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平成十六年五月二十五日受領
答弁第八八号

  内閣衆質一五九第八八号
  平成十六年五月二十五日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員奥田建君外一名提出今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける実務の取り扱いに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員奥田建君外一名提出今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける実務の取り扱いに関する質問に対する答弁書



一について

 お尋ねの各場合において、当該音楽CDが、今国会に提出している著作権法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)第百十三条第五項に規定する専ら国外において頒布することを目的とする商業用レコードであるとの情を知っているかどうかについては、次のとおり判断することとなる。
 @については、「US Version」との文言は、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、その文言の印刷があることをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。
 Aについては、「US Only」との文言は、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、その文言の印刷があることをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。
 Bについては、当該内容証明郵便(「当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」が記載されており、その中に当該作品を含んでいるもの)では、並行輸入を禁止する理由が明らかではなく、「当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」に記載されている音楽CD(以下「一覧CD」という。)が専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではない。したがって、当該内容証明郵便に当該一覧CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを明確にする記載があり、当該音楽CDが当該一覧CDに含まれていることを識別することが可能な表示が当該音楽CDにされていない限り、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。
 Cについては、当該内容証明郵便(「当社が米国内で頒布している音楽CDは専ら米国内で頒布されることを予定しており、日本国内に輸入することは禁止されております」旨の記載があるもの)では、当該音楽CDが当該内容証明郵便の記載の内容の対象であることを識別することが可能な表示が当該音楽CDにされていない限り、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。
 Dについては、当該新聞記事を輸入業者が必ずしも知り得るとは限らないので、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。
 Eについては、米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたとしても、価格が全く異なることが、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたことをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ず知り得るということにはならないと思料され、輸入業者がその情を知るものと取り扱うことはできない。

二について

 法案第百十三条第五項にいう「当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合」については、権利者に与える経済的影響を考慮して判断することとなるが、具体的には、専ら国外において頒布することを目的とする商業用レコード(以下「国外頒布目的商業用レコード」という。)が国外で一枚販売されることにより得られる利益と国内において頒布することを目的とする商業用レコードが国内で一枚販売されることにより得られる利益の差が基本的な判断基準となるものと考えている。このため、関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第二十一条の二第一項の規定に基づいて、当該商業用レコードが輸入禁制品に該当するか否かの認定手続を執るべきことを税関長に対し申し立てる者には、双方の商業用レコードから得られる利益の差が明らかとなる資料として、例えば、当該商業用レコードに係る複製及び頒布の許諾に係る対価を算出する条件等が記載された契約書などの提出を求める予定である。

三について

 お尋ねは、法案第百十三条第五項に関し、一定の事実を仮定して、著作権法違反による告訴がなされた場合における検察当局の取扱いについて問う趣旨と思われるところ、検察当局における具体的事案の取扱いは、個別具体の事実関係を踏まえてなされるものであるので、一概にお答えすることができないが、一般論として申し上げれば、個別の事案について著作権法違反による告訴がなされた場合、検察当局において、適切に対処するものと考える。

四について

 特定の行政庁の行為に係る国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)上の賠償責任の有無については、個別具体の事実関係を踏まえて司法府により判断されるものであるが、一般論として申し上げれば、例えば、平成十六年四月二十日の参議院文教科学委員会において文化庁は、欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条第五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を国内の関連会社を通じて表明している旨を述べているが、このように国会に提出している法律案について、当該法律案の所管省庁が了知している事実を説明する行為が、直ちに国家賠償法上の賠償責任を負うべき行為と判断されることはないものと考える。

五について

 法案第百十三条第五項は、お尋ねのように特定の類型に属する者が権利行使を控えることを前提に起草したものではない。

六について

 仮に、アメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)の権利者が法案第百十三条第五項の要件をすべて満たして、その発行する国外頒布目的商業用レコードの輸入を差し止めたとしても、当該権利者の総収入が確実に増加するとは限らないため、必ずしも合衆国の税収が増加するものではない。
 また、平成十六年四月十五日の参議院文教科学委員会において依田巽参考人が発言しているとおり、欧米の主要レコード会社五社は、法案第百十三条第五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を国内の関連会社を通じて表明しているところである。
 合衆国の居住者が受益者となる著作権の使用の対価であって日本国内で生じたものについては、これまでその十パーセントが我が国において源泉徴収されていたが、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(平成十六年条約第二号)が適用開始となることにより、かかる源泉徴収は行われないこととなるものと承知している。



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