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平成十六年三月二十六日受領
答弁第四三号

  内閣衆質一五九第四三号
  平成十六年三月二十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平岡秀夫君提出武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等に関する質問に対する答弁書



一の(一)について

 お尋ねの自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百三条第二項の規定による医療を業とする者に対する業務従事命令、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第七十一条第一項の規定による医療関係者に対する従事命令及び今国会に提出している武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(以下「国民保護法案」という。)第八十五条第二項の規定による医療関係者に対する医療の実施の指示については、いずれも、当該業務従事命令、従事命令及び実施の指示を受けた者がこれに従う法律上の義務が生ずるという点において、違いはない。
 ちなみに、国民保護法案第八十五条第一項及び第二項が、大規模な武力攻撃災害が発生した場合において、避難住民等に対する医療の提供を行うため必要があると認めるときは、医療関係者に対し、まず医療を行うよう「要請」し、当該医療関係者が正当な理由がないのにこれに応じない場合において当該医療を提供するため特に必要があると認めるときに限り、医療を行うべきことを「指示」することができることとしたのは、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第三条第四項において、武力攻撃事態等(事態対処法第一条の武力攻撃事態等をいう。以下同じ。)への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合にあっても、その制限は当該武力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない旨が規定されていることを踏まえたものである。
 なお、当該指示に従わない場合における罰則については、避難住民等に対する医療を医療関係者に刑罰を科してまで強制的に行わせることとしたとしても適切な医療の実施を期待することができないと考えられることから、設けないこととした。

一の(二)について

 お尋ねの自衛隊法第百三条第二項の規定による医療を業とする者に対する業務従事命令並びに国民保護法案第八十五条第一項及び第二項の規定による医療関係者に対する医療の実施の要請及び指示は、いずれも、都道府県知事が行うものである。
 この場合において、都道府県知事が、同一の者に対し、当該者が同時に実施することの困難な業務従事命令並びに医療の実施の要請及び指示を行うことは、想定されない。なお、同一の者に対し、当該者が同時に実施することの困難な業務従事命令と医療の実施の要請及び指示のいずれを優先して行うべきかについて、都道府県知事がこれを判断し難い等の事情が生じた場合においては、対策本部長(事態対処法第十一条第一項の対策本部長をいう。以下同じ。)が、事態対処法第十四条第一項の規定に基づき、必要な総合調整を行うこととなる。

一の(三)について

 お尋ねの自衛隊法第百三条第二項の規定による輸送を業とする者に対する業務従事命令は都道府県知事が行うものであり、国民保護法案第七十九条第一項の規定による運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関に対する緊急物資の運送の求めは指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長が行うものである。
 この場合において、都道府県知事が、同一の者に対し、当該者が同時に実施することの困難な業務従事命令及び運送の求めを行うことは、想定されない。なお、同一の者に対し、当該者が同時に実施することの困難な業務従事命令と運送の求めのいずれを優先して行うべきかについて、都道府県知事がこれを判断し難い等の事情が生じた場合においては、対策本部長が、事態対処法第十四条第一項の規定に基づき、必要な総合調整を行うこととなる。
 他方、都道府県知事と当該都道府県知事以外の者が、同一の者に対し、当該者が同時に実施することの困難な業務従事命令及び運送の求めを行うことはあり得るが、そのような場合には、当該都道府県知事等の関係者において協議の上、所要の調整が行われるべきものであり、当該調整が整わない等の事情が生じた場合においては、対策本部長が、事態対処法第十四条第一項の規定に基づき、必要な総合調整を行うこととなる。
 お尋ねの内閣総理大臣又は都道府県知事による指定公共機関又は指定地方公共機関に対する緊急物資の運送の指示は、国民保護法案第七十九条第二項において準用する国民保護法案第七十三条第一項又は第二項の規定に基づき行われるものであるが、これらの指示については、他の物資の運送の需要等も勘案しつつ総合的な判断に基づいて行われるものであり、内閣総理大臣又は都道府県知事が、当該者に対し、輸送を業とする者に対する業務従事命令と同時に実施することの困難な運送の指示を行うことは、想定されない。

一の(四)について

 市町村長は、国民保護法案第三十五条第一項の規定により、国民の保護に関する計画を作成しなければならないこととされているところ、国民保護法案第三十九条第三項の規定により、当該市町村の国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、市町村協議会(同条第一項の市町村協議会をいう。以下同じ。)に諮問しなければならないこととされていることから、市町村協議会については、すべての市町村において設置する必要がある。
 国民保護法案第四十条第四項第二号において、「自衛隊に所属する者」を掲げ、市町村長が当該者を市町村協議会の委員として任命することができる(同項の規定により、市町村長は、同項各号に掲げる者のうちから委員を任命することとされており、「自衛隊に所属する者」を必ず委員に任命しなければならないものではない。)こととしたのは、国民保護法案において、避難住民の誘導(国民保護法案第六十三条等)を始めとして、市町村が実施する国民の保護のための措置(国民保護法案第二条第三項の国民の保護のための措置をいう。)についても、自衛隊が一定の役割を果たすこととされていること、当該市町村の国民の保護に関する計画の作成に当たって、当該者に武力攻撃事態等についての専門的な知見を求める必要がある場合も想定されること等を勘案したためである。

一の(五)について

 人に対する殺傷行為が発生し、当該事態が緊急対処事態(国民保護法案第百七十二条第一項の緊急対処事態をいう。以下同じ。)と認定された場合には、警察及び海上保安庁(以下「警察機関」という。)が、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)等の警察・海上保安関係法の規定に基づいて第一次的に対処するが、警察機関によって対処することが不可能又は著しく困難な場合等には、自衛隊法の規定に基づいて、自衛隊が警察機関と連携しつつ対処することになる。

