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昭和四十七年五月十三日提出
質問第一一号

 沖繩協定発効後の沖繩米軍基地に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十七年五月十三日

提出者  松本善明

          衆議院議長 (注)田 中 殿




沖繩協定発効後の沖繩米軍基地に関する質問主意書


 沖繩協定発効後の沖繩駐留米軍の存在をめぐる国民の疑惑と批判にたいして、政府は従来、「復帰後の沖繩に駐留する米軍は、復帰前の米軍とは性格を異にするものであることは、言うをまたないところ」、「沖繩の米軍の性格が沖繩の復帰とともに変わる」(佐藤首相、昨年十月二十一日の衆院本会議、共産党不破哲三議員にたいして)とくりかえし釈明してきた。この政府の言明が、核持ち込みと核攻撃任務、自由出撃、謀略活動などを念頭においたものであつたことは明らかである。しかし、沖繩協定の発効がいよいよ現実の問題となつた今日になつても、果たして沖繩に駐留する米軍が実際にその性格をこれまでと異にしたかどうかは、きわめて疑わしい。この問題は、沖繩の施政権返還後の日米安保条約の運用にもかかわる重大な点なので、以下、若干の疑問について質問する。

一 いわゆる「核ぬき」について
  政府は、十五日にロジャーズ米国務長官から送られる書簡で、「復帰」後の沖繩にはもはや核は存在しないと説明しようとしている。この問題で、国民が求めているものは、ことばの上だけの「核ぬき」ではなく、日本共産党国会議員団調査団が動かしがたい証拠によつて明らかにしたような沖繩における米軍の核部隊の存在について、問題の核部隊がすでに撤退したとか少なくともその核機能を完全に取り去つたなどという具体的な「核ぬき」の措置を、明確に説明することである。いうまでもなく、わが党が米軍資料にもとづき、「復帰」後存続する諸部隊が核部隊であることをそれぞれ詳細な根拠を示して明らかにしているのに、政府が、それらの核部隊の「復帰」後の具体的な態様を国民の目からかくし、明確な説明を拒んだままでいるならば、結局は、政府の方針は「核かくし」にあるとの疑念を国民のあいだにひろめないではおかないであろう。したがつて、政府は「復帰」後の沖繩の「核ぬき」を国民に約束する以上、つぎの質問に具体的に答える当然の責任を負つている。
 1 持ち込まれた核兵器の問題 共産党の現地調査の結果、三月七日の衆院予算委員会での不破哲三議員の質問で指摘したとおり、嘉手納弾薬庫を管理している米空軍第四〇〇弾薬整備部隊の兵器部(ウェポンズ・ブランチ)が、四種類の戦術核爆弾「B二八」「B四三」「B五七」「B六一」を実際に管理していることが証明された。米軍内部資料によれば、“プラントA”“プラントB”と呼ばれる二つのセクションを持つこの部隊の兵器部は、核兵器の貯蔵・整備に専任する機構であることも明白である。これらの点について、佐藤首相は不破議員にたいし、「やはり米軍に十分連絡をとつてみたい」と答弁していた。核兵器の存在が明確に証明され、その核兵器を専門に扱つている機構の存在までも明るみに出されている以上、それらがともに完全に撤去されたか否かを、明確に示されたい。
 2 核攻撃訓練の問題 共産党は、嘉手納基地所属の米空軍第一八戦術戦闘航空団の戦闘爆撃機が、伊江島の射爆場で核模擬爆弾BDU8B、BDU12Bの投下訓練をおこなつている物的証拠を明るみに出すとともに、前記の第四〇〇弾薬整備部隊がBDU8Bをはじめ各種の積み込み用ならびに投下用の核模擬爆弾の管理・整備にあたつていることを示した。さらに、沖繩のキャンプ・へーグの第三海兵師団第一二海兵連隊が本年四月ないし六月の期間に、タイ軍将校に野砲による核砲撃訓練の指導をおこなう計画であることをも、はつきりした根拠を示して指摘した。この核訓練の問題について、政府は「模擬爆弾といえどもこれは核だ、核の模擬爆弾だというようなことにつきましては、これはもう日本人はアレルギーを持つておる。そういうようなことから厳重にアメリカに申し入れをいたしたい」「五月十五日以降におきましてかかる演習が行なわれることにつきましては、厳重にわがほうとしては警告をいたしたい」((注)田外相、三月七日の衆院予算委員会、不破議員にたいして)、「ただいま核の模擬爆弾でもこれは投下訓練はしない、そういう方向でアメリカに問い、十分話し合う」(佐藤首相、同)と明確な答弁をした。政府が約束したアメリカへの警告や申し入れが、いつおこなわれたか、アメリカ側の回答はどうであつたか、そして沖繩の施政権返還以後、現実に核訓練は完全に中止されることになつたかどうかを、明確にされたい。
