答弁本文情報
令和七年十一月二十一日受領答弁第六八号
内閣衆質二一九第六八号
令和七年十一月二十一日
内閣総理大臣 高市早苗
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員長友よしひろ君提出歯科健診の義務化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員長友よしひろ君提出歯科健診の義務化に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「現行制度における歯科健診の対象、実施主体」について、二で御指摘の「乳幼児期」、「学齢期」、「成人期」及び「後期高齢期」の別に、その@「対象」、A「実施主体」及びB「現行制度」をお示しすると、次のとおりである。
「乳幼児期」 @母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第十二条第一項第一号に掲げる満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児及び同項第二号に掲げる満三歳を超え満四歳に達しない幼児 A市町村(特別区を含む。以下同じ。) B同項の規定に基づく健康診査
「学齢期」 @学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第二条第二項に規定する児童生徒等(ただし、通信による教育を受ける学生を除く。) A同条第一項に規定する学校 B同法第十三条の規定に基づく健康診断
「成人期」 @市町村に住所を有する二十歳、三十歳、四十歳、五十歳、六十歳及び七十歳の者 A当該市町村 B健康増進法(平成十四年法律第百三号)第十九条の二の規定に基づく健康増進法施行規則(平成十五年厚生労働省令第八十六号)第四条の二第一号に掲げる歯周疾患検診(以下「歯周疾患検診」という。)
「後期高齢期」 @後期高齢者医療制度の被保険者のうち七十五歳以上の者 A高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第四十八条に規定する後期高齢者医療広域連合(以下「後期高齢者医療広域連合」という。) B同法第百二十五条第一項の規定に基づく健康診査
また、お尋ねの「現行制度」毎の「受診率」は把握していないが、例えば、厚生労働省が実施した「令和五年国民健康・栄養調査」における「歯科検診の受診状況−この一年間における歯科検診の受診の状況、年齢階級別、人数、割合−総数・男性・女性、二十歳以上」によると、「歯科検診」を「受けた」とする割合は、「総数」で五十八・八パーセント、「二十〜二十九歳」は四十四・〇パーセント、「三十〜三十九歳」は五十三・七パーセント、「四十〜四十九歳」は五十六・六パーセント、「五十〜五十九歳」は五十五・六パーセント、「六十〜六十九歳」は六十五・九パーセント、「七十歳以上」は六十二・九パーセントとなっており、特に就労世代において受診率が低いことがお尋ねの「課題」であると考えている。したがって、お尋ねのように「成人」全体や「高齢者層における受診率」が「低迷」しているとは考えていないが、「成人」のうち特に就労世代における「受診率の低迷要因」については、当該世代においては、就労等のために歯科健診を受診するための時間の確保が難しいことや、歯科健診の必要性が十分に認識されていないこと等が挙げられると考えており、お尋ねの「改善策」としては、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(令和五年厚生労働省告示第二百八十九号。以下「基本的事項」という。)において、「計画開始後十年(令和十五年度)を目途に」「過去一年間に歯科健診を受診した者の割合」を九十五パーセントにすることを目標に、必要な施策を行うこととしているところ、例えば、令和六年には、四十歳、五十歳、六十歳及び七十歳を対象としていた歯周疾患検診について、二十歳及び三十歳を追加したところであり、また、同省が令和七年度に実施している「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(モデル歯科健診事業)」(以下「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業」という。)により、「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(モデル歯科健診事業)に係る調査研究等一式 仕様書」に基づき、「特に就労世代の歯科口腔保健の推進に向け、効果的な歯科健診・受診勧奨の方法等について、自治体や職域等において歯科健診等を実施し、実施手法等の必要な検証等」を行っており、さらに、同省が同年度に実施している「歯周病等スクリーニングツール開発支援事業(唾液等の検体を用いるもの)」により、「「歯周病等スクリーニングツール開発支援事業(唾液等の検体を用いるもの)」 仕様書」に基づき、「自治体や職域等において、簡易に歯周病等の歯科疾患のリスク評価が可能であり、歯科医療機関への受診につなげることができる歯周病等スクリーニングツール・・・の研究・開発を支援する」こと等を行っているところである。
二及び七について
御指摘の「歯科健診の制度的義務化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定)における「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)」(以下「いわゆる国民皆歯科健診」という。)と解すれば、これに係るお尋ねの「政策的必要性」は「認識」しており、一についてで述べたとおり、基本的事項において、「計画開始後十年(令和十五年度)を目途に」「過去一年間に歯科健診を受診した者の割合」を九十五パーセントにすることを目標に、必要な施策を実施することとしているところ、お尋ねの「制度設計」及び「法制度整備」については、当該施策の実施状況等も踏まえながら、必要に応じ検討したいと考えている。
三について
お尋ねの「制度的枠組みの整備方針」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「職域における健康診断との一体的実施」や「地域保健事業との連携」に関しては、全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業により、「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(モデル歯科健診事業)に係る調査研究等一式 仕様書」に基づき、「事業者が実施する事業者健診」と「歯科健診・簡易スクリーニングの同時実施」等の検証を行っており、その結果を踏まえ、御指摘の「歯科健診の普及促進」に向けて、今後の対応について検討することとしている。また、御指摘の「歯科健診」に関しては、令和七年一月十七日の労働政策審議会安全衛生分科会において、「今後の労働安全衛生対策について(報告)」の建議が行われ、同建議において、「歯科に関する項目を法定健診項目に追加することに関しては、業務起因性又は業務増悪性、就業上の措置等のエビデンスが乏しいことを踏まえると、困難である」とされたことを踏まえ、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条の規定に基づく健康診断の項目に追加することは現時点で考えていないところ、全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業による「事業者が実施する事業者健診」と「歯科健診・簡易スクリーニングの同時実施」等は、事業者が、同条の規定に基づく健康診断とは別に、保険者の協力を得て、任意で「歯科健診・簡易スクリーニング」を同時期に実施するものであり、御指摘の同法との「整合性」に問題があるとは考えていない。
