答弁本文情報
令和七年六月三日受領答弁第一九八号
内閣衆質二一七第一九八号
令和七年六月三日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員八幡愛君提出日本の成人向け映像コンテンツによる外貨獲得の機会損失と海賊版対策に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員八幡愛君提出日本の成人向け映像コンテンツによる外貨獲得の機会損失と海賊版対策に関する再質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねの「支援・流通整備・国際的知財保護など」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、各産業等の支援に関する個別の施策の対象とするか否かについては、各施策の趣旨目的等に応じ、国民の理解を踏まえ、限られた予算等の中で、その必要性等を判断することとしている。その上で、例えば、各種の国の補助制度や公的な金融支援においては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第五項に規定する性風俗関連特殊営業(以下「性風俗関連特殊営業」という。)を行う事業者をこれまで基本的に対象外としてきたこと等を踏まえて、補助制度等の対象を判断することとしている。
一の2について
先の答弁書(令和七年五月九日内閣衆質二一七第一六四号)においては、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号。以下「AV出演被害防止・救済法」という。)第二条第二項に規定する「性行為映像制作物」を「制作物」として定義し、御質問にそれぞれ回答したものである。
一の3について
お尋ねの「流通環境改善、識別技術の支援、国際ルール交渉など」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「作品側の支援に資する施策」はAV出演被害防止・救済法を根拠として講ずる施策には該当しないと考えている。
一の4について
お尋ねの「作品そのものが地下経済的に流通し、正規業者の収益が毀損され、海賊版が拡散する」の具体的な状況並びに「この収益の喪失」及び「正当な対価の喪失」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、一般論として、「出演者への」「対価」には様々な要因が影響するものと考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、AV出演被害防止・救済法については、令和四年六月十四日の参議院内閣委員会において、AV出演被害防止・救済法の提案者から、その立法趣旨について、「AV出演被害が出演者の心身と私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害をもたらすことから、その被害の発生と拡大の防止を図り、被害を受けた出演者の救済のために徹底した対策を講ずることにより、出演者の個人としての人格を尊重し、その心身の健康と私生活の平穏等を保護しようとするもの」との説明がなされており、AV出演被害防止・救済法には、「被害を受けた出演者の救済」のための規定が設けられているところ、御指摘の「本件コンテンツ」に関する「映像制作環境全体の健全性を確保する」ための「制度的施策」については、AV出演被害防止・救済法を根拠として講ずるものではないと考えており、これに関して、現時点で特段の対応を行っていないことは、AV出演被害防止・救済法の立法趣旨を損なうものではないと考えている。
二の1について
お尋ねの「対応が一切とられていない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「Anitube」、「Miomio」等の「海賊版サイト」による被害については、政府として、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構による外国政府機関、外国の権利者の団体等との連携に対して補助金交付等の支援を行ったものであるところ、「外交交渉・知財条約上の主張・海賊版サイトへの照会」の要否については、知的財産制度をめぐる国際的な動向、具体的な知的財産権の侵害の状況、国民の理解等を踏まえ判断することとしている。
二の2について
お尋ねについては、政府として、国民の理解を踏まえ、限られた予算等の中で各産業等の支援を行っているところ、各種の国の補助制度や公的な金融支援において、性風俗関連特殊営業を行う事業者をこれまで基本的に対象外としてきたこと等も踏まえ、令和六年度の「クリエイター・事業者支援事業(クリエイター・事業者海外展開促進)」において「成人向けコンテンツ(第三者自主規制機関によって十八歳未満の児童が鑑賞・購入・アクセスを制限されているコンテンツ)およびこれに準ずるもの」を対象外とするなど、お尋ねの「本件コンテンツ」を日本のコンテンツの海外展開支援の対象外としている。
二の3について
お尋ねの「制度的に回避していること」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、日本のコンテンツの海外展開支援といった支援施策については、国民の理解を踏まえ、限られた予算等の中で行う必要があるところ、これらの施策の対象とならないことが、必ずしも収益の喪失等を意味するとは考えていない。
三の1について
お尋ねについては、例えば、日本のコンテンツの海外展開支援といった個別の支援施策の対象とならないことが、お尋ねの「事実上の構造的職業差別」に該当するとは考えていない。
三の2について
御指摘の「保護すべき労働者」及び「他の職業と同様の価値を有する」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、先の答弁書(令和七年五月十六日内閣衆質二一七第一七五号)一についてでお答えしたとおり、一般論として申し上げれば、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号。以下「労働施策総合推進法」という。)においては、労働施策総合推進法第一条第一項等に基づき、全ての「労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上」等を図ることを目的として、各種施策を講ずることとされているところである。
三の3について
お尋ねの「合法である限り、いかなる職業も制度的に支援の対象外とすることはないという立場」及び「政府見解」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、コンテンツ産業の振興に関する個別の支援施策については、必要性等に基づき、国民の理解を踏まえ、限られた予算等の中で、それぞれその対象を決定することとしている。
四の1及び2について
お尋ねの「国際交渉や外交方針の対象から外すこと」、「整合的と考える」、「こうした排除」及び「倫理的・文化的・社会的配慮」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、具体的な「国際交渉や外交方針の対象」については、知的財産制度をめぐる国際的な動向、具体的な知的財産権の侵害状況、国民の理解等を踏まえ個別に判断することとしている。
四の3について
御指摘の「制度的に妨げられている現状」及びお尋ねの「合法である限り他産業と同様に政策支援の対象となりうるとの原則」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、コンテンツ産業の振興に関する個別の施策の対象とするか否かについては、各施策の趣旨目的等に応じ、国民の理解を踏まえ、限られた予算等の中でその必要性等を判断することになる。その上で、例えば、各種の国の補助制度や公的な金融支援においては、性風俗関連特殊営業を行う事業者をこれまで基本的に対象外としてきたこと等を踏まえて、補助制度等の対象について判断することとしている。