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答弁本文情報

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平成十六年三月五日受領
答弁第六号

  内閣衆質一五九第六号
  平成十六年三月五日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員阿部知子君提出インフルエンザの予防接種に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出インフルエンザの予防接種に関する質問に対する答弁書



一の(一)及び(二)について

 予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)においては、予防接種の必要性が高い者を対象として、市町村長が予防接種を実施している。一方、厚生労働省国立感染症研究所が作成した御指摘の「インフルエンザQ&A」は、インフルエンザの予防接種は、個人が必要性を判断した上で任意に受けるものであることを前提とした上で、インフルエンザの発症と重症化を防ぎたい者を対象にインフルエンザの予防接種についての情報提供を行っているものであり、同法の趣旨に反するものではないと認識している。
 また、インフルエンザの予防接種がインフルエンザの発症と重症化の予防に一定の効果を有することについての科学的根拠としては、平成九年度から平成十一年度までの間、厚生科学研究費補助金により神谷齊氏が主任研究者となって行った「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」において、「高齢者はワクチンの接種により、接種しない場合と比べてインフルエンザの発病リスクを三十四パーセントから五十五パーセント、死亡リスクを八十二パーセント減ずることが明らかとなった。」と報告されていること、米国疾病対策予防センター(CDC)の千九百九十七年四月二十五日付けの週報において、「インフルエンザワクチンは、六十五歳未満の健常者において、おおむね七十パーセントから九十パーセント近く発病を予防する効果がある。」及び「施設入居の高齢者において、インフルエンザワクチンは、疾病の重症化や、それによる合併症や死亡を防ぐことに最も効果的である。この年齢における研究では、ワクチンは入院や肺炎を五十パーセントから六十パーセント防ぐ効果があり、八十パーセント死亡を防ぐ効果がある。」と報告されていること等がある。

一の(三)について

 適正な使用目的に従い適正に使用されたにもかかわらず生じた医薬品の副作用による健康被害については、医薬品副作用被害救済制度の対象となるものであり、予防接種法の対象者以外の者が受けた予防接種に係るインフルエンザワクチンの副作用による健康被害についても、その健康被害が医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)第二十八条第一項各号に規定する要件に該当する場合には、同条第二項第二号に該当する場合を除き、同法に基づく救済給付が行われることとなる。
 なお、医薬品の副作用による健康被害に対する救済措置という観点からの施策ではないが、健康被害により一定の障害等を有する状態となった場合には、例えば、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)に基づく障害基礎年金、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)に基づく身体障害者福祉サービス等の国民一般を対象とした施策の給付が、各制度における要件を満たす場合に行われる。

二について

 平成十三年の予防接種法の改正の際の国会における審議を踏まえ、インフルエンザの予防接種に係る意思確認については、「予防接種法の一部を改正する法律等の施行について」(平成十三年十一月七日付け健発第千五十八号厚生労働省健康局長通知。以下「平成十三年通知」という。)において、「二類疾病の予防接種は、個人予防目的に比重を置いて行うものであることから、インフルエンザの予防接種の対象者には予防接種を受けるよう努める義務は課されておらず、対象者が接種を希望する場合にのみ接種を行うこと。」及び「対象者の意思確認が困難な場合は、家族又はかかりつけ医の協力により対象者本人の意思確認をすることとし、接種希望であることが確認できた場合に接種を行うこと。対象者の意思確認が最終的にできない場合は、予防接種法に基づいた接種を行うことはできないこと。」と定め、各都道府県知事、政令市長及び特別区長に対して周知してきたところである。
 老人福祉施設等における高齢者のインフルエンザの予防接種については、当該通知を技術的助言として参考にしながら、各市町村長が実施しているものと認識している。

三の(一)について

 厚生労働省のホームページに掲載している「インフルエンザQ&A」(以下「厚生労働省Q&A」という。)の御指摘の記述は、一の(一)及び(二)についてで述べた報告等を踏まえて行ったものである。

三の(二)について

 昭和五十一年から平成六年までに予防接種法に基づき行われたインフルエンザの予防接種の接種回数は、約三億四千万回である。また、平成六年末の時点で、同法に基づく予防接種による健康被害の救済に関する措置により、インフルエンザの予防接種を受けたことにより死亡したとして、その遺族が死亡一時金の給付を受けた件数は十四件である。御指摘の厚生労働省Q&Aは、この接種回数と件数を踏まえ、記述したものである。

三の(三)について

 御指摘の厚生労働省Q&Aで列記している症状は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第七十七条の四の二の規定等に基づき、医薬品の製造業者等から厚生労働省へ報告されたもの、平成十三年通知による「インフルエンザ予防接種実施要領」に基づく予防接種後副反応報告として厚生労働省へ報告されたもの等を基に記述したものである。
 これらの報告は、必ずしも予防接種との因果関係が明確なものではなく、当該事例の原因が予防接種でないものも含まれ得る。このため、御指摘の厚生労働省Q&Aで列記された症状と予防接種との関連については、明らかな証拠が確認されているわけではない。

