答弁本文情報
令和七年十一月二十一日受領答弁第六七号
内閣衆質二一九第六七号
令和七年十一月二十一日
内閣総理大臣 高市早苗
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員長友よしひろ君提出身近な地域で子どもを産める環境を守るための分娩施設維持策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員長友よしひろ君提出身近な地域で子どもを産める環境を守るための分娩施設維持策に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「分娩施設の廃止・休止が増加している地域や都道府県ごとの最新状況」について、例えば、厚生労働省が三年ごとに実施している「医療施設静態調査」により、@平成二十九年から令和二年までの間及びA同年から令和五年までの間のいずれの期間においても「分娩取扱施設」が減少している都道府県のうち、前者の期間よりも後者の期間において減少数が多い都道府県別に、両者の期間の減少数についてお示しすると、次のとおりである。
宮城県 @五施設 A六施設
東京都 @五施設 A十六施設
神奈川県 @一施設 A十四施設
新潟県 @三施設 A四施設
岐阜県 @四施設 A六施設
京都府 @二施設 A三施設
大阪府 @十施設 A十一施設
愛媛県 @二施設 A五施設
高知県 @一施設 A四施設
福岡県 @九施設 A二十施設
長崎県 @四施設 A五施設
熊本県 @四施設 A八施設
鹿児島県 @二施設 A四施設
また、お尋ねの「廃止に至った理由や背景」については、例えば、同省医政局長が参集を求めて開催する、小児医療及び周産期医療の提供体制に関する専門的知見を有する有識者等により構成される「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」の令和七年十月一日に開催の第一回の会議における、資料四「周産期医療の提供体制等について」において、「出生数の減少とともに、分娩取扱施設は減少傾向にある」としており、また、参考人が提出した資料五「高知県の周産期医療体制の現状について」において、「人口減(出産数減)と産婦人科医師の高齢化等により施設数が減少」したとされているとおりである。
二について
お尋ねの「政府はどのように評価しているか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「事例」に関しては、例えば、厚生労働省医政局長が参集を求めて開催する、地域における医療等に関する専門的知識を有する有識者等により構成される「第八次医療計画等に関する検討会」の令和四年七月二十七日に開催の第十一回の会議における、参考人が提出した参考資料四「第八次医療計画に向けて(周産期医療)」において、「集約化・重点化により分娩施設までのアクセスが悪化する地域に居住する妊産婦に対しては、アクセスを確保するための対策について検討」すると示されており、また、御指摘の「影響」に関しては、例えば、令和四年度厚生労働行政推進調査事業費補助金厚生労働科学特別研究事業による「周産期医療施設への妊産婦のアクセスの確保に向けた調査研究報告書」において、「分娩取扱施設の減少が進むにつれて、・・・緊急時に妊産婦が周産期母子医療センター等のハイリスクな妊娠分娩管理を行うことができる地域基幹医療施設に迅速に到達できる体制を作ることも重要となる」とされており、これらも踏まえ、例えば、都道府県に対し、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和五年三月三十一日付け医政地発〇三三一第十四号(令和五年六月二十九日最終改正)厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)により、「オープンシステム(地元で妊産婦の健康診断を担当した医師・助産師が、分娩時に連絡を受け、周産期母子医療センター等の連携病院に出向き、出産に対応する仕組み)・セミオープンシステム(地元の産科診療所等が妊産婦の健康診断を行い、周産期母子医療センター等の連携病院の医師・助産師が出産に対応する仕組み)の活用をすすめるなど、医療機関の役割を分担し、周産期医療と母子保健を地域全体で支えること」等と示しているほか、「妊婦に対する遠方の分娩取扱施設への交通費及び宿泊費支援事業実施要綱」(令和六年四月一日付けこ成母第九〇号・医政発〇四〇一第三号(令和七年四月四日最終改正)こども家庭庁成育局長及び厚生労働省医政局長連名通知別紙)に基づく「妊婦に対する遠方の分娩取扱施設への交通費及び宿泊費支援事業」により、「当該妊婦の住所地から最も近い分娩取扱施設までの移動に要した費用(往復分)について、・・・交通費の助成額」の助成等を行っているところである。
