衆議院

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昭和三十三年十二月三日提出
質問第五号

 東海大学における原子炉の設置に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和三十三年十二月三日

提出者  松(注)重義

          衆議院議長 星島二(注) 殿




東海大学における原子炉の設置に関する質問主意書


 東海大学における原子炉の設置計画は、わが国における民間原子炉の、また教育用原子炉の最初のものであつた。これが許可されるか否かの問題は、その安全性の認定とともにわが国の原子力研究の将来に対して、重要なる意義を持つものである。
 かつて電気がわが国に導入されたとき、電気に対する大衆の反対運動はまことにし烈であつた。そうしてジヤーナリズムはまたこれを支援した。当時、電気試験所に一電気技師として勤めており、後、東京大学の工学部長となり、名古屋大学総長になつた渋沢元治先生は当時の電気事業に対する国民的な妨害と反対運動についてしみじみ述懐していた。
 鉄道がわが国にしかれようとしたとき、田舎の都市においては町をあげて鉄道の敷設に反対をした。これがために、ほとんど地方の古い都市においては、停車場は都心を離れたはるか田舎にあつて、今にしてすこぶる不便を感じている姿をみるのである。
 北里柴三郎先生が北里伝染病研究所を設立せんとしたとき、伝染病を恐れた人々は北里先生の家に反対運動に押しかけ、投石して北里先生の事業の阻止に努力した。しかし伝染病研究所は、今日わが医学界が世界に誇る業績を残してなんらの危険をも与えていないことはいうまでもない。
 原子力の研究に関する最初の問題を提起した東海大学の試みは、同じような意味において今歴史前進の苦もんの中にある。東海大学が苦しんでいるばかりではない。日本の歴史が苦もんしていると思う。このような意味において原子力の平和的研究のごときは、なお幾多の苦もんの障壁を乗り越えなければならないと考えるが、これに対して原子力委員会は今後における原子力行政の推進に対して、具体的にいかなる政策を持つてのぞもうとしているかを伺いたい。
 これらの大原則の上に立つて、今回の東海大学の原子炉を審査した原子炉安全審査部会なるものの答申、内容について科学的な立場からこれを究明し、後世にその記録を残すことこそ原子力研究の将来の歴史の扉を開くものであると信ずる。従つて東海大学より請願せられたる次の諸点について、具体的なしかも数字をもつて、量的な科学性ある委員会の答弁を要求するものである。

一 原子力委員会安全審査部会は、東海大学が設置認可申請をしたノースアメリカン株式会社製L七七型小型教育用原子炉の審査に際し、次の三つの意見を具して、安全であるとはいえないと原子力委員会に答申したとのことである。
 (一) 東海大学の原子炉は民家より二十五メートル、校舎より七メートルの場所に設置されることになつており、下水が開溝であることが望ましくない。
 (二) 運転主任技術者としての該当者はいるから法律的には満足であるが、主任教授が空白であることと運転補助員の資格がはつきりしない。
 (三) 原子炉の安全性についての技術上の問題はない。
二 およそ原子炉の設置はすべての原子炉について慎重であるべきはもちろんであるが、あくまでも数字的量的な科学的根拠によつて、これが検討をなすべきである。特に本学の原子炉は、その設置認可申請にもとずくわが国最初の原子炉であり、反対運動などの政治的動きによつて科学的な立地条件をも含めた安全性に関する認定が動かされてはならないのである。このことは今後のわが国における原子力平和利用の研究に対して影響するところすこぶる大であるからである。
三 原子力委員会は原子炉設置に関する諸条件に対して、その具体的な安全性に関する設置認可の基準を決めておられることと思うが、教育用、研究用、発電用等の大中小各種の出力と目的に対してのそれぞれの立地、施設、技術陣等の諸条件をいかに充足すれば設置可能であるかを知りたいと思うので、具体的且つ、科学的にこの基準を明示されたい。
四 本学は、原子炉によつて生産される放射性同位元素の廃棄物処理の基準も通常の放射性同位元素利用機関(病院、研究所等を含む。)において使用される放射性同位元素の廃棄物処理基準とは公衆衛生上同一に取り扱われるべきであり、もしこの廃棄物処理が法律的規準内において行われる限り、下水が開溝であるか否かは科学的見地から問題の生ずる余地がないと考えているが、これに関して下水が開溝であるゆえをもつて安全であるとは認められないとの意見に対する科学的な根拠を量的に数字をもつて説明されたい。
  なお、現行法は原子炉設置認可に対しては適用しないのか、それとも他の法律を適用するのか。
五 本学は、安全審査部会が民家から二十五メートル、校舎から七メートルの地下にこの原子炉を置き、完全な防ぎよ施設内にこれを収容しても、なお且つ、安全であるとは認められないとの結論を出した科学的な、数字的根拠を説明されたい。
  わが国において現在検討中のコールダーホール型原子炉は昨年イギリスにおいて発生した事故によると、半径三十キロメートル以内は放射能により汚染され、その範囲からの牛乳の飲用が禁止された。この原子炉が日本に置かれる場合は、当然十分の防ぎよ施設が準備されると考えられるが、L七七型原子炉に対して完全な防ぎよ施設をほどこしても、なお且つ、校舎から七メートル、民家から二十五メートルでは危険であるとの結論であるとするならば、コールダーホール型では日本においては全く設置不可能と考えられるが、政府の見解を伺いたい。
  民家から二十五メートル、校舎から七メートルという距離が問題だとされているが、本学と、してはこの距離がゼロメートルでも普通人に対する被害がない施設を行うのに、なにゆえこの距離が問題になるのか、具体的な数量的な根拠を示されたい。

 右質問する。



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