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平成十七年六月二十一日受領
答弁第七九号

  内閣衆質一六二第七九号
  平成十七年六月二十一日
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 細田博之

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員赤嶺政賢君提出被爆体験者精神影響等調査研究事業の医療給付制度の改定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員赤嶺政賢君提出被爆体験者精神影響等調査研究事業の医療給付制度の改定に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘のような取扱いを定めた「被爆体験者精神影響等調査研究事業の適正な実施について」(平成十七年四月十三日付け健発第〇四一三〇〇六号厚生労働省健康局長通知)による新たな「被爆体験者精神影響等調査研究事業実施要綱」(以下「新実施要綱」という。)は、厚生労働省健康局長の私的検討会である「被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会」が平成十六年十二月に取りまとめた「被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)を踏まえ、「被爆体験者精神影響等調査研究事業」(以下「本事業」という。)の対象者についての居住区域の取扱いを改めるとともに、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患を有する者に対し、当該精神疾患(これに合併する身体化症状又は心身症がある場合は、当該身体化症状又は心身症を含む。以下「特定の精神疾患」という。)の治療等に係る医療費の支給を行うこと等により、その症状の改善、寛解及び治癒を図るという本事業の本来の目的に沿って、より効果的な内容や仕組みとしていくために、制定したものである。
 なお、新実施要綱の施行に当たっては、長崎県及び長崎市が、住民、医療関係者等に対する説明会を開催し、国も当該説明会に職員を派遣して説明を行ったところである。

二について

 「被爆体験者精神影響等調査研究事業の実施について」(平成十四年四月一日付け健発第〇四〇一〇〇七号厚生労働省健康局長通知)による「被爆体験者精神影響等調査研究事業実施要綱」(以下「旧実施要綱」という。)の目的においては、「「被爆体験」による精神的要因に基づく健康影響が認められる者に対し、関連する疾患・症状について医療費の支給等を行うことにより、その健康の保持と向上に資することを目的とする。」と規定していたが、本事業は、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患を有する者に対し、当該特定の精神疾患の治療等に係る医療費の支給を行うこと等により、その症状の改善、寛解及び治癒を図ることを本来の目的とするものであり、報告書において、本事業については本来の目的に立ち帰って効果的な内容や仕組みとしていくことが重要である旨の指摘が行われたことを踏まえ、新実施要綱においては、本事業の本来の目的を明確化したものであり、このことは、「発足当時の同事業の医療給付制度を後退させる」ものではない。

三について

 報告書において、旧実施要綱に基づく事業は、「対象者を精神科の視点でフォローする仕組みになっていない」との指摘が行われたことを踏まえ、新実施要綱においては、精神科医師が継続的に関与することを通じて本事業の本来の目的の達成を図るため、被爆体験者精神医療受給者証(以下「受給者証」という。)の更新の申請の際に、必ず精神科医師による特定の精神疾患に関する更新診断を実施することとしており、お尋ねのように旧実施要綱どおり三年に一回に戻すことは考えていない。

四について

 平成十七年度予算においては、一についてで述べたとおり、本事業の対象者についての居住区域の取扱いを改めるとともに、本事業を本来の目的に沿って、より効果的な内容や仕組みとしていくことを踏まえ、必要な予算として約九億円を計上しているものである。

五について

 医療費の助成を適正に行うため、受給者証に、当該受給者証の交付を受けた者が医療費の助成を受けることができる特定の精神疾患の名称を記載し、当該特定の精神疾患について医療費の助成を受けようとするときは、当該受給者証を医療機関に提出しなければならないこととしているが、受給者証は、本人の申請に基づき本人による使用のために交付されるものであり、「個人のプライバシーの侵害にあたるもの」との御指摘は当たらないと考えている。

六について

 新実施要綱を制定した理由は、一についてで述べたとおりであり、報告書においても、「対象者の拡大を行うに当たっては、本事業がその目的に沿って適切に実施されることが当然の前提である。(中略)具体的な改善措置を講じないまま対象者の拡大のみを行うことのないよう、強く指摘する」とされていることから、旧実施要綱に基づいて医療費の支給を行うことは考えていない。

七について

 本事業は、被爆体験に起因する各種の不安等に着目して、特定の精神疾患を有する者に対し、当該特定の精神疾患の治療等に係る医療費の支給を行うこと等により、その症状の改善、寛解及び治癒を図ることを目的とするものであることから、特定の精神疾患に該当しないがんは本事業の対象とならない。

八について

 御指摘の「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」(平成三年六月)については、同調査報告書について科学的な評価を行った「「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」検討報告書」(平成六年十二月)において、「指定拡大要望地域においては長崎原爆の放射性降下物の残留放射能による健康影響はないと結論付けることができる」とされ、また、御指摘の「原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書」(平成十二年三月)については、同調査報告書について科学的な観点からの精査及び研究を行った「原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書に関する検討会報告書」(平成十三年八月)において、当該地域住民に見られた健康水準の低下について、「原子爆弾の放射能による直接的な影響ではなく、もっぱら被爆体験に起因する不安による可能性が高いものと判断された。」とされており、これらの調査報告書について、再度、精査を行うことは考えておらず、また、「被爆体験者」に対して原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号。以下「法」という。)を全面的に適用することは考えていない。

九について

 法の前文においては、「被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。」と規定されており、法の制定の際、国会において、法の制定の趣旨に関し、「国家補償」の文言の取扱いも含め十分な審議が行われた上で成立したものであることから、お尋ねのように「国家補償を明記した被爆者援護法を制定」すべきであるとは考えていない。



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