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昭和四十六年二月十八日提出
質問第二号

 視力障害者の更生と福祉に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十六年二月十八日

提出者  松本善明

          衆議院議長 (注)田 中 殿




視力障害者の更生と福祉に関する質問主意書


 私は昨年十月、内田厚生大臣が国立東京視力障害センターの視察を行なつた際、これに同行し、視力障害者に対する国の施策の貧困さを痛感した。
 わが国の身体障害者は、約百十五万人いるとされ、身体障害者福祉法で「国及び地方公共団体は、身体障害者に対する更生の援助と更生のために必要な保護の実施に努めなければならない」ことになつているにもかかわらず、そのための施策はきわめて不十分である。
 わが国の身体障害者に対する更生と福祉の法制は、形のうえでは一応整備されているように見えるが、その内容については、例えば身体障害者の雇用を促進するために雇用主に雇用を義務づけた身体障害者雇用促進法でさえ、その法定雇用率はきわめて低く、しかも強制力をもつておらず、また多くの職種について雇用義務を免除するなど実効の乏しいものになつている。
 とりわけ、身体障害者の二十二・三パーセントをしめる視力障害者については、職業訓練、雇用促進などの労働行政の対象からさえとりのこされており、国の施策の抜本的改善が切望される。
 身体障害者の福祉に関する法制上の諸問題については、更に民主的に検討され改善されて行くべきであると考えるが、今日の法制下でさえ、政令等にゆだねられている諸問題や予算措置について、全面的に再検討し、抜本的に改善すべき諸問題が山積している。
 ここに国立東京視力障害センター入所者のかかえている諸問題を中心に、視力障害者に関するいくつかの問題について、政府の考え方をただし、これに対する国の施策の抜本的改善を求めるため以下質問するので、身体障害者福祉に関する立法の精神にのつとり身体障害者の立場に立つて明確に答弁されたい。

