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平成十六年九月三日受領
答弁第二三号

  内閣衆質一六〇第二三号
  平成十六年九月三日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員松本剛明君提出我が国の防衛に係る情勢認識と、そのあり方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員松本剛明君提出我が国の防衛に係る情勢認識と、そのあり方に関する質問に対する答弁書



一の1について

 我が国をめぐる安全保障環境については、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態(以下「新たな脅威等」という。)への対応が国際社会の差し迫った課題となっており、我が国としても、我が国及び国際社会の平和と安定のため、日米安全保障体制を堅持しつつ、外交努力の推進及び防衛力の効果的な運用を含む諸施策の有機的な連携の下、総合的かつ迅速な対応によって、万全を期す必要がある。
 このため、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」(平成十五年十二月十九日閣議決定)において、新たな脅威等に対して、その特性に応じて、実効的に対応するとともに、我が国を含む国際社会の平和と安定のための活動に主体的・積極的に取り組み得るよう、防衛力全般について見直しを行うこととし、本年中に「平成八年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成七年十一月二十八日閣議決定)に代わる新たな防衛計画の大綱を策定することとしたものである。

一の2について

 お尋ねの「安全保障と防衛力に関する懇談会」からは、本年秋ごろまでに、何らかの御意見をいただきたいと考えており、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」に基づき本年中に新たな防衛計画の大綱を策定する際には、これを踏まえて検討することとなる。

二の1について

 お尋ねの自衛隊の運用方針や官邸の態勢整備については、平素より有事の際に必要な検討を進めているところであるが、有事関連法制の整備に伴って、特に新たな検討が必要となるものではないと考えている。
 新たな防衛計画の大綱の策定については、今後、政府としての検討を行っていくこととしており、現時点で、お尋ねの点を含めその内容について具体的に申し上げることはできない。
 お尋ねの「基本法」については、本年五月二十日に与党と民主党との間で、「緊急事態基本法(仮称)」の骨子について了解がなされ、次期通常国会で成立を図ることが合意されていると承知している。今後、かかる合意に従い、与党と民主党において検討が行われるものと承知しているが、政府としても、当該検討の状況を踏まえ、必要な検討を真摯に行ってまいりたい。

二の2について

 お尋ねについては、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」を踏まえ、防衛力の即応性、機動性及び柔軟性をより一層向上させることにより、関係機関との協力を推進しつつ、予測困難で突発的に発生する可能性があるテロ攻撃を始めとする新たな脅威等に実効的に対応し得る能力を保有することを念頭に置いて、防衛力全般について見直しを行っていくことが必要であると考えている。

二の3について

 我が国の弾道ミサイル防衛システム(以下「BMDシステム」という。)については、海上自衛隊のイージス弾道ミサイル防衛システム(以下「イージスBMDシステム」という。)と航空自衛隊のペトリオットPAC−3による多層防衛システムを整備することとしており、その運用については、統合運用を基本として行うことを想定している。また、BMDシステムを運用する組織形態については、今後、検討を行っていくこととなるが、いずれにしても、その能力を最も効果的かつ効率的に発揮し得るよう措置したいと考えている。
 今後のBMDシステムの整備については、当面、イージスBMDシステムとペトリオットPAC−3の導入等を逐次進めていきたいと考えているが、具体的な予算の内容については、本年末までに策定される新たな防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画を踏まえ、各年度の予算により確定されることとなる。
 BMDシステムの将来的な能力向上を目指して実施されているBMDシステムに関する日米共同技術研究が、その成果を活用した共同開発及び共同生産の段階に移行する場合には、我が国から米国に武器輸出三原則等にいう武器を輸出する必要性が生じると考えられる。このような課題が存在することを踏まえ、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に立ちつつ、各般の観点から検討を進めているところである。また、お尋ねの「関係法令の整備」については、現段階において特に想定されるものはないが、本検討を踏まえ、将来必要が生じた場合には、適切に対処してまいる所存である。

二の4について

 政府としては、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」において「自衛隊の国際社会の平和と安定のための活動の位置付けを含む防衛力の在り方を明らかにする」こととしていることも踏まえ、自衛隊の国際社会の平和と安定のための活動の位置付けについて検討しているところであるが、新たな防衛計画の大綱の策定については、今後、政府としての検討を行っていくこととしており、現時点で、その内容について具体的に申し上げることはできない。

