答弁本文情報
令和四年六月二十四日受領答弁第一二四号
内閣衆質二〇八第一二四号
令和四年六月二十四日
内閣総理大臣 岸田文雄
衆議院議長 細田博之 殿
衆議院議員本村伸子君提出障がいを有する子・人への性暴力の根絶に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員本村伸子君提出障がいを有する子・人への性暴力の根絶に関する質問に対する答弁書
一の1について
刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十八条の「心神喪失」については、一般に、精神の障害によって正常な判断力を失っている状態をいい、同条の「抗拒不能」については、一般に、「心神喪失」以外の事由で心理的又は物理的に抵抗が不可能又は著しく困難な状態をいうものと解されている。
一の2について
刑法第百七十八条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正することについては、現在、法制審議会に設けられた刑事法(性犯罪関係)部会(以下「刑事法部会」という。)において、法務省のホームページにおいて公開されている議事録のとおり、様々な観点から法整備の在り方について調査審議が行われているところであり、まずは、その議論の状況を見守っていく必要があると考えている。
一の3及び二の1について
相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設することについては、現在、刑事法部会において、お尋ねの「心身の障害」及び「心身の障がいを有する人に対し、一定の地位・関係性を有する人」の内容や範囲も含め、法務省のホームページにおいて公開されている議事録のとおり、様々な観点から法整備の在り方について調査審議が行われているところである。
一の4及び5並びに二の2について
お尋ねの「心身の障がいを有する人」、「心身に障がいを有する人」及び「障がいを有する人」に対するものも含め、性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方については、現在、刑事法部会において、障害者の特性をも踏まえ、様々な観点から調査審議が行われているところであり、まずは、その議論の状況を見守っていく必要があると考えている。
三の1について
警察及び検察においては、「障害がある性犯罪被害者の事情聴取について」(令和三年三月十二日付け最高検刑第十七号最高検察庁刑事部長通知)(以下「最高検通知」という。)等に基づき、知的障害、精神障害、発達障害等、精神に障害を有する被害者に係る性犯罪事件を対象として、警察及び検察のうちの代表者が被害者から聴取する取組(以下「代表者聴取」という。)を令和三年四月一日から行っているところ、法務省において把握しているところでは、同日から同年九月三十日までの間に実施された代表者聴取の件数は、八十九件である。
三の2、5及び6について
お尋ねの観点も含めた実施結果の分析の在り方や将来の実施方針については、試行の状況を踏まえ、警察庁及び検察当局において検討していくものと承知している。
三の3及び4について
警察及び検察においては、最高検通知等に基づき、事件の内容、証拠関係、被害者の障害の程度等を考慮し、被害者の負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、代表者聴取を行うことが相当であると認められる事件のうち、試行するのに適した事件について、代表者聴取を実施することとしており、お尋ねの「被害者が障がいを有するにもかかわらず代表者聴取が実施されなかった事件及び実施されなかった理由」については、捜査機関の活動内容に関わる事柄であり、お答えすることは差し控えたい。
四について
お尋ねの「理由などの検証」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「障がいを有する子・人」に対するものも含め、性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方については、現在、刑事法部会において、障害者の特性をも踏まえ、様々な観点から調査審議が行われているところであり、まずは、その議論の状況を見守っていく必要があると考えている。
五について
お尋ねの「ハードルを下げるための方策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、現在、法務省では、関係機関等と連携するなどしながら、性暴力被害を受けた障害者を始めとして、障害者の司法アクセスの拡充を図るための必要な検討を進めている。