状況(以下「死刑囚房現象」という。)を懸念する。
 2 議員会議は、死刑制度に対する公衆の高い支持のような両オブザーバー国における死刑制度廃止に対する種々の障害を認識するが、これらの障害は欧州の経験が示すように克服することができ、また、克服すべきものである。
 3 日本と米国がオブザーバー資格を与えられた時点で、欧州評議会の死刑制度に対する見解は明確ではあったが、すべての欧州諸国において必要な措置が採られていない状況であった。今日、欧州評議会は、死刑の執行を行う国を受け入れない。死刑制度の適用は、人権の最も基本的な生命に対する権利、拷問や非人道的で品位を傷つける取扱いから保護されるべき権利等の侵害である点を踏まえ、議員会議は、日本と米国がオブザーバー資格に関する決議の下での義務に違反していることを認めている。
 4 議員会議として、日本と米国に対して次に掲げることを要求する。
 @ 遅滞なく死刑執行に関するモラトリアムを実施し、死刑制度廃止に向けた必要な手段を採ること。
 A 死刑囚房現象の軽減(執行にかかわるすべての秘密性及び権利と自由のすべての不必要な制限の終了並びに判決後及び上訴後の司法的見直しへのアクセスの拡大を含む。)を目的として、死刑囚房における条件の改善を図ること。
 5 議員会議は、日本及び米国が死刑執行に関するモラトリアムを実施し、死刑制度を廃止することを支援するために、あらゆる措置を採ることを決意する。この目的のために、議員会議は、日本及び米国の議員とのあらゆる形態の対話を促進し、死刑執行に関するモラトリアムの実施と死刑廃止に向けた立法者の努力を支援し、死刑廃止反対論者を情報に基づく討論に関与させていく。
 6 議員会議は、死刑制度廃止に関して、欧州評議会と日本及び米国との間の価値の基本的な相違を深く嘆き、両オブザーバー国にその相違を無くすために真剣な努力を行うよう促す。議員会議は、二千三年一月一日までにこの決議実施に関して何ら著しい進展が認められない場合に、欧州評議会全体における日本と米国のオブザーバー資格の継続を問題とすることを決定する。

二の(2)について

 死刑制度の存廃等の問題については、基本的には、各国において、当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものと考えている。
 政府としては、死刑の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当でないと考えている。そして、右に述べたとおり国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えていること、死刑の執行が停止された後にこれが再開された場合に非人道的な結果になりかねないことなどにかんがみると、死刑の執行を停止することも適当でないと考えている。
 また、死刑囚房現象への対応について、我が国では、拘置されている死刑確定者等に対しては、その心情の安定が得られるよう種々の配慮に努めているところである。こうした死刑確定者の心情の安定を図りつつその身柄を確保するという収容の目的等にかんがみ、死刑確定者の面会や信書の発受等について一定の制約を設ける取扱いはやむを得ないところであり、これらが不必要な制限であるとは考えていない。また、死刑執行に関する情報の公開については、国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表することは、刑の執行を受けた者やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えること、他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないことなどの問題があるが、他方で、情報を公開することにより、刑罰権行使が適正に行われていることについて国民の理解を得るとの要請もあり、可能な範囲で情報を公開する必要があるものと考えられるので、死刑執行後に執行の事実及び執行を受けた者の人数を公表することとしている。そして、我が国の刑事司法手続においては、捜査段階から被疑者に対して弁護人を選任する権利が保障されている上、死刑事件の公判段階では必ず弁護人が付され、上訴については、法制上、三審制が保障され、さらに、死刑判決確定後も、再審制度が保障されている。
 今後も、欧州評議会の様々な活動に協力し、友好関係を保ちつつ、死刑制度をめぐる論議等に関しては、我が国の実情、考え方について理解を得られるよう努力したいと考えている。

二の(3)について

 具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

二の(4)について

 経済的な困窮状態が犯罪の動機の一つとなったと認められた事案はあるが、経済的な困窮状態と犯罪との関係については、事柄の性質上、一概にはお答えできない。

二の(5)について

 死刑を執行された者及び死刑確定者の給与は、これを正確に把握することは困難であり、プライバシーに触れるおそれもあるのでお答えできない。

二の(6)について

 現行法上、死刑は、確定判決に基づき、法務大臣の命令により、検察官が監獄の長にその執行を指揮し、監獄の長の職務上の命令に従い職員が執行することとされている。また、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百七十七条第一項は、「死刑は、検察官、検察事務官及び監獄の長又はその代理者の立会の上、これを執行しなければならない。」と規定している。
 死刑の執行の指揮及びその立会いは、死刑の執行が死刑を宣告した確定判決に基づいて法令に従い適正に行われるよう監督するとともに、その執行を確認するためのものであるところ、これらについては、検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第四条の定めるところにより裁判の執行の監督を職務とする検察官が行うこととし、他方、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第七十一条第一項の定めるところにより死刑は監獄内の刑場において執行するものとされているところ、その執行については、刑の執行を職務とする監獄の職員が担当するとともに、その執行の責任者として監獄の長又はその代理者が立ち会うこととしていることは、いずれも相当であると考えている。
 このような現行制度を含め、我が国の死刑制度に関して、欧州評議会の理解を得られるよう努力したいと考えている。

二の(7)について

 法務省においては、職員が、国会議員その他の来訪者と面談するに際しては、適切な対応に努めているものと考えている。


別表一

別表二 人事院「平成十二年職種別民間給与実態調査」を基礎として試算した事務部長及び事務課長の平均年収

別表三 厚生労働省「平成十二年賃金構造基本統計調査」を基礎として試算した民間企業従業員の平均年収

別表四 国税庁「平成十一年民間給与実態統計調査」による民間事業所に勤務する給与所得者の平均年収


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