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答弁本文情報

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平成十六年七月二十日受領
答弁第一九三号

  内閣衆質一五九第一九三号
  平成十六年七月二十日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員川内博史君提出著作権法改正における関係者間協議に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員川内博史君提出著作権法改正における関係者間協議に関する質問に対する答弁書



一について

 社団法人日本経済団体連合会(以下「連合会」という。)においては、お尋ねの商業用レコードの還流防止措置について、知的財産に係る課題について議論するために設けられた産業技術委員会知的財産部会において平成十四年五月から検討が行われていたが、平成十五年八月に産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(以下「コンテンツ部会」という。)が発足したことを契機として、これらの両部会に属する企業を構成員とする著作権懇談会において、商業用レコードの還流防止措置について検討することとされ、平成十五年十一月に連合会として「最小限度の著作権法上の措置を講ずることはやむを得ないと考える」という旨の結論が得られたものと承知している。
 お尋ねの産業問題委員会は、平成九年に日本経済再生に向けた課題全般について議論するために設けられたものと承知しているが、近年、コンテンツ産業の振興が日本経済再生のため重要な課題となっていることから、同委員会の下部組織として専らコンテンツ産業に係る問題を検討するためのコンテンツ部会が設けられることとなったものであり、当該コンテンツ部会は、商業用レコードの還流防止措置の検討を行うことを目的として設けられたものではないと承知している。
 このようなことから、コンテンツ部会の部会長が社団法人日本レコード協会(以下「レコード協会」という。)の会長であることについては文化庁長官官房著作権課として承知していたところである。しかしながら、連合会が商業用レコードの還流防止措置についての結論に至る過程においては、委員の間で意見交換が十分に行われたものと理解しており、その意味では御指摘のような「レコード協会の意思が強く反映しすぎる」というようなことはなかったものと考えている。

二及び三について

 一についてで述べたように、商業用レコードの還流防止措置に係る協議の一方の当事者である連合会が、相手方であるレコード協会の立場を代弁するという関係にあったものではなく、当該協議が形骸化していたとは考えていない。
 また、お尋ねの表は、著作権制度の改正の検討が必要と考えられる事項について、関係者間で進められている協議の進ちょく状況を示すための参考資料としてまとめたものであり、平成十四年九月から必要に応じて、文化審議会著作権分科会(以下「分科会」という。)又は分科会に置かれた法制問題小委員会(以下「法制問題小委員会」という。)にも配布してきたものである。著作権制度の改正にかかわる関係者は多様であり、課題によっては固有の団体を関係者として特定して示すことが困難な場合もあると考えるが、分科会又は法制問題小委員会(以下「分科会等」という。)における検討状況や、関係者間における協議の状況等については、分科会等の報告書、文化庁におけるホームページ又は広報誌等を通じて、広く一般に情報を提供するよう努めてまいりたい。
 関係者間における協議の在り方やその状況の報告の義務付けに関するお尋ねについては、従来より、分科会等において著作権制度の改正の検討を行うに当たり、関係者間における協議の状況を踏まえつつ御審議いただいているところであり、今後とも、関係者間における協議の促進、分科会等における意見の聴取又は当該制度改正に係る意見の公募などを通じ、当該制度改正の特性を踏まえつつ、当該制度に係る著作者等の権利者、当該権利者から許諾を受けて著作物を利用する事業者、当該事業者が販売する商品の流通業者又は消費者など、関係者の意見を幅広く伺いながら、これらの意見が分科会等における御審議に反映されるよう努めるとともに、関係者間における協議の状況については、当該関係者に強制的にその状況の報告を義務付けるべき性格のものではないと考えるが、適宜関係者から状況を伺うなどして、その情報提供に努めてまいりたい。

四について

 著作権制度の改正について分科会等において御審議いただくに当たっては、当該制度改正に伴う関係者の利害得失に係る統計数値の資料は重要な参考資料となるものであるが、当該資料が当該制度改正を要望する団体により作成されたことのみをもってその信頼性や公正さが必ずしも失われるものではないと考えられ、また、分科会等の各委員におかれても、当該資料の妥当性も考慮しつつ、御審議いただいているものと考えている。今後とも、分科会等において適切に御審議いただけるよう、必要な資料の収集及び提供に努めてまいりたいと考えており、制度改正に反対する関係者から資料が提出された場合には、分科会等に付議するなど、分科会等において公正に御審議いただけるよう努めてまいりたい。