二の(一)について

 港湾管理者又は飛行場施設の管理者(以下「港湾管理者等」という。)は、その固有の管理権限に基づき、それぞれ港湾施設又は飛行場施設(以下「港湾施設等」という。)を管理運営しているところであり、港湾施設の利用について許可その他の処分を変更し、若しくは取り消すこと、又は飛行場施設の利用について必要な指示をし、若しくは条件を付し、若しくは変更をすること(以下「港湾施設等の利用に係る許可の変更等」という。)についても、港湾管理者等が、それぞれその固有の権限として行う港湾施設等の管理運営の一環として行うことができるものである。今国会に提出している武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(以下「特定公共施設利用法案」という。)第八条第一項(特定公共施設利用法案第十一条において準用する場合を含む。)の規定は、このような港湾管理者等の固有の管理権限の存在を前提として、これらの規定に定める要件を満たす場合には、港湾管理者等が、港湾施設等の利用に係る許可の変更等を行うことができることを法律上明示したものである。
 他方、国土交通大臣は、国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)により、「港湾の整備、利用、保全及び管理に関すること」(同法第四条第百一号)及び「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理・・・に関すること」(同法第四条第百九号)を所掌事務としている。そして、港湾管理者等との関係においては、港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第四十七条第一項に規定する港湾管理者に対する権限、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第五十四条の二に規定する飛行場の設置者が定める管理規程に関する権限等の権限を有しているところである。これらのことから、特定公共施設利用法案においては、特定公共施設利用法案第九条第三項(特定公共施設利用法案第十一条において準用する場合を含む。)に定める要件を満たす場合には、内閣総理大臣の指揮を受け、国土交通大臣が、港湾施設等の利用に係る許可の変更等を行うことができることとしたものである。

二の(二)について

 緊急対処事態においても、これに的確かつ迅速に対処し、特定公共施設等(特定公共施設利用法案第二条第三項の特定公共施設等をいう。以下同じ。)の円滑かつ効果的な利用を確保する必要があることから、特定公共施設利用法案第二十一条において、政府は、特定公共施設利用法案第六条等の規定に準じ、特定公共施設等の利用に関する指針の策定その他の必要な措置を適切に講ずるものとする旨を規定しているところである。
 ここで、お尋ねの「港湾、飛行場施設の許可の変更等」(特定公共施設利用法案第八条(特定公共施設利用法案第九条第二項(特定公共施設利用法案第十一条において準用する場合を含む。)及び特定公共施設利用法案第十一条において準用する場合を含む。))及び「港湾、飛行場施設の利用に関する内閣総理大臣の措置」(特定公共施設利用法案第九条第一項、第三項及び第四項(特定公共施設利用法案第十一条において準用する場合を含む。))の制度(以下「お尋ねの制度」という。)は、武力攻撃事態等という国及び国民の安全に極めて重大な影響を及ぼす事態を想定して、特定公共施設等の利用の総合的な調整を図るための手法の一環として設けたものであるが、緊急対処事態についての規定である特定公共施設利用法案第二十一条においては、お尋ねの制度については、規定していない。これは、武力攻撃事態等と比較すると、緊急対処事態においては、基本的に、特定の特定公共施設等に対する利用の需要の集中の程度が、お尋ねの制度を必要とするほどのものではないと判断したことによるものである。

三について

 今国会に提出している武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(以下「捕虜取扱い法案」という。)の規定による捕虜等の抑留は、武力攻撃(事態対処法第二条第一号の武力攻撃をいう。以下同じ。)が発生した事態において、敵国軍隊等の構成員等が武力攻撃に再び参加し、又は関与することを防止し、もって武力攻撃の排除に資することを目的として行うものであり、我が国が主権国家として持つ固有の自衛権の行使に伴い実施する措置として、憲法上認められるところであると考える。
 お尋ねは、捕虜等に対する日本国憲法第三章に規定する基本的人権に関する規定の適用関係を問うものと思われるが、一般に、憲法の保障する基本的人権については、その権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても、基本的に保障されるべきものと解される。しかしながら、その保障の具体的内容については、当該権利の性質、在留の態様等に応じて異なり得るものであり、捕虜等に対しても、武力攻撃から我が国を防衛するために行う抑留の目的に照らし、一定の権利について、必要な限度において、合理的な制限を加えることは、憲法の許容するところであると解される。例えば、思想及び良心の自由(憲法第十九条)、信教の自由(憲法第二十条)のうち信仰の自由等については、それらが内心の自由という場面にとどまる限り、捕虜等に対しても絶対的に保障されるが、他方、居住及び移転の自由(憲法第二十二条第一項)等については、捕虜等の抑留の本質的な目的に反するものであり、当然に制限されるものと解される。また、信教の自由のうち宗教活動の自由等については、抑留目的を達成するために不可欠な捕虜収容所の規律及び秩序の維持に支障を生ずる場合等において、必要最小限度の制限が加えられ得るものと解される。
 また、捕虜等に対しては、一定の行為について抑留国の法令に従って刑罰を科すことが国際法上も認められているが、その刑事手続に関しては、憲法第三十一条以下の規定が適用される。
 なお、憲法第三十一条等の規定については、直接には刑事手続に関する保障を規定したものと考えられるが、その手続が単に行政手続であるとの理由のみで、これらの保障の枠外にあると考えるのは相当ではないと解され、捕虜取扱い法案における捕虜等の拘束、抑留その他の措置については、これらの規定の趣旨を踏まえ、当該措置の目的及び性格、事態の緊急性等を勘案して、その手続を定めたものである。



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