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昭和四十八年十二月二十一日提出
質問第五号

 成田空港の航空燃料暫定輸送計画に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年十二月二十一日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




成田空港の航空燃料暫定輸送計画に関する質問主意書


 現下の石油危機にかんがみ、成田空港計画の現象面に見られる遅延および暫定輸送計画の現実の進行について考察し、この認識の上に立つて、暫定輸送計画のもつ現在的な問題点を摘出し、これをもつて航空行政への建設的な意見をするため以下若干の質問を致したい。
 いわゆる「羽田の過密」の問題が、便数削減、ドル流出による海外渡航の制限、インフレ下での運賃値上げおよび航空会社による投資の抑制により消滅すること。成田空港自体も暫定輸送計画の完成をもつてしても完了しないこと。暫定輸送計画にも未解決の問題が種々残つていること。暫定輸送計画は、本ルートの完成をもつて中止する性質のものであつて、投下資本はむだであり、現在のインフレ下、また公共投資の抑制という観点からいつても望ましいことではないことなどを勘案するならば、航空燃料暫定輸送計画は中止されるべきものであり、少なくとも中止する方向で全面的に再検討されるべきものであると考えている。
 ちなみに、現代技術の最先端にあるといわれているシステム技術、とりわけマネージメント技術によれば、プロジェクトのマネージメントについて以下のように述べている。
 プロジェクトの進行は、その中止を含めて絶えず全体的に管理されていなければならない。すなわち、プロジェクトの進行を現時点でもたらされるマイナスよりも、このプロジェクトの進行をそのまま続行することによりもたらされるであろうマイナスの方がより大きなものであるならば、このプロジェクトに対して現在までに投下された資本(資源、エネルギー、人および金)がいかに大きくとも中止すべきであるとされている。俗な表現をすれば、乗りかけた船はその船がどつちに向かつていようと最後まで強引にこぎ続けるという「美学」ではなく、例えば、山頂を目前にした登山家が、時と場合によつては途中でもあえて引き返すということ、その勇気が大切であるということを教えているのであろう。さて田中内閣は、大きなプロジェクトを手がけているようだが、プロジェクトの管理について、一般論としてこのような勇気あるいはこれにより決断し実行する能力をもつているのであろうか。以下の問いに誠意ある回答を期待する。