四について
御指摘の「歯科健診の義務化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる国民皆歯科健診と解すれば、これによるお尋ねの「高齢者におけるオーラルフレイルの進行防止、誤嚥性肺炎の予防、介護予防の観点から、」「果たす役割」等について、個々にその「科学的根拠に基づ」く評価等は行っていないが、これによる歯科健診の普及促進により、口腔の健康が保持されることについては、例えば、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会の下に設置された歯科口腔保健の推進に関する専門委員会のワーキンググループの平成二十三年十二月二十七日に開催の第一回の会議の資料一「第三十一回厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会資料(抜粋)および第二回次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会資料(抜粋)」において、「高齢期においても歯の健康を保ち、歯の喪失による口腔機能の低下リスクを軽減する取り組みは、歯科口腔保健のみならず、円滑な経口摂取や良好な発話の維持等とも大きく関わり、国民の「生活の質の向上」ならびに「健康寿命の延伸」にも大きく寄与するものと考えられる」とされており、これも踏まえ、基本的事項において、「生涯にわたる歯・口腔の健康が社会生活の質の向上に寄与することや歯・口腔の健康と全身の健康との関連性についても指摘されていることを踏まえると、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持・・・が不可欠」としているとおりである。
五について
御指摘の「歯科健診の義務化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる国民皆歯科健診と解すれば、これによるお尋ねの「医療費」「の削減効果」の「費用対効果分析」に関しては、厚生労働省において、令和六年度に「就労世代の歯科健康診査等推進事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)」を実施し、「「就労世代の歯科健康診査等推進事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)に係る調査研究等一式」 仕様書」に基づき、「歯科口腔保健の推進に向け、レセプトデータ等を活用し、歯科健診の効果」の「調査・検証」を行い、引き続き令和七年度に「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)」を実施し、「「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)に係る調査研究等一式」 仕様書」に基づき、「口腔と全身の健康の関係、医療費適正化効果等」の「調査・検証」を行っているところであり、現時点でお尋ねの「分析結果又は試算」を示す段階にない。お尋ねの「介護費の削減効果、健康寿命延伸効果」の「分析」や「試算」は行っていない。
六について
御指摘の「歯科健診の義務化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる国民皆歯科健診と解すれば、お尋ねの「地域歯科医療提供体制の確保」については、厚生労働省において、「歯科医療提供体制構築推進・支援事業実施要綱」(令和四年九月二十日付け医政発〇九二〇第九号(令和七年三月三十一日最終改正)厚生労働省医政局長通知別紙)に定める「歯科医療提供体制構築推進・支援事業」により、「各地域の状況に応じた歯科医療施策が実効的に進められるよう」、都道府県による「現在及び将来の課題を抽出・検討し、推進方策及び推進に資する事業等の検討」を行う取組及びその検討等に基づく「歯科医療提供体制の構築に資する」取組に加え、都道府県、市町村、大学、法人等による「歯科医療提供体制の構築促進のため、各地域の課題解決」に向けた取組に係る費用を支援している。また、お尋ねの「歯科人材」に関しては、同省において、同省医政局長が参集を求めて開催している、歯科医療の各分野に関する専門的知見を有する有識者等により構成される「歯科医師の適切な配置等に関するワーキンググループ」等において、御指摘のように「歯科人材」が「偏在」しているか否かも含め、その必要数や適切な配置に関する具体の分析等に関する議論を行っているところである。その検討結果等も踏まえ、「地域歯科医療提供体制の確保」に向けた取組を進めることとしている。さらに、御指摘の「自治体の財政負担軽減策」については、例えば、「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」(平成二十年十二月十九日付け厚生労働省発健第一二一九〇〇二号(令和七年九月一日最終改正)厚生労働事務次官通知別添)に定める「健康増進事業」により、市町村が行う歯周疾患検診を実施するための費用の一部を補助するとともに、「令和七年度後期高齢者医療制度事業費補助金交付要綱」(令和七年三月三十一日付け厚生労働省発保〇三三一第十三号厚生労働省事務次官通知別添)に定める「健康診査事業」により、後期高齢者医療広域連合が行う「歯科健康診査」を含めその費用の一部を補助しているほか、「八〇二〇運動・口腔保健推進事業実施要綱」(平成二十七年四月十日付け医政発〇四一〇第二十三号(令和七年三月三十一日最終改正)厚生労働省医政局長通知別紙)に定める「都道府県等口腔保健推進事業」により、都道府県及び市町村が独自に行う歯科健診の費用の一部に対して補助を行っている。
八について
お尋ねの「歯科健診の受診促進に向け、オンライン予約システムの導入」をすることの検討は行っていない。お尋ねの「受診費用補助」については、六についてでお答えした「自治体の財政負担軽減策」を通じて行っているところである。お尋ねの「広報啓発」については、厚生労働省が令和七年度に実施している「歯科口腔保健支援事業」において、「歯科口腔保健支援事業 仕様書」に基づき、国民に対する歯科口腔保健の推進に関する知識の普及啓発等を行っている。お尋ねの「マイナンバーカードとの連携等、ICTを活用した受診環境整備」については、今後、必要に応じて検討を行うこととしている。

