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平成十四年三月二十六日受領
答弁第二八号

  内閣衆質一五四第二八号
  平成十四年三月二十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員大島令子君提出デジタルテレビ放送地上波送信塔などにおける電磁波に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員大島令子君提出デジタルテレビ放送地上波送信塔などにおける電磁波に関する質問に対する答弁書



一について

 総務省を始めとする厚生労働省、国土交通省等の関係省庁、通信機械工業会等の関係団体等により構成される不要電波問題対策協議会が行った詳細な実験によれば、携帯電話を一部の機種の植込み型心臓ペースメーカに極めて近接した位置で使用した場合には、携帯電話から発射される電波が当該植込み型心臓ペースメーカの内部に混入して、心臓を規則的に動かすための電気信号の発生を抑制する、その発生の周期を不適切なものに変える等、植込み型心臓ペースメーカの誤動作を引き起こすことがあるとされている。また、これらの誤動作は、植込み型心臓ペースメーカ装着者に、めまい、動悸等の異常を感じさせることがあると承知している。
 しかし、仮に植込み型心臓ペースメーカの誤動作が生じたとしても、携帯電話を当該植込み型心臓ペースメーカから離すことによってその機能は直ちに正常に復することから、実際に、携帯電話から発射される電波が植込み型心臓ペースメーカ装着者の健康に好ましくない影響を及ぼす危険性は極めて少ないものと考える。
 なお、不要電波問題対策協議会が右の実験の結果に基づき平成九年三月二十七日に策定した「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」は、携帯電話を植込み型心臓ペースメーカから二十二センチメートル以上離して使用すれば、当該植込み型心臓ペースメーカの誤動作が引き起こされる心配はないとしているところである。

二について

 お尋ねの「基準」とは、世界保健機関(以下「WHO」という。)と連携して活動している国際非電離放射線防護委員会(以下「ICNIRP」という。)が平成十年四月に「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン」(以下「国際ガイドライン」という。)において定めた電波の強度等の基準を指すものと考えるが、現在、WHO又はICNIRPがこの基準の見直しを行っているとの事実はないものと承知している。
 なお、WHOは、電波が人体に与える影響についてより明確な知見を得るため、平成八年に開始した国際電磁界プロジェクトにおいて各国で得られた研究成果の評価等を実施しており、平成十七年にその結果を取りまとめる予定であると承知している。また、ICNIRPは、国際電磁界プロジェクトの結果が公表されれば、これに基づく新たな科学的根拠により検討を行い、必要があれば、右の基準の見直しを図るものと承知している。

三について

 電磁波は周波数によりその性質が異なるため、それが人体に与える影響について一概にお答えすることは困難であるが、例えば、無線通信に用いられる電波で非常に強いものを人体にばく露した場合に、ばく露された部位に温度上昇が生ずるという熱作用等が知られており、国際ガイドラインにおいては、血流がなく熱拡散が生じにくいため最も熱作用を受けやすいと考えられる眼球に、局所比吸収率で毎キログラム当たり百三十八ワット相当となる電波を二時間又は三時間ばく露すると白内障が生ずることが報告されている。
 また、WHOの国際電磁界プロジェクトにおける検討等の参考資料とされている報告のうち、無線通信に用いられる電波を人体にばく露した場合に、ばく露された者の年齢又はばく露された電波の波長の違いにより、ばく露された者に異なる疾患が生ずることを示したものはないと承知している。

四の@及びAについて

 お尋ねの「電磁波被曝の制限基準」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、無線通信に用いられる電波については、それが人体に好ましくない影響を与えないよう、電波の電界強度、磁界強度及び電力束密度の基準(以下「電波の強度の基準」という。)が電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三及び別表第二号の二の二で定められており、また、携帯電話端末等の局所比吸収率の基準(以下「局所SARの基準」という。)が無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二で定められているところである。
 電波の強度の基準は、我が国、諸外国及び国際ガイドラインにおいてそれぞれ電波の周波数等に応じて細かに区分して定められているため、それらの基準のすべてを対比してお答えすることは困難である。一例をお示しすれば、地上アナログテレビジョン放送に用いられる超短波帯の周波数の電波については、電界強度の基準(上限)は我が国及び米国では毎メートル当たり二十七・五ボルト、英国及び国際ガイドラインでは毎メートル当たり二十八ボルトであり、電力束密度の基準(上限)は我が国、米国、英国及び国際ガイドラインのいずれにおいても毎平方センチメートル当たり〇・二ミリワットである。また、地上デジタルテレビジョン放送に用いられる極超短波帯の周波数の電波のうち五百メガヘルツのものについては、電界強度の基準(上限)は我が国では毎メートル当たり約三十五・四ボルト、英国及び国際ガイドラインでは毎メートル当たり約三十・七ボルトであるが、米国では定められておらず、電力束密度の基準(上限)は我が国及び米国では毎平方センチメートル当たり約〇・三三ミリワット、英国及び国際ガイドラインでは毎平方センチメートル当たり〇・二五ミリワットである。
 次に、局所SARの基準(上限)は、例えば、我が国、英国及び国際ガイドラインでは毎キログラム当たり二ワットであり、米国では毎キログラム当たり一・六ワットである。
 このように、我が国の電波の強度の基準及び局所SARの基準(以下「我が国の基準」という。)が諸外国に比べて著しく緩やかとの御指摘は当たらないものと考える。
 なお、WHOは、平成十二年六月に「ICNIRPにより作成された国際ガイドラインは、これまでに判明している全ての電波による危険に対して防護できるよう、かなり安全な値になっている」との見解を示しており、政府としては、我が国の基準は適切なものであると考えている。