一 最近の物不足と物価上昇(インフレ)およびこの間の石油危機のもたらした中で航空燃料暫定輸送計画の現実の進行状況のみならず、本来の空港設置計画の遅れを勘案するならば、かかる暫定輸送計画は中止されるべきものであるとは考えないのか。考えないとするならばその理由は何か。
二 成田空港を急ぐ要因の一つとしてあつたいわゆる「羽田の過密」の問題が
 (1) 便数削減(海外便、国内便、定期便、不定期便)
 (2) ドルの流出による海外渡航の制限
 (3) インフレ下での運賃値上げ(国内線は二十二・九パーセントの値上げ申請中、国際線は四十九年一月一日より四ないし六パーセントの値上げ決定)
 (4) 総需要抑制の立場からの航空三社への航空機の新規購入の半減指示などの中で、当面、自然消滅の方向に向かうとは考えられないのか。考えられないとすればその理由は何か。
三 成田空港計画自体も航空機暫定輸送計画の完成をもつてしても直ちに開港し得る形に完了しないと考えられるが、政府の考えはどうか。ほかにいまだ解決しなければならない問題が種々あるのではないか。もしあるとするならば、すべて列挙されたい。
四 成田空港のアクセス(地上交通)については、「長期的対策」としてある成田新幹線については見通しもなく、また、道路輸送の過密解消の手段として考えられた湾岸道路は公共投資抑制のためその建設が繰延べないし中止になると思うが、成田空港への足の確保を長期的にはどのように考えているのか。
五 成田空港へのアクセスとして考えられている「短期的対策」は、その建設の現実的な進行状況を勘案するならば、結局のところ需要に供給が追いつけないことになるのではないか。
 (1) 主幹線道路(首都高速、京葉、東関道)の過密解消には、当面の対策はないのではないか。
 (2) 三本の幹線道路(我孫子回り、松戸、白井、臼井回りおよび千葉回りの各国道)は、道路交通情報センターの調査によれば、現在でも片道二時間ないし三時間はかかるので空港へのアクセスのための道路としては使えないのではないか。
 (3) 国鉄在来線は、空港に乗り入れていないし、乗り入れたとしても東京からの時間がかかりすぎるのではないか。
 (4) 京成電鉄による輸送は、華やかな宣伝にもかかわらずその本来の目的(通勤客輸送および成田山参拝客の輸送)からして、空港アクセスとしての大量高速輸送は期待できないのではないか。もし可能であるとするならば、それを線路密度等を踏まえた上で定量的に明らかにされたい。
 (5) 県営鉄道は、すぐにはできないし、空港にも乗り入れていないので、空港アクセスとしては考えられないが、どうか。
六 騒音対策については、未解決な問題が種々残つていると思われる。例えば千葉県の行つている民家の防音については、居住性および経済性についての問題が解決されておらず、対象地域の住民にも受入れられてもいない。居住性の問題については、本質的な解決が期待できないので生活環境破壊は依然として残るが、一体どうするつもりなのか。
七 空域については、自衛隊の百里基地との調整がいまだついていない。
 (1) 新空港の位置を成田市三里塚に定めた時には、自衛隊との間にどのような了解ができていたのか。その内容を明らかにされたい。
 (2) 新空港の長期的運用を可能ならしめるために必要な空域が三里塚の地で確保できると判断した根拠を航空管制工学的に明らかにされたい。
 (3) 騒音対策との関係で、侵入、着陸および離陸コースについてはいまだ決定されず、住民および地方自治体の合意すら得られていないが、どうするつもりなのか。
 (4) 百里基地との調整は、どうするつもりか。
八 暫定輸送計画自体にも未解決の問題が残つているのではないのか。次の各質問に根拠、理由を付して具体的に答えられたい。
 (1) 鹿島港の基地の建設は現在どうなつており、どのような見通しがあるのか。鹿島石油による二十二万バーレルの増設要求が、この間の石油危機の影響により十三万五千バーレルを限度としてその増設が認可されたと聞く。しかも工事の完成が五十一年十月となつている。一体どうするつもりなのか。
 (2) 鹿島港へのタンカーの調達は、どうなつているのか。その調達および運営の責任はどこにあるのか。
 (3) 鉄道輸送用タンク車の調達は必要量が確保できるのか。
 (4) タンク車輸送の列車ダイヤおよび列車編成は、誰が責任者で現在どのようになつているのか。
 (5) 鉄道沿線の地方自治体(佐原市、鹿島町および神栖町)の議会の全員一致の反対決議をどうするのか。
 (6) 鉄道沿線の安全対策は現在どうなつており今後どうするつもりなのか。
 (7) 寺台地区等の住民対策費(公民館の建設、道路舗装および街路灯の設置等)を違法行為にならないようにどうねん出するのか。
 (8) 暫定パイプライン設置のための消防法令(法律および政省令)の整備はいつまでに完了するのか。ちなみに当時の田中(注)榮通産大臣は、石油パイプライン事業法案審議の際に建設できるが、法制を整備して国民の生活を守るのは政府の責任であると言明している。建設される石油パイプライン沿線住民の生命と生活を、その事故から、災害から守る。しかも官僚による法の運用によるのではなく、法律そのものによつて守るということなのであろう。田中首相が自己の発言に忠実であるならば成田暫定パイプラインは、消防法令が整備されるまでは建設させないということなのであろう。
 (9) 暫定輸送計画によるハイドランドチャージの増加を誰がもつのか。その話はついているのか。ついていなければそれがつく見通しはあるのか。
 (10) 暫定輸送によるハイドランドチャージはいくらになるのか。そしてそれは本ルートによる場合の何倍になつているか。
九 暫定輸送計画は、本ルートの完成をもつてして中止する性質のものであつて、投下資本は回収されずむだであり、現在のインフレ下、また公共投資の抑制という観点からいつても望ましいものではないと思うがどうか。
十 暫定輸送計画実施の総経費(建設費および運用費)は、成田市土屋から空港に至る諸施設だけで二十億円を超すといわれるが一体いくらになるのか。
十一 暫定輸送計画の鹿島関係の予算は四十九年度になるといわれているが、大蔵省は公共投資の抑制ということを四十九年度予算編成の眼目としているが、運輸省のこのような予算請求を全体的な空港建設状況を航空燃料輸送の暫定計画実施状況およびその見通しに対する詳細な検討なしに認めてしまうのか。
十二 この間のトイレットペーパーから始まり豊川信用金庫の取り付け騒ぎに象徴される社会不安は、経済生活に対する先行きの不安と国家に対する不信(心理的な国家解体)の現れである。例え安定成長論者といわれる(注)田赳夫氏を大蔵大臣にすえたところで、その主張が具体的な政策となり、具体的な結果を生み出さない限り、これらの不安は解消されないであろう。責任ある政治家は、絶えず自己の全存在を批判的に対象化し続けているものである。
  現在の経済、社会の不安の解消に何ら寄与せず、また壮大なるゼロといわれている新東京国際空港の建設、とりわけ航空燃料暫定輸送計画に対して「途中で引き返す」勇気はないのか、これらのことを決断し実行する能力はあるのか。

 右質問する。





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