 3 核部隊の問題 共産党の調査によつて、「復帰」後存続する部隊のうち核部隊であることが判明したものは、第四〇〇弾薬整備部隊、第一八戦術戦闘航空団、第三海兵師団、陸軍第一九六兵器大隊、第七艦隊第七二機動部隊(沖繩にはその合同司令部が存在)がある。そのうちたとえば、第一八戦術戦闘航空団が核部隊であることは、すでにのべた同航空団の核模擬爆弾投下の事実のほか、第四〇〇弾薬整備部隊から戦術核爆弾がたえず同航空団に送られていること、同航空団にはみずから管理中の核兵器が事故を起こしたさいの緊急対策計画があり核兵器安全点検将校が配置されていることなどによつて、確証されている。前記の部隊が、沖繩からついに撤退しなかつたとすれば、どのような具体的措置によつて、核部隊から非核部隊にかわつたかを、詳細に示すことは、政府の責任である。それぞれの部隊について明確な答弁を求める。
二 緊急出撃と第三国軍人訓練について
  今回のベトナム民主共和国にたいするアメリカ軍の爆撃、海上封鎖などの集中的攻撃にさいして、日本本土の米軍基地とともに、沖繩の米軍基地はベトナムへの出撃・補給の拠点となつており、とくに海兵隊の相当の兵力が沖繩からベトナムに向かつたといわれる。いうまでもなく、沖繩の米軍基地はこれまでベトナムにたいする直接出撃の基地であつたし、チャップマン米海兵隊総司令官などの米軍当局首脳は、「復帰」後も沖繩の基地が自由出撃基地としてとどまることをくりかえし強調してきた。これにたいし、政府は、たとえば五月十日の衆院外務委員会における(注)田外相の答弁に代表されるように、「ベトナム出撃は認めない方針である」とのべてきた。さらに、国民が大きな不安を持たざるをえないのは、南ベトナムかいらい軍幹部を含む第三国軍人にたいする軍事訓練が、今後とも沖繩で続けられるのではないかという点である。この問題についても、政府は「返還後は第三国軍の訓練をしないということになるはずである」(吉野外務省アメリカ局長、昨年十月二十二日の衆院外務委員会、私にたいして)と答弁していた。このような従来の政府答弁に照らせば、政府は、つぎの諸点について明快な解明をすべき立場にある。
 1 緊急出撃の問題 こんどの対ベトナム作戦でも、第三海兵師団をはじめとする沖繩駐留米軍はベトナムに出撃し、また、嘉手納基地のKC135空中給油機はグァムからベトナム爆撃に向かうB52戦略爆撃機に給油飛行をおこなつている。このような実態は、ベトナム侵略戦争と沖繩基地が直結していることを示すものにほかならないが、政府は、「ベトナム出撃は認めない方針」にそつて、このような基地使用をいつさいやめさせるべきではないか。
   また、アジア全域の米陸軍への補給を担当している沖繩の米陸軍第二兵站軍団は、「ベトナム化」計画にあわせて、南ベトナムかいらい軍にたいする特別の軍事「援助」部門を設けているが、このような活動は今後もつづけられるかどうか。
 2 第三国軍人訓練の問題 共産党調査団は、沖繩駐留第三海兵師団が作成した第三国軍人訓練計画である「一九七二会計年度軍事援助計画(MAP)日程表」を明るみに出したが、これには七一年九月から七二年の七―九月にかけて沖繩で実施を予定している南ベトナムかいらい軍、蒋介石かいらい軍、タイ軍、フィリピン軍の幹部にたいする訓練の計画が詳細に示されている。この事実を示して政府の見解をただしたさい、政府は、マイヤー駐日米大使が昨年六月十七日の沖繩協定署名にのぞんで「地位協定には日本における第三国人の軍事訓練を許可するいかなる規定もない」と言明したことをわざわざ引用しながら、「第三国軍人の訓練をすることは、安保条約の目的に反するとわれわれは理解しておりますから、これは一切禁止させます」(吉野外務省アメリカ局長、昨年十一月十二日の衆院沖繩協定特別委員会、不破議員にたいして)とのべ、とくに問題の第三海兵師団の第三国軍人訓練計画については「しつかり調査する」((注)田外相、同)と答弁した。少なくとも明確に証拠づけられた、五月十五日以降の第三海兵師団の第三国軍人訓練計画について、政府の調査結果はどうであつたか、また、第三海兵師団を含めていつさいの米軍の第三国軍人訓練を全面的に禁止する措置をどのようにとつたのか、明快な答弁をされたい。
三 謀略機関について
