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答弁本文情報

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平成十六年七月六日受領
答弁第一七六号

  内閣衆質一五九第一七六号
  平成十六年七月六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員長妻昭君提出医療事故の報告義務化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長妻昭君提出医療事故の報告義務化に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 平成十四年十月一日時点における全国の病院の数は九千百八十七、診療所の数は十六万六百二十二であり、現在のところ、これらの医療機関に対して医療事故の報告を義務付ける制度はないが、厚生労働省医政局長及び同省医薬食品局長の私的検討会である「医療安全対策検討会議」の下に設置された「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会」が平成十五年四月に取りまとめた報告書を踏まえ、医療事故の報告を医療機関に求め、その改善策等を事故が発生した医療機関だけでなく他の医療機関等に還元することで医療事故の発生及び再発を予防するため、本年十月一日から、国立高度専門医療センター、国立ハンセン病療養所、独立行政法人国立病院機構が設置する病院、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学の附属機関である病院(分院を除く。)及び特定機能病院の管理者に対し、行政機関及び医療事故の直接の関係者から独立した、中立的な第三者機関への医療事故に関する報告書の提出を義務付ける予定であり、現在、そのために必要な体制の整備等を進めているところである。この報告制度は今後実施する予定のものであることから、その効果及び具体的事例はお答えできないが、その対象になると見込まれる医療機関の数は本年四月一日現在で二百五十五であり、すべての病院のうちこれらの医療機関の占める割合は約二・八パーセントである。また、その具体的な報告項目及び内容については現在検討中であるが、本年六月十日付けでパブリックコメントを行った案の内容は、別紙のとおりである。
 すべての医療機関に対して医療事故の報告を義務化することについて、現段階では、必ずしもすべての医療機関において医療事故の報告を行うことに対応した安全管理の体制が確立されていないこと、義務化によって医師が医療事故を恐れるあまり萎縮し、適切な医療が提供されないのではないかという懸念が指摘されていること等を踏まえ、まずは医療事故の分析体制が確立している医療機関を対象として報告を義務付けることが適当であると考えており、義務化を行わない医療機関に対しては、任意の報告を求める予定としている。

三について

 本年三月十二日に総務大臣が行った「医療事故に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(以下「勧告」という。)においては、「厚生労働省は、医療事故事例やその分析情報等の共有化を図ることにより医療事故防止対策を一層推進する観点から、すべての病院及び有床診療所に重大な医療事故事例の報告を義務付け、それらを分析し、有効な再発防止策を医療機関等に対し情報提供する仕組みの導入を推進する必要がある」とされたところである。
 厚生労働省においては、勧告も踏まえ、一及び二についてで述べたとおり、本年十月一日から国立高度専門医療センター等の医療機関に対して医療事故の報告を義務化し、併せてその他の医療機関に対しても任意の報告を求める予定としている。
 医療事故の報告を義務付けるべき医療機関の範囲については、報告の実施状況や勧告の趣旨等を踏まえつつ、義務化による効果も踏まえた医療事故の報告制度の在り方全体の検討の中で、今後、検討していくことを考えているが、その検討の時期については現時点では未定である。

四について

 医療機関に対して医療事故の報告を義務化することにより、その情報が報告を行った医療機関内の各部署で横断的に共有され、事故の検証等を通じた安全管理体制の再確認や改善が促進されるとともに、他の医療機関でも報告された事故事例を参考として自らの医療機関内の安全管理体制の再確認や改善が促進されること等の効果が期待されると考えている。

五について

 医療事故の報告を義務付けた場合、これにより収集された情報は、一定の収集期間ごとに専門家による解析及び検討を加え、対処方法、改善方策等の業務の改善に資する情報も加えた上で公表することとしており、現段階では、原則として三か月に一回程度の割合で、その期間中に報告された事例を取りまとめ、患者及び医療機関等が特定されない形で公表することを予定している。

六について

 諸外国における医療事故の予防を目的とした報告制度については、現在把握しているところでは次のとおりであるが、報告の項目及び内容についてはいずれも把握していない。なお、ドイツ及びフランスについては、このような制度はないものと承知している。
 1 アメリカ合衆国においては、退役軍人省病院の内部報告制度や民間団体が行う医療事故の報告事業がある。退役軍人省病院においては、その業務規程により同省への医療事故の報告を義務付けており、また、民間団体が行う医療事故の報告事業においては、同団体に登録された医療機関に対して同団体への医療事故の報告を「強く推奨」している。なお、アメリカ合衆国政府が行う医療事故の報告制度はないものと承知している。
 2 英国においては、NHS(政府が実施する国民保健サービス)に係る医療機関に対して、行政機関への医療事故の報告を求めている。医療事故の報告が、医療機関がNHSトラスト(医療費の支払いを行う国及び民間保険者と価格交渉等を行うための複数の医療機関から成る連合組織をいう。)に加入するための要件の一つとなっているが、法的根拠に基づく義務化はされていない。
 3 オーストラリアのニューサウスウェールズ州においては、州内の公的医療機関に対して民間団体への医療事故の報告を求めているが、法的根拠に基づく義務化はされていない。


別紙


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