答弁本文情報
令和七年五月十六日受領答弁第一七四号
内閣衆質二一七第一七四号
令和七年五月十六日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員屋良朝博君提出NHK福岡放送局が制作・放映した番組における陸上自衛隊幹部候補生学校の教官が候補生たちに述べた沖縄戦についての発言に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員屋良朝博君提出NHK福岡放送局が制作・放映した番組における陸上自衛隊幹部候補生学校の教官が候補生たちに述べた沖縄戦についての発言に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「同教官」の「同発言」は、「同教官」の個人的な見解を述べたものであり、その一々についてお答えすることは差し控えたい。なお、政府としては、先の大戦において、沖縄は国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くし難い苦難を経験されたと承知している。このような悲惨な経験を風化させることなく、次の世代に継承することが重要であると認識している。
二の1について
陸上自衛隊幹部候補生学校は、自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)第三十三条の二に規定する「陸上自衛隊の初級幹部としての職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練を行うこと」を目的としており、御指摘の「同教官」の「同発言」は、同学校の設置目的に合致しない。また、同学校において行われる一般幹部候補生課程については、陸上自衛隊の教育訓練に関する訓令(昭和三十八年陸上自衛隊訓令第十号)第二十九条第二項に規定する「幹部としての資質を養うとともに、初級幹部として必要な基礎的な知識及び技能を修得させる」ことを趣旨としており、「同教官」の「同発言」は、同学校の教育訓練の趣旨に合致しない。
二の2について
陸上自衛隊幹部候補生学校では、二の1についてで述べた設置目的及び教育訓練の趣旨に基づき教育を行っているところであり、御指摘の「戦争で一般国民も自衛隊とともに犠牲をいとわず戦闘すべきであるとの考えを、将来の自衛隊幹部に伝授する方針」ではない。
三の1について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、陸上自衛隊幹部候補生学校においては、御指摘の「特攻作戦」を「奨励」していない。なお、政府としては、先の大戦において、沖縄は国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くし難い苦難を経験されたと承知している。このような悲惨な経験を風化させることなく、次の世代に継承することが重要であると認識しており、同学校としても同様の認識である。
三の2について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「自身の派遣が決まった際」の個別の発言等について、逐一把握していないため、お答えすることは困難である。
四の1及び2について
お尋ねについては、陸上自衛隊幹部候補生学校が、日本放送協会福岡放送局に対し、令和七年一月二十九日に電子メールにより「陸上自衛隊幹部候補生学校においては、「先の大戦において、沖縄は、国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くし難い苦難を経験されたと承知しております。多くの住民の皆さんの尊い命が犠牲となり、二度とこのような悲惨なことを繰り返してはなりません。」という認識に立っております。こうした認識の下、陸上自衛隊幹部候補生学校における教育では、特に、第三十二軍司令部の首里からの撤退後に住民の皆さんが多数戦禍に見舞われた事実を取り上げ、将来の陸上自衛隊の幹部になる者に対して、国土戦の実相や、有事における国民保護の重要性等について教育を行っています。本課程においても、幹部候補生に対し、昨年十月の校内教育、十二月の沖縄戦史現地教育の事前教育、研修地である喜舎場、前田高地等における教育、移動中の車内での教育などの機会を捉えて、こうした内容を繰り返し教育しております。今回、御指摘のあった教官の発言は、幹部候補生学校の見解ではなく、このような発言があったことは遺憾です。幹部候補生学校長は、当該教官に対し、速やかに指導し、本人も深く反省しています。また、学校職員に対し、今後は、現地において、上官が教官を指導できる態勢をとることを指示しました。また、幹部候補生に対し、御指摘のあった教官の発言を是としていないことや、二度と悲惨な戦争を繰り返してはならないこと、万一の際における国民保護の重要性、幹部自衛官としての責任の重さ等についてあらためて教育を実施しました。」と回答したとおりである。
四の3について
御指摘の「一連の発言」について、現時点においては、陸上自衛隊幹部候補生学校において、「ハラスメントを受けた等の申告」があったとの報告は受けていないが、今後、報告があった場合には、厳正に対処していく。
四の4について
お尋ねは個別の人事に関する事柄であり、その詳細を公にすることは、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
四の5について
陸上自衛隊幹部候補生学校の教官については、二の1についてで述べた同学校の設置目的を踏まえ、知識、経験、能力、適性等を総合的に勘案して選考しているところである。