  国民は、沖繩の米軍基地が、アジアにおけるアメリカの陰険な謀略作戦の根拠地であることにも、深い不安と疑惑を持つている。とくに、従来、政府が“実態をつかめない”といつていたCSG(混成サービス・グループ)が、昨年の沖繩協定調印直後、ニューヨーク・タイムズが暴露した米国防総省ベトナム秘密報告によつて米中央情報局CIAの重要な機関であることが明るみに出されるに及んで、沖繩にあるアメリカの謀略機関が他に類を見ないほど重大なものであることが判明した。これらの謀略機関への施設・区域の提供には、地位協定違反の疑い濃厚なものも含まれている。政府は、以下の問題点について、責任ある回答をしなければならない立場にあると考える。
 1 CIA機関の問題 昨年十月二十九日の衆院予算委員会で私(松本)がただしたとおり、政府が施政権返還後も存続を認めたCSG(基地リストA表七一)とFBIS(海外放送情報サービス、基地リストA表二一に含む)は、CIAに属する機関である。(注)田外相もこの委員会で明確に言明したとおり、CIAに施設・区域の提供をすることは、「日米安保条約上はできない」。したがつて、CSG、FBISにたいして現実に地位協定により基地使用を認めることは、安保条約の明白な違反だと考えざるを得ない。
   この点で、政府はCSGに関してはわが党の追及に対し、「一九七二年七月一日をもつて撤去する」との米側発表をもつて答えた((注)田外相、昨年十月二十九日の衆院予算委員会、私に対し)が、もしもこの言明が現在も修正されていないとすれば、施政権返還日の五月十五日から少くとも約一ヵ月半は、安保条約、地位協定に真向から違反してCIA機関への施設・区域の提供がおこなわれることになる。政府は、このような不法行為をあえておこなうものなのかどうか、明確にされたい。
   さらに、FBISの問題については、従来の政府の説明に重大な疑惑が残つている。共産党が確認したところによると、FBISはCIAに直属する外国放送傍受を目的とした機関であつて、米政府の公式文献である「米国政府組織要覧」U.S.GOVERNMENT ORGANIZATION MANUALもFBISがCIAの一機関であることを証明している。この点に関して、政府は「いままでこの機関(FBISをさす)はCIAの系統であつたというふうに聞いている。しかし、軍の系統に移されたということも伺つておる」((注)田外相、昨年十月二十九日の衆院予算委員会、私に対して)と説明したことがあるが、米政府のいかなる公式文献にもとづいてFBISが“軍の系統に移つた”かはついに明らかにしなかつた。この点を証明をぬきに、政府がどんなにFBISは軍だと言いはつても、それは客観的根拠の伴わないものでしかない。もしも政府がこの主張をつづけるなら、その裏づけを示されたい。
   また、FBISの活動内容にたいして、共産党がここは社会主義諸国の放送を逐一傍受している特殊な機関であることを、FBIS沖繩ステーションの受信記録を示して追及したところ、政府は、「そういうような特殊な任務をしておる部隊が若干ある。しかし、いまアメリカに施政権がある、従つて安保体制を逸脱するという状態は今日ある。しかし、返還日にはこれは安保体制下にはいるのだから、これはその制約下に置かれる」((注)田外相、同)と答弁した。この答弁は沖繩のFBISによる社会主義諸国の放送傍受という「特殊な任務」が、施政権返還とともに中止されるべきだとの見解を示したものと解される。果して、FBIS沖繩ステーションは、社会主義諸国の放送の傍受を中止したのかどうか、答弁を求める。
 2 第七心理作戦部隊の問題 わが党は、昨年十月、沖繩の第七心理作戦部隊がおこなつている謀略宣伝の一つの例として、B52戦略爆撃機による無差別爆撃を予告し“投降”を勧告した非人道的なベトナム語ビラ数種を示して追及した。これにたいして、政府は無差別爆撃は「よくないこと」と認め、「返還の時点からは米軍の資格も変つてくるわけだから、その際は人道にそむくというような行動のないように、そういうようなことは印刷に限らず諸般の問題について注意し、なからしめるという方針としたい」((注)田外相、昨年十月二十二日の衆院外務委員会、私にたいして)と答弁した。当時の政府の言明のとおり、実際に沖繩の第七心理作戦部隊は、人道にそむく行動をことごとく中止したのかどうか、政府が具体的に明らかにする責任がある。明確な回答を求める。

 右質問する。





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