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昭和二十七年十二月二十二日提出
質問第一八号

 駐留軍の軍事施設に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十七年十二月二十二日

提出者  伊東岩男

          衆議院議長 大野(注)睦 殿




駐留軍の軍事施設に関する質問主意書


 宮崎県南那珂郡都井村大字大納岬地内に米駐留軍の通信施設の目的をもつて着着準備が進められていることが伝えられ、すでに去る十二月一日より数日間にわたり現地の調査が行われた。
 それ以来地元民としては、ビツクリして種種対策を討議し、すなわち地元都井村では村民大会を開いてその可否をはかつたところ、全村民一致反対の衆議は決した。続いて同村青年団は総動員で反対運動に奮起し、更に関係附近の日南市及び南那珂郡十一箇町村の一致せる反対決議がなされ、今や関係筋に対して猛然として反対の運動が開始された。
反対の理由としては
イ 都井岬を中心として軍事施設の結果がもたらす損失は、牧場に、漁業に、山林に、これを通算して損失年額は数千万円に達し、地元村民の経済は直ちに破綻を招き、生活権が根底より破壊せられる。
ロ すなわち都井村は、半数は漁業に、半数は農林業に依存し、生活が維持されているのであるが、軍事施設によつてこの沿岸漁業が妨げられることは必至である。特に日本一の飛魚の産地としてのこの沿岸地点に雲集する夏期の集団産卵を妨げ、又は年間三、四千万円に達する鰤漁獲を皆無ならしめるものと信ずる。更に野生馬の滅亡による損害と、よつて起る共有杉林資源の増進を妨げることは明らかである。
ハ 都井岬は、太平洋に突出せる絶景の地であり、特別指定の自然蘇鉄林があり、特に全国にその類を見ざる野生馬は二百五十年来の伝統的放牧が行われ、しかも軍事施設場所としての候補地は、馬の生命とする牧草地帯であり、この牧草地が接収されることにより、放牧の野生馬は全滅するの破目に陥る。
ニ 都井岬は、日南海岸国定公園の中軸である。すなわち平和のシンボルとして、有名な燈台が自然と人工美に相和し、群がり遊ぶ野生馬の平和の表徴は南国美豊かな絶景の地とよく調和され、今では観光客は、僅かに十数万人に過ぎざるも、将来は世界的な天然公園として誇り得るのであるが、この軍事施設により公園価値が失われるのみならず、現在でも観光客による相当の収入が激減して、村民の生活は苦しくなる。
ホ 都井岬には、平和施設として、海上保安庁の無電信号所が設置せられているが、同地に軍事的な通信施設をすることは重複であり、矛盾である。
 以上述べた理由により、地元としては絶対反対であるが、しかし未だ軍事基地として施設することが、決定されたという訳ではない。又、決定したとしても、これには絶対反対する固い決意であるので、民意と実情をよく知る私は、一応次の諸点について質問する。速やかに答弁を願いたい。

一 今日までの調査その他の経過については、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法により推進されたものと思考する。すなわち米駐留軍は、福岡調達庁を通じて地元の了解に基き、はじめて現地調査をなすべきものと解するが、どうか。
二 軍事施設の土地の使用は、日米間の行政協定により発動するものと思料するが、同地を調査した米軍機関から、その後すでにこの通信施設につき、政府は交渉を受けたか。交渉があつた場合、政府はこれを許容し、協定するのか。すなわち政府の方針はどうか。
三 地元が相当なる理由の下に絶対反対しても土地収用法を適用するものなりや、地元とよく協定し、円満解決することが民主主義だと思うが、どうか。
四 土地収用法を適用するときは、収用土地の価格算定は一方的に決定すべきものでないと信ずる。この土地接収による損害は莫大であることを考慮すべきであると思うが、どうか。
五 すなわち漁業の損害、野生馬に関連する損害、山林の損害、観光客減少による損害賠償の算定法は、いかに処置されるものなりや。
六 前項については、未決定の故をもつて答弁不可能というならば、すでにこの種の例は全国各地に散見するところであるから、他の事実に微して例示して貰いたい。
七 都井岬が通信施設の候補地として調査された場所は、地元の猛烈なる反対があるのであるが、その必要な地点は、その調査場所に限つたものではあるまい。もし必要上やむを得ぬ場合は、その附近高台地帯適当の場所を選び、変更方の協定はできると思うが、どうか。
八 安全保障条約の巻頭には、平和と安全を増進すること以外に用いらるべき軍備を持つことは常に避けつつとうたつてあるが、地元がかくのごとく反対するゆえんのものは、村民の平和と安全を阻害し、生活を脅かされるからである。平和を基調とする民主国家間の条約によつてとりきめられた基本精神は、日本国民の一部の生活と財産がかくも軽視されてまで甘受せねばならぬのかどうか。
九 もし指定地点が国土保全上、ぜひ基地の設定が必要なりとすれば、地元の世論を勘案し、地点を変更して地元の損害の軽減を計り、道路交通の設備やその他の公共施設等を行つて激化せる地元の会得の下に、よく協定される方途を講ぜられることが緊要だと思うが、この点はどうか。

 右質問する。





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