二の5について

 防衛庁としては、平成十七年度予算の概算要求において、自衛隊の運用について、統合運用を基本とする態勢へ移行するため、現在の統合幕僚会議及び各幕僚監部の組織等を見直し、防衛庁長官の補佐機構等必要な体制を整備することとしているところであり、具体的には、統合幕僚監部(仮称)を設置し、自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの防衛庁長官に対する補佐を一元化すること等の組織の改編等を行うこととしている。
 このような組織の改編等は、統合運用が進められている米軍との間において緊密な連携を保持することにも資するものであると考えている。

二の6について

 お尋ねの「情報交換が緊密化すること」の具体的な内容が不明であるため、憲法や国内法との関係を一概にお答えすることは困難である。なお、日米安全保障体制の下において、日米両国は、平素から相互に必要な情報交換を行っているところであり、このような一般的な情報交換は、憲法との関係で問題を生ずるものではないと考えている。

三の1について

 米国は新たな安全保障環境における課題に対処するため、米国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直し作業を行っており、我が国を含め、同盟国、友好国等と緊密に協議してきているが、これに関し、我が国が米側から何らかの提案を受けているとの事実はなく、現時点において、当該見直し作業等の詳細について何らかの見通しが立っているわけではないと承知しているところ、かかる見直しが自衛隊の在り方や活動にどのような影響を与えるかについてお答えすることは困難である。
 また、我が国に駐留する米国軍隊(以下「在日米軍」という。)の施設・区域の所在に伴う地元の地方公共団体の負担については、政府としてこれを十分に承知しており、在日米軍の軍事態勢の見直しに関する米国との協議においては、在日米軍が有している抑止力の効率的な維持とともに、在日米軍の施設・区域が所在する地方公共団体の負担が十分に念頭に置かれるべきであると考えており、こうした観点から、米国政府との協議を進めていく考えである。

三の2について

 本年六月六日、ソウルで開催された韓国に駐留する米国軍隊(以下「在韓米軍」という。)の規模等の再編成に関する第一回目の韓国と米国との間の協議において、米国政府は韓国政府に対し、在韓米軍の兵力について二千五年十二月末までに一万二千五百名を削減するとの構想を伝えたと承知している。かかる在韓米軍の再編成(以下「本件再編成」という。)については、我が国としても重大な関心を有し、米国政府及び韓国政府と適宜意見及び情報の交換を行ってきているところであり、引き続き、北東アジア地域における米軍の抑止力の維持及び強化のため、両国と緊密に連携していく考えである。
 本件再編成を受けた韓国の防衛政策の在り方については、韓国政府と適宜意見及び情報の交換を行ってきているが、その具体的な内容については、韓国政府との信頼関係を損うおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
 また、自衛隊に「新たな任務」が加わることになるのかとのお尋ねについては、本件再編成の詳細が決まっているわけではないことなどから、現時点でお答えすることは困難であるが、我が国の防衛力全般の見直しに当たっては、朝鮮半島を含む我が国周辺の国際情勢についても考慮することとなる。
 韓国政府によれば、米国は、在韓米軍の再編成完了後の最終的な兵力規模は二万五千名となるが、新たな武器システムを導入することにより、危機対応能力が強化されるため、在韓米軍の主任務である韓国の防衛にいかなる影響も与えないとしているとのことであり、本件再編成は、北朝鮮によって、在韓米軍の能力の低下につながると受け止められるようなものではないものと承知している。

三の3について

 三の1についてで述べたとおり、お尋ねの我が国への司令部の移転を含め、米国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直し作業等の詳細については、現時点において何らかの見通しが立っているわけではないと承知しており、お尋ねの「米国が日本に期待するもの」についてお答えすることは困難である。
 また、当該見直し作業における在日米軍の軍事態勢の見直しは、我が国を含む極東の平和と安全の維持を目的とした日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)及び関連取極を変更することなく行われるものであると考えている。

三の4について

 中国の軍事費については、国防予算の総額が財政支出報告中に明示されていないなど、必ずしもその実態が明らかでないと認識している。我が国としては、国防予算を含めた中国の国防政策について、透明性の向上を図るべく、従来より多国間や二国間の対話の場で働きかけてきたところであり、今後ともこうした働きかけを行っていく考えである。
 お尋ねの中国海洋調査船の活動については、最近、我が国の排他的経済水域において、海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)等の手続を踏まない事例が増加しており、その都度、我が国から、現場水域において及び外交ルートを通じて、調査活動の即時の中止等を厳重に申し入れてきているところである。
 お尋ねの「尖閣沖での違法活動」については、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配しているところ、政府としては、我が国の領土、領海等において違法行為が行われれば、国内法に従って、適切に対処していく考えである。



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