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平成十六年九月三日受領
答弁第六四号

  内閣衆質一六〇第六四号
  平成十六年九月三日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員前田雄吉君提出スリランカの南部ハイウェイ建設事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員前田雄吉君提出スリランカの南部ハイウェイ建設事業に関する質問に対する答弁書



一について

 スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ」という。)政府は、コロンボ近郊から南部地域までの自動車専用道路を建設する事業(以下「本件事業」という。)を進めているが、このうち北側の部分を建設する「南部ハイウェイ建設計画」(以下「本計画」という。)について、我が国政府は、二千年十一月十三日にスリランカ政府との間で円借款の供与に関する交換公文を締結し、国際協力銀行は、二千一年三月三十日にスリランカ政府との間で借款契約を締結した。
 本計画は、スリランカ政府の事業であり、その実施における環境等への影響については、第一次的にはスリランカ政府が責任を持つべきものであるが、スリランカ政府は、本計画の策定に当たり環境影響評価を実施し、本計画の路線選定等に特段の問題はないと考えていると承知している。我が国政府としても、国際協力銀行による審査を通じ、スリランカ政府が環境等の面への影響を十分に考慮して路線を選定したことを確認している。また、住民の移転を伴うものを含めて本計画の実施に当たって必要となる土地収用に係る補償は、スリランカ政府が作成した移転実施計画に基づいて実施されることになっており、一部では既に支払が開始されていると承知している。
 スリランカ首相が本件事業に係る住民からの苦情を処理すること等を目的とした委員会を設置し、また、アジア開発銀行において異議申立て協議手続が進行していることは承知している。国際協力銀行は、政府開発援助として実施される本計画への円借款供与がその目的を十分に達するよう確実を期すとの観点から、本計画について環境等の面への配慮が適切に払われていることを確認するために、これまで必要に応じ、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を行ってきているところであり、我が国政府は、これまでに本計画を中止しなければならないような問題は生じていないと承知している。
 国際協力銀行は、本計画の工事に先立つ設計及び入札補助の実施のために円借款の拠出を既に一部開始しており、我が国政府及び国際協力銀行としては、引き続きスリランカ側において本計画について環境等の面への配慮が適切に払われることを確認しつつ、今後もスリランカ側での作業の進ちょくに応じて拠出を行い、もって、スリランカの経済社会開発を支援していく考えである。

二について

 我が国政府が理解している本件事業の総事業費は、千九百九十九年十一月のアジア開発銀行の融資承認時点で、約二億九千六百万米ドルであり、このうちアジア開発銀行の融資承認額は、六千四百八十六万特別引出権(融資承認時点で約九千万米ドル相当)である。また、二千四年八月までの本件事業に関するアジア開発銀行の融資実行額は、千五百三十六万千特別引出権(同月時点で約二千二百五十万米ドル相当)であると承知している。そして、アジア開発銀行融資承認時点で、アジア開発銀行のほか、国際協力銀行が約一億二千万米ドル、ノルウェー開発基金が約六百七十万米ドル、スウェーデン国際開発庁が約百万米ドル、スリランカ政府が約七千八百二十万米ドルをそれぞれ本件事業に資金提供することとされていた。
 アジア開発銀行がこのような金額の融資を決めたことに、特段の問題があったとは考えていない。

三について

 円借款供与の対象となる事業において、環境影響評価は、借入国政府が行うものであり、国際協力銀行が行うものではない。また、本計画の路線選定についても同様であると承知している。しかし、国際協力銀行は、政府開発援助として実施する本計画への円借款供与がその目的を十分に達するよう確実を期すとの観点から、スリランカ政府により本計画について環境等の面への配慮が適切に払われることを確認するため、これまで必要に応じ、スリランカ政府との協議等を行い、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を行ってきている。国際協力銀行のこのような活動は適切なものであると考えている。

