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平成十六年八月十一日受領
答弁第四五号

  内閣衆質一六〇第四五号
  平成十六年八月十一日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員島聡君提出法務省によるプロバイダー等への情報削除要請に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員島聡君提出法務省によるプロバイダー等への情報削除要請に関する質問に対する答弁書



一について

 法務省人権擁護機関(法務局長、地方法務局長又は法務省人権擁護局長をいう。以下同じ。)においては、インターネット上のホームページ、電子掲示板等に掲載された情報(以下「インターネット情報」という。)が人権を侵害している場合、人権侵犯事件調査処理規程(平成十六年法務省訓令第二号)第十三条第一号の規定に基づき、被害者に対し、当該インターネット情報の削除をプロバイダ等(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)第二条第三号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。以下同じ。)に依頼する方法を教示したり、同規程第十四条第一項第一号の規定に基づき、プロバイダ等に対し、当該インターネット情報の削除の要請(以下「削除要請」という。)を行うなどして対処しているところである。法務省人権擁護機関が削除要請を行うか否かについては、法務局、地方法務局又は法務省人権擁護局による調査の結果を踏まえて、それぞれの事案ごとに個別具体的に判断されるものであり、御指摘の各事例に関してお答えすることは困難であるが、一般論として答弁する。
 なお、御指摘のように、電気通信事業者の団体等によって構成されるプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が平成十六年七月三十日に公表し、意見募集を開始した「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」の改定案(以下「新ガイドライン案」という。)は、法務省人権擁護機関が行う削除要請のうち、特定の者に対する名誉毀損又はプライバシー侵害を生じさせるインターネット情報につき、一定の様式に基づいて行うものに対するプロバイダ等の側の対応指針を示したものであると承知している。
 お尋ねの一の1に関して申し上げると、法務局、地方法務局又は法務省人権擁護局による調査の結果、特定の地域を中傷するインターネット情報が、その地域に居住する不特定多数の者に対する不当な差別的取扱いを助長し、又は誘発する目的で掲載されており、当該インターネット情報を放置することにより、不当な差別的取扱いを助長し、又は誘発するおそれがあることが明白であると認められる場合には、法務省人権擁護機関が行う削除要請の対象となる可能性がある。なお、当該インターネット情報は、一般的には、新ガイドライン案が示している特定の者に対する名誉毀損又はプライバシー侵害を生じさせるインターネット情報には含まれないものと思われるが、新ガイドライン案は、従来から法務省人権擁護機関が実施してきている削除要請を妨げるものではないと考えている。
 お尋ねの一の2から5までに関して申し上げると、名誉毀損の不法行為については、問題とされる表現行為が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば成立し得る(最高裁判所平成九年五月二十七日第三小法廷判決、民集五十一巻五号二千二十四頁)が、その行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立せず、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には、故意又は過失がなく、不法行為は成立しない(最高裁判所昭和四十一年六月二十三日第一小法廷判決、民集二十巻五号千百十八頁)と解される。また、プライバシー侵害の不法行為については、私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれがあり、かつ、一般人の感受性を基準にして当該個人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められ、一般の人々にいまだ知られていない情報については、これをみだりに公開されない法的利益がある(東京地方裁判所昭和三十九年九月二十八日判決、判例時報三百八十五号十二頁)と考えられ、その情報を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に、これをみだりに公表する行為について不法行為が成立する(最高裁判所平成十五年三月十四日第二小法廷判決、民集五十七巻三号二百二十九頁)と解される。右に示した判例等に照らして、インターネット情報の掲載が、法務局、地方法務局又は法務省人権擁護局による調査の結果、名誉毀損又はプライバシー侵害と認められ、かつ、当該被害者が自ら被害の回復及び被害の拡大の予防を図ることが諸般の事情を総合考慮して困難と認められる場合には、法務省人権擁護機関が行う削除要請の対象となる可能性がある。

二について

 お尋ねのように、被害者本人ではない第三者からインターネット情報の掲載について、人権侵害であるとの指摘があった場合についても、法務省人権擁護機関において、削除要請を行う可能性がある。

三について

 お尋ねのような仕組みの導入を検討することは考えていない。

四について

 法務省人権擁護機関においては、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会を構成する団体に属さないプロバイダ等においても、新ガイドライン案に示された指針に基づいた対応がとられることを期待しているが、そのようなプロバイダ等に対しても、必要に応じ、適切な方法による削除要請を行ってまいりたい。なお、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会は、同協議会を構成する団体に属さないプロバイダ等であっても、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律に対応する自主ルールを定めるに当たり、同協議会が策定するガイドラインを参考にしていただきたいとの意向を示しているものと承知している。
 また、海外のプロバイダ等については、法務省人権擁護機関において、削除要請を行うことが困難であるが、人権侵害を生じさせるインターネット情報に対する実効性のある対応方法について検討してまいりたい。



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