答弁本文情報
令和七年六月二十四日受領答弁第二八二号
内閣衆質二一七第二八二号
令和七年六月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員屋良朝博君提出さとうきびの生産振興及び製糖企業の経営安定に向けた支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員屋良朝博君提出さとうきびの生産振興及び製糖企業の経営安定に向けた支援に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「糖価調整制度の基盤となる砂糖勘定」については、砂糖の国際相場の上昇、外国為替相場の動向等により、「累積赤字」の額が令和六年九月末時点で六百三十八億円となったことも踏まえ、「糖価調整制度」の安定的運営を図るため、令和六年度補正予算において糖価調整制度安定運営緊急対策交付金として六十億円を措置したところである。また、同年十月から、砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律(昭和四十年法律第百九号)第九条第一項に規定する指定糖調整率を引き上げたほか、同年四月に、異性化糖の調整金(同法第十五条第一項の売戻しの価格と同法第十三条第一項の買入れの価格との差額をいう。)の徴収を再開する等、必要な取組を行っているところであり、引き続き、「糖価調整制度」の関係者の理解と協力を得ながら、制度の安定的運営に向けて取り組んでまいりたい。
二について
御指摘の「さとうきび増産プロジェクト」に基づく取組については、現在、令和六年度補正予算において畑作物産地生産体制確立・強化緊急対策事業等を措置し、さとうきびの生産性向上等の取組を支援しているところ、お尋ねについては、まずは、令和七年十二月までに、沖縄県及び鹿児島県において、御指摘の「次期のプロジェクト」の策定がなされることが重要と考えており、農林水産省としては、「さとうきび増産に向けた取組目標及び取組計画の改定について」(令和七年四月二十八日付け七農産六百十五号農林水産省農産局長通知)を発出し、その策定を促したところである。
三の1について
お尋ねの「新規就農者育成総合対策」に係る事業のうち、就農準備段階や経営開始段階の資金の交付及び農業用機械、施設等の導入等に必要な経費の支援において、一定の要件を満たした四十九歳以下の者を対象としていることについては、「食料・農業・農村基本計画」(令和七年四月十一日閣議決定)において、「農業者の減少・高齢化は著しく進展している」中、「農業者の世代間のバランスの確保などを図ることで、持続可能な農業構造にしていくことが重要」としているところ、この考え方により具体的な要件を定めているものであり、適切であると考えている。
三の2について
農林水産省においては、野生鳥獣による農作物等の被害を防止するため、鳥獣被害防止総合対策交付金により、都道府県を通じ、侵入防止柵の設置等による被害防除等の取組を支援しており、鹿児島県においては、同交付金を活用し、アマミノクロウサギの侵入防止柵の設置が行われていると承知している。引き続き、同交付金による支援を行ってまいりたい。
三の3について
農林水産省においては、さとうきびの安定的な生産に向けて、御指摘の「被害防止対策」として、農林水産研究推進事業により、御指摘の「選択性除草剤」等による雑草防除効果の評価に関する研究を国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構を中心とするコンソーシアムに委託して行っているところであり、現時点で、御指摘のような「新たな選択性除草剤の開発」に関する研究を行う考えはない。また、「難防除雑草の管理の徹底」に向けて、令和六年度補正予算において畑作物産地生産体制確立・強化緊急対策事業を措置し、「難防除雑草」の防除に資する肥培管理等に必要な経費の支援を行っているところであり、同省としては、引き続き、さとうきびの安定的な生産に必要な取組を行ってまいりたい。
三の4について
国内で製造し、若しくは加工し、又は輸入される農薬については、農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第三条第一項又は第三十四条第一項の農林水産大臣の登録を受けている必要があるところ、御指摘の「ドローンによる散布」に当たっては、積載量の制約があることから、お尋ねの「ドローンに適した」農薬については、高濃度かつ少量で散布することができることが求められる。このため、お尋ねの「ドローンに適した除草剤登録の促進策」として、食料安定生産に資する新たな病害虫危機管理対策・体制の構築事業により、生産者団体等に対して、このような農薬の登録に必要な試験の実施を支援しているところである。
三の5について
御指摘の「舗装基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、農道の舗装に係る設計を含む基準については、定期的に改正の必要性の調査及び検討を行っているところ、直近では、令和六年三月に、農業機械の大型化や頻発する集中豪雨等の農業を取り巻く環境の変化を踏まえ、「土地改良事業計画設計基準・設計「農道」の運用について」(令和六年三月二十九日付け五農振第三千百七十六号農林水産省農村振興局長通知)及び「土地改良事業計画設計基準・設計「農道」の基準及び運用の解説、技術書について」(令和六年三月二十九日付け五農振第三千百七十四号農林水産省農村振興局整備部設計課長通知)を改定し、舗装の構造設計や路肩の幅員の取扱い等について見直しを行った。このため、現時点において、農道の舗装に係る基準は妥当なものと考えており、その見直しが必要であるとは考えていない。
三の6について
御指摘の「主な用途が農作業道である道路」であっても、市町村道の管理については、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第十六条第一項の規定に基づき、市町村が行うこととされていることから、農業者その他の地域住民が行う農道等の適切な保全管理等の共同活動を支援する多面的機能支払交付金の交付対象とすることは適切ではないと考えている。
また、お尋ねの「農道・町道」の「一体的」な「整備」については、地方公共団体において地方創生に資する事業の実施を図ることを目的とする新しい地方経済・生活環境創生交付金を活用することが可能である。
四について
お尋ねについては、令和六年度補正予算において畑作物産地生産体制確立・強化緊急対策事業等を措置し、老朽化した共同利用施設の建替えに取り組む事業者への支援のほか、製糖工場の人材確保、人材育成等に対する支援を行っているところであり、引き続き、必要な予算の確保に努めてまいりたい。
五について
お尋ねについては、令和七年度予算において沖縄黒糖販売力強化支援事業等を措置し、御指摘の「沖縄黒糖」の販売力の強化への取組を支援しており、引き続き、こうした支援を通じて、「沖縄黒糖の販売促進及び流通体制の強化」を推進してまいりたい。
六について
御指摘の「共済掛金」又は「保険料」については、畑作物共済又は農業経営収入保険に加入する農業者が支払うべきものであるが、天候等の自然的条件に左右される等の農業の特性から、被害率やこれに対応した共済掛金率又は保険料率が高くなることにより、農業者の負担能力を超えるおそれがあることに鑑み、その負担を軽減し加入を促進することにより農業経営の安定を図るため、農業者の負担能力、財政事情、他の制度とのバランス等の観点から総合的に判断の上、政府が、農業保険法(昭和二十二年法律第百八十五号)第十四条又は第十六条に定める割合に相当する金額を負担しており、政府としては、これ以上の負担を行うことは考えていない。また、農業者の加入を促進するため、政府は、災害その他の不慮の事故等によって損失を受ける場合に農業者が補塡を受ける損失の範囲やこれに対応した共済掛金又は保険料の金額をその経営状況に応じて選択することを可能とし、加えて、農業共済組合においては、農業者に対し、その加入に当たりこの旨を周知しているところである。