五について

 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)附則第四条の二は、昭和五十九年に、映画の著作物を除いた著作物の著作者に対して、同法第二十六条の三に規定する貸与権が創設された際に、我が国における貸本業の実態や権利者の許諾を容易に得ることができる集中管理体制が未整備であったことなどを踏まえ、書籍又は雑誌の貸与による場合には、貸与権の規定は適用しないこととされたものである。しかし、近年、事業を大規模に展開する貸本業者の出現により、著作者の経済的利益に大きな影響を与える事態が生じていたため、分科会等において、同法附則第四条の二の削除の適否について、御審議いただいたものである。
 お尋ねのコミックレンタル有志の会からは、分科会の報告書案に係る意見募集に対し、分科会あてに著作権法附則第四条の二の削除に反対する旨の意見書が提出され、分科会において配布されたところであるが、分科会における御審議においては、書籍又は雑誌の貸与による著作者の経済的利益に与える影響の大きさなどを踏まえ、同条を削除することが適当であるとされたものである。
 また、同旨の意見書が文化庁長官官房著作権課長あてにも提出されているが、分科会における御審議の結論を踏まえ、著作権法附則第四条の二を削除する著作権法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)を、政府として国会に提出したものである。
 分科会等において制度改正について御審議いただくに当たっては、関係者間における協議の状況は重要な判断要素となるものであり、当初の関係者間の協議が継続している間に又はその協議の合意形成がされた後に、新たに相当程度の事業者が参加する団体が構成された場合は、個別具体的な事例に応じ、当初の関係者と当該団体との協議の促進又は分科会等における当該団体からの意見聴取や意見書の付議など、関係者の意見が幅広く分科会等における御審議に反映されるよう、今後とも努めてまいりたい。

六について

 著作権制度の改正により、権利者の直接の契約相手である事業者のみならず、価格の転嫁により消費者の負担が増加することも想定されるが、このような場合に、消費者の団体の意見を制度改正の検討に反映させることは重要であり、その方法としては、消費者の団体の法人格の有無にかかわらず、関係する事業者団体等との協議の促進、分科会等における意見の聴取、当該制度改正に係る意見の公募など、様々な方法があると考えられる。
 今回の法案の検討においては、他の小委員会に属していた消費者団体選出委員に協力を依頼して法制問題小委員会における検討に加わっていただくとともに、分科会の報告書案に係る意見募集を行ったものである。

七について

 関係者間において協議が行われている事項について、その状況を網羅的に把握しているものではないが、例えば、著作権審議会又は分科会等において御審議いただいた事項であって、その後に関係者間において協議が続けられているもののうち、しばらく協議が中断されているものとしては、版面権(出版者に付与される権利をいう。以下同じ。)の創設がある。この版面権の創設にかかわる協議については、従来、逐一関係者に報告を求めてはいないが、平成十五年三月十二日に社団法人日本書籍出版協会と連合会との間で協議が行われて以来、一年以上協議が中断しているものと承知している。

八について

 法制問題小委員会において配布された「関係者間で合意形成が進められつつある事項等」の資料において、関係者間において協議中とされている事項のうち、版面権の創設については、七についてで述べたとおり、平成十五年三月十二日に社団法人日本書籍出版協会と連合会との間で協議が行われて以来、一年以上協議が中断しているものと承知しているが、それまでの協議の内容の詳細については承知していない。

九について

 お尋ねの意見書については、法制問題小委員会において貸与権連絡協議会が報告した内容と矛盾する可能性があったため、当該報告を行った貸与権連絡協議会を通じて、全国貸本組合連合会に当該意見書の趣旨を照会したものである。
 また、分科会等において制度改正について御審議いただくに当たっては、関係者間における協議の状況は重要な判断要素となるものであり、関係者間の合意が撤回されるような事態が生じた場合においては、撤回がなされた事情を踏まえつつ、必要に応じて、関係者に対する協議の再開の促進、分科会等における関係者の意見聴取など、個別具体的な事例に応じて適切に対応してまいりたい。

十について

 関係者間における協議の結果なされる合意の内容が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)に抵触するおそれがあると認められる場合には、必要に応じて、当該関係者に対し公正取引委員会に照会するよう促したり、文化庁において公正取引委員会に所見を伺うなど、個別具体的な事例に応じて適切に対応してまいる所存であり、御指摘のように公正取引委員会の意見を聴くことを義務付ける必要性があるとは考えていない。



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