答弁本文情報
令和七年六月二十四日受領答弁第二七六号
内閣衆質二一七第二七六号
令和七年六月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員鈴木庸介君提出独立行政法人国際協力機構の信用保証業務におけるポートフォリオに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員鈴木庸介君提出独立行政法人国際協力機構の信用保証業務におけるポートフォリオに関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「ポートフォリオの審査のプロセス及び基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、債務の保証に係る審査のプロセスについては、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)がこれまで行ってきた海外投融資業務の審査のプロセスと同様、我が国又は開発途上地域の法人等からの相談に基づき、必要に応じて海外投融資リスクアドバイザリー委員会の関与を得つつJICAにて審査を行い、外務省、財務省及び経済産業省による審議やJICAの理事会の審議を経て、案件採択の可否を決定するものと承知している。また、JICAの債務の保証に係る審査の基準については、令和七年三月二十六日の衆議院外務委員会において、岩屋外務大臣が「この信用保証業務の実施におきましては、現地民間金融機関による融資の貸倒れ率、債権保全措置の状況、金融市場の動向などを踏まえまして、信用保証の付与に伴うリスクを適切に評価し、その上で、当該リスクに見合った保証料を徴収し、既存の海外投融資業務と同様に、業務全体として利回りが事業のリスクを上回るように運用する考えでございます。」と答弁しているとおりである。
二について
お尋ねの「現地金融機関及び企業に課されるJICAへの情報提供義務とそれに関連する取決め」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、JICAは、債務の保証の付与に当たり、開発途上地域の現地金融機関に対し、JICAが債務の保証のリスク管理を適切に実施するために必要な情報の提供を求めることとしており、その詳細については現在検討中であると承知している。
三について
お尋ねの「ポートフォリオの審査期間」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、債務の保証に係る業務の審査期間については、個別具体的な状況にもよることから、一概にお答えすることは困難である。また、債務の保証の付与に当たり、JICAが自らポートフォリオを組成することはなく、原則として、JICAがあらかじめ開発途上地域の現地金融機関の融資先の適切性について基準を定め、当該現地金融機関はその基準に該当するポートフォリオを組成し、それをJICAが審査すると承知している。
四について
お尋ねの「開発事業について想定する事業範囲」については、JICAの債務の保証に係る業務は、開発途上地域において民間企業が行う開発効果の高い事業であって一般の金融機関のみでの対応が困難なものについて実施することとしており、現時点では、特に、開発途上地域の現地金融機関が地場中小企業等に対して行う複数の融資を束ねた融資ポートフォリオに対する保証を想定している。
お尋ねの「軍事関連事業は除外されるのか」については、「開発協力大綱」(令和五年六月九日閣議決定)の「開発協力の適正性確保のための実施原則」において、「開発協力の実施に当たっては、軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」との原則を定めており、JICAの債務の保証に係る業務についても同原則に従って実施される。
五について
お尋ねの「対応手段」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、保証対象となる開発途上地域の地場中小企業等が債務不履行に陥った場合のJICAの対応については、令和七年三月二十六日の衆議院外務委員会において、宮路外務副大臣が「当該保証対象となる融資先の現地企業が債務不履行に陥り保証履行を行った場合は、JICAが当該現地企業への求償権を有することとなります。求償権については、JICAが直接回収するのではなく、現地金融機関が引き続き回収を継続し、JICAは現地金融機関が回収できた資金を保証比率に応じて得ることとなります。」と答弁しているとおりである。
六について
お尋ねの「保証料を個別企業が負担する場合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、債務の保証に係る業務においては、JICAは開発途上地域の現地金融機関から保証料を徴収することとなるため、ポートフォリオに含まれる個別企業から保証料を徴収することは想定されない。
七について
お尋ねについては、JICAは、当面の間、債務の保証に係る業務において実績のある国際開発金融機関等と協調し、これらの機関の知見も得ながら当該業務を行う予定である。
八について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「JICAが求償権を取得した後」は、JICAは、求償権を取得した債権について、開発途上地域の現地金融機関を通じて資金の回収に努めることとなる。
九について
お尋ねについては、債務の保証に係る業務において実績のある国際開発金融機関等では、開発途上地域の現地金融機関との保証契約において、保証対象のポートフォリオにおいて債務不履行が生じた融資の割合が一定の水準を超える場合には保証対象となる新規の融資を追加的に認めないとの取決めをするといった運用例があると承知しており、JICAの債務の保証に係る業務についても、こうした他の機関の運用も参考にしつつ実施していく考えである。
十について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、JICAの債務の保証に係る業務は、我が国又は開発途上地域の法人等が行う開発事業(開発途上地域の経済及び社会の開発に寄与し、かつ、我が国との経済交流を促進するため必要と認められる事業をいう。)の実施に必要な資金又は当該法人等が設定する計画であって開発途上地域の経済及び社会の持続可能性の向上に資するものの達成に必要な資金について実施することとされており、開発途上地域において現地金融機関が地場中小企業等に対して行う複数のこれらの資金の融資を束ねた融資ポートフォリオに対してJICAが保証を行うことは、開発途上地域における多様な資金ニーズに応えるとともに、民間資金を動員し、開発途上地域の開発課題の解決に貢献するものであると考えている。