四の(一)について

 重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。以下「SARS」という。)とインフルエンザとの初期症状は類似しており、仮に、SARSが再び流行した場合に、インフルエンザを発症した者がSARSを発症したと疑われる等の混乱を防止する観点からも、予防接種法の対象とならない者も含めインフルエンザの予防接種について情報提供を行っているところである。
 なお、この情報提供は、一の(一)及び(二)についてで述べた報告等を踏まえたものであり、二千三年七月三日付けの世界保健機関(以下「WHO」という。)第九十四報のみを根拠とするものではない。

四の(二)について

 インフルエンザの予防接種が、当該疾病の発症と重症化の予防に一定の効果を有することは、科学的な根拠があるものと認識しており、SARSが再流行する危険性がある場合に、インフルエンザを発症した者がSARSを発症したと疑われる等の混乱を防止する観点からも、インフルエンザの予防接種についての情報提供を行うことが不適切であるとは考えていない。

四の(三)について

 医療従事者におけるインフルエンザの予防接種についても、個人が必要性を判断した上で任意に受けるべきものと考えており、インフルエンザの予防接種についての情報提供は行っているが、勧告を行うことは考えていない。

五の(一)及び(二)について

 「高病原性鳥インフルエンザ対策における留意点について(通知)」(平成十六年一月十五日付け健感発第〇一一五〇〇一号厚生労働省健康局結核感染症課長通知。以下「一月十五日通知」という。)は、高病原性鳥インフルエンザウイルスとその他のヒトに感染するインフルエンザウイルスとに同時に感染した者の体内において、両ウイルスの遺伝子の再集合が起き、ヒトからヒトへの強い感染力を持つ新型インフルエンザウイルスが発生する危険性があることから、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染する危険性が高い者がその他のヒトに感染するインフルエンザウイルスに同時に感染する危険性を低減させることを目的として、発出したものである。
 ヒトの体内において、両ウイルスの遺伝子の再集合が起きる確率及び一月十五日通知によるインフルエンザの予防接種により、両ウイルスの遺伝子の再集合による新型インフルエンザウイルスの発生を防止する効果を定量的に示すことは困難であるが、二千四年一月二十六日付けの「高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告」(以下「WHO暫定的勧告」という。)においても、「鳥の殺処理に従事する者及び大量殺処理が行われた農場の従事者は、ヒトのインフルエンザと高病原性鳥インフルエンザの同時感染を避け、ウイルス遺伝子の再集合が起こる可能性を最小限にするため、現在のWHOの推奨するインフルエンザワクチンの接種を受けるべきである。」とされている。

五の(三)について

 一月十五日通知によるインフルエンザの予防接種は、被接種者が必要性を判断して任意に行われるものであり、一月十五日通知においても、被接種者に対して接種の目的等を十分説明することを明記しているところである。したがって、予防接種法に基づき、インフルエンザの予防接種を受けたことにより健康被害が発生した場合よりも手厚い救済を行う必要はないと考えている。

六の(一)及び(二)について

 一月十五日通知においては、具体的な抗インフルエンザウイルス薬の名称を示していなかったが、WHO暫定的勧告を踏まえ、改めて発出した「高病原性鳥インフルエンザ対策における留意点について(第二報)」(平成十六年一月二十九日付け医政経発第〇一二九〇〇一号厚生労働省医政局経済課長通知・健感発第〇一二九〇〇一号同省健康局結核感染症課長通知)においては、「鳥の大量殺処理に従事する者にH5N1ウイルスの呼吸器感染が疑われる症状が出た場合には、WHOの勧告を踏まえ、リン酸オセルタミビルによる治療ができる体制を確保すること。」と抗インフルエンザウイルス薬の名称を示したところである。
 また、リン酸オセルタミビルは、A型及びB型インフルエンザウイルスが増殖するために必要な酵素であるノイラミニダーゼに結合することによりウイルスの増殖を抑制する。我が国で行われた臨床試験の成績によれば、リン酸オセルタミビルによりA型及びB型インフルエンザの罹病期間の中央値が約二十三時間短縮することが示されている。
 リン酸オセルタミビルが結合するノイラミニダーゼの部位は、A型及びB型に属するインフルエンザウイルスにおいて共通であると考えられることから、リン酸オセルタミビルはA型及びB型に属する新型インフルエンザに対しても同様に罹病期間を短縮するものと期待される。

六の(三)について

 現在、薬事法に基づき承認されている抗インフルエンザ薬であるリン酸オセルタミビル、ザナミビル水和物及び塩酸アマンタジンを、鳥インフルエンザ又は新型インフルエンザの予防若しくは治療に使用した場合の副作用に関する情報は得られていないが、これら既存の抗インフルエンザ薬の添付文書に重大な副作用として記載されている副作用名は別表のとおりであり、その発生頻度は不明である。


別表


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