三について
お尋ねの「具体的支援策」については、例えば、「医療施設等経営強化緊急支援事業実施要綱」(令和七年四月一日付け医政発〇四〇一第五号厚生労働省医政局長通知別紙)に基づく「分娩取扱施設支援事業・小児医療施設支援事業」により、「特に分娩取扱施設が少ない地域等における分娩取扱機能の維持のための取組」の支援や、「地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)」により、「分娩取扱施設が少なく、当面、集約化が困難な地域に所在する施設に対して、分娩取扱を継続するための運営に係る費用」の支援を実施しており、また、地域の実情に応じて都道府県が実施する、御指摘の「医師・助産師」を含めた医療従事者の確保のための取組について、地域医療介護総合確保基金により支援を実施しているところであり、引き続き、このような支援を推進してまいりたい。
四について
お尋ねの趣旨が明らかではないが、「こども大綱」(令和五年十二月二十二日閣議決定)においては、御指摘の「少子化対策や地域子育て支援」に加え、御指摘の「分娩施設」に関し、「周産期医療の集約化・重点化を推進し、地域の周産期医療体制を確保する。周産期医療の関係者と成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者等との連携体制の構築を図る。あわせて、里帰り出産を行う妊産婦への支援や、医療と母子保健との連携を推進する」と盛り込まれているところであり、「こども施策を総合的に推進する」こととしている。
五について
御指摘の「分娩施設」に関する周産期医療については、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の三の規定に基づき厚生労働大臣が定める医療提供体制の確保に関する基本方針に即し、同法第三十条の四第一項の規定に基づき都道府県が定める医療計画(以下「医療計画」という。)の記載事項として位置付けられているところ、第八次医療計画(令和六年度から令和十一年度までを計画期間とする医療計画をいう。)の策定に当たっては、都道府県に対し、医療提供体制の確保に関する基本方針(平成十九年厚生労働省告示第七十号)の令和五年三月三十一日の改正により、「配慮すべき事項」として「周産期医療については、周産期医療の質の向上と安全性の確保のため、NICU(新生児集中治療室)・MFICU(母体・胎児集中治療室)や専門人材について、基幹となる医療施設への集約化・重点化を進めることが必要である。その際、周産期医療に精通した医師や助産師等の地域の医療従事者を育成し、活用を図るとともに、ハイリスク分娩を取り扱う周産期母子医療センター等に負担を集中させないよう、医療機関間で役割を分担し、周産期医療及び母子保健を地域全体で支えることが重要である」等と示すとともに、二についてで述べた「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」により、「医療資源の集約化・重点化により分娩施設までのアクセスが悪化した地域に居住する妊産婦に対して、地域の実情に応じて対策を検討すること」等を促しているところであり、さらに、第九次医療計画(令和十二年度から令和十七年度を計画期間とする医療計画をいう。)の策定に向けては、令和七年七月四日に開催された第百十六回社会保障審議会医療部会における、資料一「地域医療構想、医師偏在対策等の検討体制について」において、「小児・周産期医療については、少子化にあっても、地域でこどもを安心して生み育てることができる体制の確保が必要。周産期医療においてハイリスク症例の集約化を進めているところ、出生数が減少し、分娩取扱施設等が減少する中で、地域の小児・周産期医療の体制を確保・維持するため、一般的な分娩や小児医療についても、地域によって持続可能な連携体制の構築や集約化について検討が必要」とされたことを踏まえ、一についてで述べた「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を設置し、当該「検討」を開始しているところである。
加えて、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定)において、「妊娠・出産・産後の経済的負担の軽減のため、二千二十六年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進める」とされたことを踏まえ、同部会において議論を行っているところであり、当該議論を踏まえながら、適切に検討をしてまいりたい。

