答弁本文情報
令和七年三月十八日受領答弁第八六号
内閣衆質二一七第八六号
令和七年三月十八日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員屋良朝博君提出沖縄における米兵による事件事故等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員屋良朝博君提出沖縄における米兵による事件事故等に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の石破内閣総理大臣の発言の趣旨については、令和七年二月二十八日の記者会見において、林内閣官房長官が 「御指摘の衆議院予算委員会における石破総理の答弁は、質疑者との一連のやり取りの中で行われたものでございますので、個別の表現ぶりのみを取り上げて論評することが適切であるというふうに考えておりません。その上で申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日米安保体制に基づく日米同盟が我が国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることが必要でございます。同時に、在日米軍の駐留に伴う地域住民の方々の生活環境への影響を踏まえ、各地域の実情に合った負担軽減の努力は、在日米軍の安定的な駐留を確保する上で必要であります。特に、沖縄の基地負担軽減は政権の最重要課題の一つであり、これまでも取組を続けてきております。これまで在日米軍関係者による事件・事故は、地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものと考えております。御指摘の石破総理の答弁は、こうした政府の一貫した立場を述べたものでございます。」と述べたとおりである。
二について
米側との外交上の個別のやり取りについては、相手側との関係もあり、お答えすることは差し控えたいが、合衆国軍隊構成員等による事件・事故は本来起きてはならないものであり、政府としては、米側に対して、綱紀粛正等を随時働きかけており、こうした事件・事故の防止に向けて、引き続き、米側とともに取り組んでまいりたい。
三について
お尋ねの「米側が発表した一連の再発防止策」については、令和六年七月に、在日米軍司令官が、米軍施設への出入りの際の飲酒運転に対する検問の強化、米軍の憲兵隊によるパトロールの強化、在日米軍内部での研修及び教育の強化、在日米軍の勤務時間外の行動指針であるリバティー制度の見直し、在日米軍、日本政府、沖縄県庁及び地元住民との協力のための新しいフォーラムの創設等を発表したと承知しているところ、お尋ねの「履行状況」については、例えば、飲酒運転に対する検問の強化については、在日米軍司令官が、地域ごとの米軍施設への出入りの多い時間帯を狙い、幾つかの米軍施設において当該検問の頻度を増やした旨発表し、また、同年十月一日から運用が開始された、見直し後の同制度の下では、在日米軍の全ての軍種の軍人について、例えば、午前一時から午前五時までの間、自宅やホテルを除く在日米軍施設及び区域外における飲酒を禁止するとともに、在日米軍施設及び区域外において酒類を提供する飲食店への入店を禁止するほか、在日米軍司令官の監督責任を強化してきており、加えて、同フォーラムについては、その開催に向け、沖縄県庁と米側との間で繰り返し意見交換が行われてきていると承知している。
お尋ねの「効果」については、定量的に把握することは困難であるが、これらの米側が同年に発表した一連の再発防止策が実効性のある形で実施され、実際に事件・事故の再発防止につながっていくことが重要であると考えており、政府として、米側に対し、これらの防止策の実効性の確保を含め、在日米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を働きかけてきており、引き続き、こうした働きかけを行うとともに、これらの防止策が実効性のあるものとなるよう、これらの効果を見極めながら、日米間で協力していく考えである。
四について
御指摘の令和五年十二月に発生した事件については、日本側の捜査当局において、事案が公になることによって被害者の名誉やプライバシーに甚大な影響を与えることがあり得ること等を考慮して、非公表とすべきと判断したものと承知しており、外務省においても、こうした判断を踏まえ、御指摘の「外務省事務方」において、関係者に対する情報提供は控えるべきものと理解し、対応したところである。その上で、お尋ねの「通報手続及び情報共有の仕組み」の「変更」を米側に「確認」したことはないが、日本側の捜査当局から同省への情報提供を踏まえ、日米間で適切な情報のやり取りが行われ、また、日本側の関係当局による迅速な対応も確保されていたところであり、こうした対応においては、お尋ねの「日米合意に従わない判断」、「日本側が一方的に通報手続及び情報共有の仕組みの変更」又は「個人情報を伏せれば問題は起きないにもかかわらず、通報手続を使わないことを優先」をしたものではなく、御指摘の平成九年三月三十一日の在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続に関する日米合同委員会合意の目的が達成されたものであると考えている。
五について
令和五年十一月二十九日に屋久島沖で発生したティルト・ローター機CV−二二の墜落事故(以下「本件事故」という。)については、令和六年八月二日(日本時間)、米側から、本件事故の状況及び原因に関する事故調査報告書が公表され、本件事故の原因は、「プロップローター・ギアボックスの突発的故障」及び「操縦士の意思決定」とされており、また、お尋ねの「根本原因」については、「初期不具合の証拠を不明確にした二次的な損壊により特定することはできない」と結論付けられていると承知しているが、政府としては、本件事故を受け、米側との間で技術情報に関する前例のない極めて詳細なやり取りを行っており、本件事故の原因に対応した安全対策の一つとして、「屋久島の沖合で発生した米空軍横田基地所属のCV−二二オスプレイの墜落事故に関する事故調査報告書」(令和六年八月防衛省作成)に記載のとおり、「チップ探知機を用いて、全機を対象に運用再開前の予防的点検を行うとともに、維持整備の頻度を増やすことで、PRGBの不具合の予兆を早期に把握」し、「必要に応じPRGBを交換」することとしており、このことにより、引き続き、安全な運用を行うことができると考えている。
六について
お尋ねの「PFASが検出されたとき」の具体的な状況及び「責任」の具体的に意味するところが明らかではなく、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、在日米軍施設及び区域周辺においてペルフルオロ(オクタン−一−スルホン酸)等が検出された場合の対応については、個別具体の事案に応じ、その必要性を踏まえ、関係府省庁において行っているところである。
七及び八について
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)を含むアジアにおける安全保障の在り方については、自由民主党において、現在、幅広い議論が行われており、今後も、引き続き議論が重ねられていくものと承知しているところ、政府としては、同党における議論も踏まえつつ、日米同盟の抑止力及び対処力を強化するとともに、その強靱性及び持続性を高めていくという観点から、これについて検討していく考えである。
また、沖縄の負担軽減については、政府の最重要課題の一つであると考えており、例えば、令和七年二月七日の日米首脳会談においても、石破内閣総理大臣からトランプ米国大統領に対して、沖縄の負担軽減の必要性を説明したところである。