四のBについて

 無線通信に用いられる電波の安全性については、平成九年度から、医学・工学の専門家等によって構成される生体電磁環境研究推進委員会において研究等が実施されているところである。同委員会は、平成十三年一月にそれまでの研究成果として、現時点では我が国の基準を超えない強さの電波が健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められない旨の発表を行っている。政府としては、今後も、電波の安全性に関する研究等を継続し、我が国の基準の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るとともに、研究成果を正確に公表することにより、安心して安全に電波を利用できる環境の整備を推進していく所存である。

四のCについて

 二についてで述べたWHO及びICNIRPの検討等の結果、国際ガイドラインの基準が見直されることがあれば、我が国の基準もこれと調和したものとなるよう検討していく所存である。

五について

 携帯電話事業者が携帯電話のアンテナ塔を設置する際に、当該アンテナ塔を設置する場所の周辺地域の住民がその建設に反対して紛争が起こる場合があることは承知しているが、これらの紛争は、当事者である携帯電話事業者と周辺地域の住民との間におけるものであるため、これらの事例の詳細及びこれらの紛争が解決に至った経緯、解決に至った条件について承知していない。
 なお、総務省においては、携帯電話のアンテナ塔の設置について周辺地域の住民から要望書が寄せられた場合には、その要望内容を関係の携帯電話事業者に連絡し、話合いに努めるよう要請しているところである。

六の@について

 平成十三年七月二十五日に改正された放送普及基本計画(昭和六十三年郵政省告示第六百六十号)においては、「関東広域圏、中京広域圏及び近畿広域圏において、・・・平成十五年までにデジタル放送を開始すること」等が定められているところであり、本計画に沿ってお尋ねのデジタルタワーの新設が進められているものと承知している。なお、二についてで述べたとおり、WHO又はICNIRPが国際ガイドラインの基準の見直しを行っているとの事実はないものと承知している。

六のAについて

 地上テレビジョン放送のデジタル化(以下「地上放送のデジタル化」という。)の推進は、政府の方針である。

六のBについて

 地上デジタルテレビジョン放送は、現在のところ開始されておらず、また、これに係る放送局の無線局免許申請も行われていないことから、放送事業者がどのような無線設備を使って地上デジタルテレビジョン放送を行うのかについては、承知していない。

六のCについて

 放送局用送信鉄塔の建設地は、事業経営等の観点から放送事業者により決定されるものであり、お尋ねのデジタルタワーの建設地が愛知県瀬戸市幡中町に決定された理由については承知していない。

七の@について

 地上放送のデジタル化は、次のとおり、多くのメリットを有する。
 1 視聴者による、(一)高品質な映像及び音声の受信、(二)移動中の安定した受信、(三)視聴する番組の関連情報やニュース等の随時参照、(四)放送とインターネットを組み合わせた利用を可能とする。  また、高齢者、障害者が受信する音声を聞き取りにくい場合に話速変換(音声の速度調整)等を可能とすることにより、これらの者による視聴を容易とする。
 2 電波利用の需要が増大しているところ、アナログ方式による放送に比較して電波のより能率的な利用を可能として、新たに利用可能な周波数を生み出す。
 3 関連する投資の誘発等大きな経済波及効果を有し、我が国経済の活性化につながる。
 4 「e―Japan重点計画」(平成十三年三月二十九日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定。以下「重点計画」という。)において述べられているように「家庭におけるIT革命を支える基盤となる」ものである。
 お尋ねの地上放送のデジタル化によって生ずる「個人情報保護などの観点から想定されるデメリット」がどのようなことを指すのか必ずしも明らかではないが、地上放送のデジタル化が直接に個人情報の保護を損なうなどの問題を引き起こすことはないものと考える。
 なお、総務省(郵政省(当時))においては、平成八年九月、「放送における視聴者の加入者個人情報の保護に関するガイドライン」を策定するなどして、有料放送の加入者の個人情報が放送事業者等により適切に取り扱われるよう、対処しているところである。

七のAについて

 政府は、地上放送のデジタル化を推進しているところであるが、その具体的な放送設備の整備は、各放送事業者の自主的な経営判断に基づき行われるものである。
 政府が地上放送のデジタル化を推進しているのは、英国、米国等の放送のデジタル化に係る諸外国の動向も踏まえたものではあるが、主として、七の@についてで述べたように、地上放送のデジタル化が多くのメリットを有することによるものである。

七のBについて

 衛星を使用したデジタルテレビジョン放送(以下「衛星デジタル放送」という。)は既に実施されており、現在は、地上放送のデジタル化を推進しているところである。なお、英国、米国等の諸外国でも、衛星デジタル放送とともに、地上デジタルテレビジョン放送が実施されている。

七のCについて

 放送用送信鉄塔の建設は、事業経営等の観点から放送事業者により決定されるものであり、今後のその建設の見込みについては承知していない。

七のDについて

 重点計画において、「世界最高水準の高度情報通信ネットワーク形成」に係る具体的施策の一つとして「家庭におけるIT革命を支える基盤となる放送のデジタル化を推進」するとしているところである。
 また、重点計画において、「関東、近畿、中京の三大広域圏では二千三年までに、その他の地域では二千六年までに地上デジタル放送を開始する」としており、現在、総務省、日本放送協会及び民間放送事業者により構成される全国地上デジタル放送推進協議会で、この放送開始スケジュールの実現に向けた取組を予定どおり進めているところである。

七のEについて

 社団法人電子情報技術産業協会が公表している統計によれば、平成十三年のBS(放送衛星)デジタルテレビの国内出荷実績は二十八万一千台、BSデジタルチューナの国内出荷実績は三十一万一千台、CS(通信衛星)デジタルチューナの国内出荷実績は六十二万台である。



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