四について

 国際協力銀行は、地域住民や現地非政府組織の意見を重視しており、スリランカ政府の行う地域住民等との協議等において、環境等の面への配慮が十分ではない等の具体的な指摘があった場合には、必要に応じ、スリランカ政府による適切な対応を促すこととしている。

五について

 本計画は、スリランカ政府の事業であり、スリランカ政府が、本計画の策定に当たり実施した環境影響評価は、既にスリランカ政府においてパブリックコメントの手続に付されている。国際協力銀行が行うのは、スリランカ政府が本計画を実施するに当たり、環境等の面への適切な配慮を払っているかどうかを国際協力銀行としても確認することであり、環境影響評価において取りまとめられるような調査報告書を取りまとめることではないので、国際協力銀行として、パブリックコメントの手続をとることは考えていない。

六について

 国際協力銀行は、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を通じスリランカ政府に伝達すべき情報を得た場合やスリランカ政府の行う地域住民等との協議等において環境等の面への配慮が十分ではない等の具体的な指摘があった場合には、必要に応じ、スリランカ政府による適切な対応を促すこととしている。

七について

 スリランカ政府ハイウェイ省は、二千三年十二月三十一日付けの文書により、本件事業に関して収用の対象となる土地についてスリランカの土地収用法に基づく法定補償額に加えて、更に支払が行われる場合に、当該支払が原則として当該法定補償額の二十五パーセントを超えるべきではないとの趣旨の土地収用移転委員会の決定を関係先に通知したと承知している。当該法定補償額は、スリランカの土地収用法上、収用の対象となる土地の市場価値に基づき算定されるとされており、当該市場価値は、当該土地が自由な市場において売却された場合に得られることが期待される金額とされていると承知している。

八について

 お尋ねの住民移転計画とは、二千二年十月にスリランカ政府が作成した移転実施計画を指すと考えるが、この計画においては、土地等の種類等によってその交換費用等が補償される旨記述している。この交換費用等は一般に法定補償額を上回ると理解しているが、七についてで述べた通知は、土地収用移転委員会が算定した土地評価額が法定補償額を上回る場合に、当該法定補償額に追加して住民に支払を行うことについて規定したものであり、移転実施計画の趣旨に反するものではないと理解している。

九について

 アジア開発銀行は、その業務により影響を受ける人々が問題解決を求められるよう異議申立て協議手続を有している。アジア開発銀行の業務マニュアルのうち、この異議申立て協議手続の進め方等について定めているアカウンタビリティー・メカニズムの業務マニュアル(以下「業務マニュアル」という。)のパラグラフ十二で示されている別添一には、異議申立て協議手続の段階ごとに日数が表示されていると承知している。
 しかしながら、業務マニュアルに表示されている各段階の日数は、あくまでも目安としてのものであるというのがアジア開発銀行事務局の見解であり、我が国政府としても、そのように考えている。
 また、パラグラフ十三では、問題解決のための行動を実施する過程で問題解決を促進するために各当事者が必要とする期間については異議申立て協議手続の期間に算入しないとされている。本件事業に係る住民からの苦情を処理する等の目的でスリランカ首相が設置した委員会が中間報告書をとりまとめる期間は、一方の当事者であるスリランカ政府が問題解決を促進するために必要とする期間であると言えるので、アジア開発銀行において異議申立て協議手続を担当しているスペシャル・プロジェクト・ファシリテーターがその完成を待つことは、この規定に沿ったものであると考えている。
 このようなことから、本件事業に係る異議申立て協議手続において、スペシャル・プロジェクト・ファシリテーターが異議申立て協議の受付から四十九日以内に審査及び評価の報告書をアジア開発銀行総裁に提出していないことが直ちに業務マニュアルに違反するわけではないと認識している。
 我が国政府としては、アジア開発銀行が、スリランカ政府や申立人と十分協議の上、業務の範囲で生じた問題の解決をできる限り早期に行うことが当事者双方にとって望ましいと考えており、今後もアジア開発銀行の本件異議申立て協議手続が適正に進行されるよう注視してまいりたい。



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