一 身体障害者の雇用については、身体障害者雇用促進法によつて、法定雇用率をもうけ、国と地方をはじめすべての雇用主に対し、その実行を義務づけているにもかかわらず、現実には労働省みずから「法定雇用率を達成していない事業所が相当数ある」(昭四二・告示五号)と指摘しているように、全く守られていない。
 1 身体障害者雇用促進法に罰則規定をもうけるなどなんらかの強制措置を講ずる必要があると考えるがどうか。
 2 昭和四十二年労働省告示第五号では「……これらの人達を雇用するために必要な作業場、機械設備の改善等についての援助措置や、事業所に対する税制上の援助措置についても検討することとする。」とあるが、その後どのように検討されたか具体的に示されたい。
 3 身体障害者雇用促進法の目的と精神にてらせば、適用除外をもうけないことを原則にしなければならないにもかかわらず、法の中にも適用除外職種を定め、政令でも多くの職種について適用除外をもうけて雇用の道をせばめている。
   身体障害者雇用促進法施行令の別表にある職種を再検討し、適用除外職種をなくして行く考えはないか。
 4 政府は昭和三十五年労働省告示第四十二号で重度身体障害者の特定職種に関する法定雇用率適用除外業務を「病院又は診療所において、医師の指示のもとに、局部又は全身の状態を識別し、及びこれに対する施術の反応を観察判断しながら行なうことを必要とする業務」と定め、事実上病院、診療所等のはり、きゅう、マッサージ師から視力障害者をしめ出している。これは法の目的と精神に明らかに反するものであり撤回すべきであると考えるがどうか。
 5 視力障害者のほとんどは、成人してからの事故、病気が原因で失明した者であり、失明以前に一定の社会経験、職業経験をもつていると考えられる。
   この人達が生活動作能力を訓練して原職に復帰することは、全く未経験の職業につく困難さにくらべて、きわめて合理的であり、かつ失明者の自立心を強めるうえでも有効であることは多言を要しない。
   国が行なう社会復帰訓練の施策は、視力障害者の原職復帰をめざした職能開発訓練を施策のたてまえとすべきであると考えるがどうか。
 6 法の精神にてらせば、国と地方公共団体は身体障害者を進んで採用すべきであり、公務員が不幸にして身体障害者となつた場合には、その身分を引きつづいて保障すべきことはいうまでもない。にもかかわらず現実には休職そして退職という事態に追いこまれている。
   政府は、国と地方の職員が身体障害者となつた場合、その身分を保障するための何等かの施策を講ずる考えはないか。
二 国立東京視力障害センターで社会復帰訓練をうけている視力障害者について、訓練中に生起する諸問題は、数えきれないほどある。
  そのすべてをここにとりあげる余裕がないので、特に重要でさしせまつた諸問題についてただしたい。
 1 労働省の職業訓練所では訓練手当が日額七百五十円支給されているが、センターにおける社会復帰のための訓練については、食費国庫負担該当者と生活保護受給者だけが月額最高千円支給されるだけであり、自費者については全く支給されない。
   昨年十月の衆議院社会労働委員会で内田厚生大臣は、わが党の寺前巖議員の質問に答えて、身体障害者、視力障害者等については「労働省ベースの職業訓練だけではいかない面もあり、厚生省が身体上の条件をできるだけ満たすことをしながら同時に職業訓練にも及ぶということをしなければならない。労働省はもともとは厚生省の分身だ。労働省の分野でまかせておることで不十分な点があれば、労働省に対しても協力するし、厚生省でもめんどうを見るようにしたい。」という趣旨の答弁を行なつているが、更生訓練費を大幅に増額し、自費入所者も含めて全員に支給されるよう制度を再検討すべきであると考えるがどうか。
 2 センターに入所している者のほとんどは中途失明者であり、無収入である。ところが生活保護あるいは準保護の認定をうけなければ食費免除されない。
   これを全額国庫負担にする考えはないか。
 3 現在盲学校では教科書が無償で支給されているが、センター入所者は訓練費として予算計上されているにもかかわらず、光熱水費など庁費についやされ、教科書にはまわらないのが現状である。
   昨年十月の衆議院社会労働委員会で伊部社会局長は、「今後所得に応じて貸与をするといつたようなことを研究したい」と答弁しているが、これはどのようになつたのか。
   またセンターで使う教科書はいつさい入所者に負担をかけないようにすべきであると考えるがどうか。
 4 視力障害者は歩行、体育、その他の行事など、所内の全生活を通じて社会復帰のための訓練を行なつており、これらの訓練の危険防止のためには十分な配慮が必要である。
   ところがセンターでは人手不足ということで歩行訓練がほとんど行なわれず、あるいは入所者のうちの弱視者の指導にたよるのが現状であり、危険防止という点からも全く不十分である。
   事故を十分防止しつつ訓練をすすめるための必要な人員を増員すべきであると考えるがどうか。
 5 訓練中の事故の補償については、現状はすべて入所者の負担によつて行なわれている。
   労働省の職業訓練所においては、訓練中の事故に対する補償が見舞金などのかたちで予算計上されているが、身体障害者に対しても、国の責任で補償を行なうのが法の目的と精神にかなうものと考えるがどうか。
 6 「身体障害者更生援護施設の設備及び運営基準について」(厚生省事務次官通知)によれば、失明者更生施設の職員については、所長に眼科の診療に関して相当な学識経験を有する医師をあてるか、所長が医師でない場合には眼科の診療について相当の学識経験を有する医師をおくことが義務づけられている。
   ところが、センターは国立の施設として、この種施設の模範となるべきものであるにもかかわらず、常勤の医師をおいていない。
   これは法の趣旨に反すると考えるが、政府はどのように改善する考えであるか。
 7 センターは年三回の休暇中は、入所者の寮への居残りを許さず、その結果、帰省先のない者や家庭の事情で家へ帰ることができない者が友人宅をとまり歩くなど、無保護の状態におかれることになる。
   政府は、必要な職員の増員を図り、待遇改善をするなど休暇中の職員態勢を整えることによつて、休暇中も事情ある者の寮への残留が可能な措置をとるべきであると考えるがどうか。
 8 盲学校においては学級の定員が定められているが、センターは入所者のクラス定員が定められておらず、他方入所希望者が多いという事情もあつて、一クラスに三十人以上もつめこんで実技などの授業が行なわれている。これでは個別的な指導はのぞむことはできない。
   現在の施設を拡充し、入所希望者をすべて入所できるようにするとともに、一クラスの定員を授業が円滑に、個別的に行なうことができるようにすべきであると考えるがどうか。
 9 政府は「行政改革」の一環ということで公務員の五パーセント定員削減の方針をとつている。この方針自体重大な問題があるが、これを社会福祉の施設職員にも適用させることは、明らかに社会福祉関係法の趣旨に反する。
   センターのような社会福祉施設の職員については、公務員の五パーセント定員削減の対象からはずすべきであると考えるがどうか。
 10 内田厚生大臣は昨年十月センター視察の際、施設の不備な箇所を具体的に承知し、入所者の陳情をうけられた。
    センターについては、体育館の床の破損と雨もりをはじめ、臭気のための教室閉鎖、静養室の他目的への転用による不備、娯楽室の不備、暗い照明による弱視者無視などさまざまな不備があるにもかかわらず、今日にいたるも改善の気配は全く見られない。
    政府はセンターの不備について、どのような実体を承知し、それを改善するどのよな見通しをもつているのか具体的に明らかにされたい。
三 身体障害者の社会復帰に際しては、世帯更生資金が貸し付けられることになつているが、実情は最高額が四十万円で、労働省の雇用促進事業団の同種の貸付金百万円にくらべて極端に低くしかも、きびしい条件がつけられており希望者のほとんどは借りることができない。
  この最高額を増額し、希望者はすべて借りられるよう条件緩和することが身体障害者の自立意欲を促し、法の目的と精神に合致するものと考えるがどうか。
四 身体障害者の鉄道運賃の割引については、現在国鉄で行なわれているが、さまざまな不合理があり、多くの改善を要する。
 1 割引の手続きについては、その都度福祉事務所まで用紙を受取りに行かなければならないことになつているが、これを国鉄の窓口で身体障害者手帳を提示するだけで割引乗車券が購入できるように制度を改善すべきではないか。
 2 現在旅行距離百キロメートルをこえるものに限つて割引制度をもうけているが、身体障害者が遠距離を利用するのは、特別の事情ある場合に限られており、一般の人にくらべればその機会はごく少ないものである。距離制限をもうけることは、せつかくの割引制度も、その恩恵はきわめて限られたものになつてしまうので、距離制限をなくし、すべて割引にするよう制度を改善すべきであると考えるがどうか。
 3 今日のように国鉄に特急が数多くもうけられているもとでは、遠距離旅行の場合、特急を利用する機会は非常に多く、また身体障害者は、その身体的条件からみても、外出に要する時間をできるだけ少なくする配慮が必要である。
   特急にも割引制度をもうけるべきであると考えるがどうか。
 4 交通機関がきわめて複雑多種になつている今日、運賃割引制度は国鉄だけでなく、私鉄、公営交通機関、航空機など、すべての交通機関にもうけるべきであると考えるがどうか。

 右質問する。





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