衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十八年六月二十二日受領
答弁第三六六号

  内閣衆質一六四第三六六号
  平成十八年六月二十二日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平岡秀夫君提出犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に関する再質問に対する答弁書



1について

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「本条約」という。)第二条(a)にいう「目的」は、「組織的な犯罪集団」を定義するに当たって、集団が一体として行動する場合の目的に着目したものであり、具体的には、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うこと」と規定されている。また、本条約第五条1(a)(@)にいう「目的」は、同条1(a)(@)に規定する行為を犯罪とする場合における「合意」の対象となる犯罪の目的を規定したものであり、具体的には、「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的」と規定されている。そして、同条1(a)(A)柱書及び同条1(a)(A)bにいう「目的」は、同条1(a)(A)に規定する行為を犯罪とする場合における「参加」の対象となる活動を行う「組織的な犯罪集団」の目的を規定したものである。

2について

 本条約第五条1(a)(A)に規定する行為を犯罪とする場合においては、組織的な犯罪集団の「目的及び一般的な犯罪活動」を認識している場合又はその「特定の犯罪を行う意図」を認識している場合のいずれの場合をも犯罪とすることが義務付けられると解される。

3について

 本条約第五条1(a)(A)にいう「一般的な犯罪活動」とは、ある特定の組織的な犯罪集団が行っている犯罪活動一般を意味すると解される。その具体的な内容は、個々の組織的な犯罪集団により異なる。

4について

 本条約第五条1(a)(A)aは、組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、組織的な犯罪集団の犯罪活動に積極的に参加する個人の行為を犯罪とすることを求めているところ、そのような「犯罪活動」に「参加」するとは、当該犯罪活動に関与することと考えられるが、その具体的な内容は、個々の組織的な犯罪集団や犯罪活動により異なる。
 また、組織的な犯罪集団の犯罪活動に参加することと組織的な犯罪集団に参加することは、前者が活動に着目したものである一方、後者は集団に着目したものである点で異なる。

5について

 本条約第五条1(a)(A)にいう組織的な犯罪集団の犯罪活動に「積極的に参加する」とは、当該犯罪活動に一定の程度で関与することを意味すると解されるが、これに当たるか否かは、参加の態様等を踏まえ、個別具体の事例に則して判断されるべきものと考えられる。

6について

 本条約第五条1(a)(A)bにいう「その他の活動」とは、同条1(a)(A)aにいう「犯罪活動」以外の活動全般をいい、「組織的な犯罪集団のその他の活動」に「積極的に参加する個人の行為」を犯罪とすることが義務付けられるのは「当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る」ものとされている。

7について

 「一般的な犯罪活動」を認識しながら「その他の活動」に参加するとは、ある特定の組織的な犯罪集団が行っている犯罪活動一般を認識しながら、6についてで述べた活動に参加することを意味すると解される。また、「特定の犯罪を行う意図」を認識しながら「その他の活動」に参加するとは、組織的な犯罪集団の特定の犯罪を行う意図を認識しながら、6についてで述べた活動に参加することを意味すると解される。いずれにせよ、その具体的な内容は、個々の組織的な犯罪集団や活動の内容等により異なる。

8について

 「自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているとき」とは、ある個人が「組織的な犯罪集団のその他の活動」に積極的に参加することによって、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に一定の貢献をすることとなることを知っているときを意味すると解される。また、ある個人が「組織的な犯罪集団のその他の活動」に積極的に参加した場合であっても、当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知らないときは、このような参加を犯罪とすることが義務付けられていないと解される。いずれにせよ、その具体的な内容は、個々の組織的な犯罪集団の目的や参加の態様等により異なる。

9について

 お尋ねの参加罪について、本条約第五条1(a)(A)は、組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、「組織的な犯罪集団の犯罪活動」に積極的に参加する個人の行為だけでなく、「組織的な犯罪集団のその他の活動」についても、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っている場合には、これに積極的に参加する個人の行為を犯罪とすることを義務付けているが、我が国においては、後者のように、必ずしも特定の犯罪との結び付きのない活動に参加する行為自体を直接処罰する規定の例がなく、そのような法整備を行うことについては慎重な検討を要するものと考えられる。
 これに対して、同条1(a)(@)は、「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること」を犯罪とすることを義務付けているところ、このように特定の犯罪を実行することの合意を処罰の対象とすることについては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第七十八条の内乱陰謀の罪や爆発物取締罰則(明治十七年太政官布告第三十二号)第四条の爆発物使用の共謀の罪など、特定の犯罪行為を陰謀し又は共謀する行為を処罰する規定があり、我が国の法制との整合性があると考えられる。
 このようなことから、政府としては、お尋ねの参加罪ではなく、本条約第五条1(a)(@)に規定する行為を犯罪とする法整備を行うことが適当であると考えたものである。

10について

 他国がいわゆる参加罪を定めているかどうかについて、政府として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているわけではないが、本条約の締約国のうち、いわゆる参加罪を定めている国としては、例えば、フランスがあると承知している。フランスでは、一又は数個の重罪又は五年以上の拘禁刑で処罰される軽罪の準備のために結成された集団又はなされた謀議はすべて、その準備が一又は数個の客観的行為によって特徴付けられている場合は、凶徒の結社とされ、それへの参加が犯罪とされているものと承知している。

11について

 本条約第五条1(b)にいう「重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること」とは、その行為の態様に応じて、重大な犯罪の実行に一定の関与をすることを意味する。それぞれの行為類型は、具体的な事案や当該行為者の役割の内容等に応じて、我が国でいう共同正犯、教唆犯又は幇助犯に該当すると考える。なお、お尋ねの「予備・陰謀・共謀・参加」については、その意義が必ずしも明らかでないため、一概にお答えすることはできない。



経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.