答弁本文情報
平成十三年十月二十六日受領答弁第七号
内閣衆質一五三第七号
平成十三年十月二十六日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員佐藤謙一郎君提出国営諫早湾干拓事業の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員佐藤謙一郎君提出国営諫早湾干拓事業の見直しに関する質問に対する答弁書
一について
諫早湾周辺地域は、極めて低平地であることから、これまで幾度となく高潮・洪水の被害を受け、また潮汐の影響及びガタ土の堆積によるミオ筋(流路)の埋没によって円滑な排水に支障が生じていた。
このため、国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)では、潮受堤防で諫早湾の一部を締め切り、内部堤防との間に調整池を設けることによって高潮の防止と洪水時の円滑な排水を可能とする干拓方式によることが、既存堤防の強化や排水ポンプの整備等を行うことと比較し、防災機能の点で有効かつ効率的であると判断して実施しているものである。
本事業については、既に平成九年四月に諫早湾の一部を潮受堤防で締め切り高潮を防止するとともに、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理して、潮汐の直接的な影響を受けることなく河川、排水路等から調整池への排水が速やかに行われることにより、大雨時でも洪水被害の軽減が図られるなど、これまでに防災機能が発揮され、地元から高い評価を得ているところである。このような中で、御指摘のような別事業による背後地防災対策に切り替えることは適切ではないと考えられる。
なお、御指摘の「開門調査」については、現在、農林水産省有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(以下「委員会」という。)において、その内容及びそれを実施するために必要な対策について議論がなされているところであり、農林水産省においては、委員会での結論を踏まえ、「開門調査」を実施するためにどのような対策が必要かを検討することとしている。
御指摘の「有明海異変」については、本年三月二十七日の委員会で取りまとめられた「委員長まとめ」を受け、農林水産省において、関係省庁等と共同で有明海の環境悪化の現状把握と原因解明のための調査を実施しているところであるが、有明海の環境悪化と本事業との関係については、現時点では判明していない。
なお、潮受堤防については、一についてで述べたように、既に防災機能を発揮させ、地元から高い評価を得ているところであり、撤去することは考えていない。
本事業については、平成十三年度における国営土地改良事業の再評価の一環として、本年八月二十八日に出された農林水産大臣談話のとおり、防災機能の十全な発揮、既に干陸し整備されつつある土地の早期の利用、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守の四つの視点に立って、本事業地域において「農と緑と水辺空間」の実現が達成されるよう総合的な検討を行っているところである。
なお、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)においては、国が干拓を行う場合における干拓区域の縮小を禁止し、又は制限する規定はない。
本年九月二十日に委員会から発表された「有明海のノリ不作の対策等に関する中間取りまとめ」においては、平成十二年度のノリ不作の主な原因については、かなり異常な気象・海象によって発生した大型珪藻の赤潮によるものとされているが、農林水産省においては、引き続き、関係省庁等と共同で有明海の環境悪化の現状把握と原因解明のための調査を実施することとしている。
いずれにしても、本事業については、地元の要望に沿って、防災機能の強化と優良農地の造成を目的に着実に実施してきたところであり、三についてで述べたように、現在、総合的な検討を行っているところである。