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昭和四十九年四月八日提出
質問第二〇号

 新東京国際空港公団が犯した消防法に係る違法行為に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年四月八日

提出者  木原 実

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




新東京国際空港公団が犯した消防法に係る違法行為に関する質問主意書


 新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)は、航空燃料輸送パイプライン(千葉・成田間のいわゆる「本格」パイプライン)を設置するに当たり、消防法による設置許可を受けず、また設置許可の申請すらせずに、埋設工事に着手した。これは、石油パイプライン事業法(以下「事業法」という。)が、施行されるはるか以前のことである。消防法第四十二条によれば、かかる違法行為(犯罪)に対しては、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処するとされている。
 新東京国際空港の設置ということは、空港公団発行のパンフレット「新東京国際空港の計画」によれば国家的要請にこたえるべくなされるものであり、空港公団法第三十六条によれば、空港公団は運輸大臣の直接の監督下に置かれ、航空審議会による新東京国際空港に関する建議によれば、いわば国家的な大事業として行われるものであつて、その一切の活動に当たつては、いささかも違法行為などあつてはならないものである。
 そこで、空港公団に係るかかる事態の存否、違法性の有無及び関係する刑事責任について、政府の見解を問いたい。

一 「本格」パイプラインの埋設(以下「本件」という。)を消防法にてらすべく、まず消防法について本件に関係すると思われる部分の解釈を明らかにしておきたい。
 (1) 空港公団が千葉港より成田空港へ輸送する航空燃料(ジェットA1及びジェットB)が消防法第二条で定められた危険物に該当するのであれば、それぞれの類別及び品名を明らかにされたい。航空燃料の質的な性格を消防法上の規定として明らかにしたいのである。該当しないとするのであればその理由を明らかにされたい。
 (2) 「本格」パイプラインは、千葉港より成田空港までのいくつかの地方自治体を経由して設置されるが、各自治体の管轄区域内において、消防法第十条で規定される指定数量以上の危険物が埋設されるパイプラインを通過して輸送され、又は、貯蔵(輸送の停止時)されるようなことがあつてはならないとする理由を明らかにされたい。かかる輸送に関して、航空燃料の量的な関係についてのみただしているのである。
二 空港公団は、事業法が施行される以前に本件の工事に着手した。かかる事実は、成田パイプラインの安全対策に関する質問に対する答弁書(昨年九月二十八日付けで受領)でも明らかなように、政府においても十分認識されているところである。
  更に、本年三月八日の衆議院予算委員会第五分科会において、衆議院議員土井たか子氏の質問(以下「土井質問」という。)に答えて、空港公団理事池田(注)弘氏は本件の工事は、八つの工区に分けて行われ、かかる全工区において工事に着手していた旨を述べている。
 (1) 「本格」パイプラインが経由して設置される地方自治体は、千葉市、四街道町、佐倉市、酒々井町、富里村、成田市の六自治体である。これらの自治体の管轄区域において、本件の工事に着手された日時(年月日)をそれぞれ明らかにされたい。
 (2) 政府は、いかなる事実又は事態をもつて、パイプラインの埋設工事に着手したとするのか。
 (3) 「本格」パイプラインに関して事業法が施行された日(昭和四十七年十二月二十五日)現在での掘削、配管、埋め戻しの建設状況及び使用となる用地の確保状況はどうか。
     飛行場内を含め成田、酒々井、富里、四街道、佐倉、千葉市等の資材道路、水道道路、護岸敷埋め立て地の各工区ごとに明らかにされたい。なお、昭和四十七年六月十二日の参議院商工委員会において、参議院議員竹田四郎氏の質問(以下「竹田質問」という。)に答えて、空港公団総裁今井榮文氏は、場内並びに成田の道路につきましては、すでに管の埋設を終わりまして、東関東自動車道沿いについて、一部埋設工事に入つておりますと述べていることを附記しておく。
三 土井質問に対して、空港公団理事池田(注)弘氏は、本件に関し、消防法による設置許可の申請はなされていない旨の答えをなし、同じく土井質問に対して、運輸省航空局飛行場部新東京国際空港課長松木洋三氏は、空港公団法第二十四条の定める業務方法書の規定に基づき、給油施設の建設及び管理規程を定め、それに基づいてパイプラインの建設をしてきた旨の答えをなし、消防法による設置許可を受けていないことをいわば追認している。そこで、空港公団法第二十四条にいう業務方法書に係る諸規定について明らかにしたい。
 (1) 空港公団法第二十四条で定める業務方法書の認可の申請は、いつ、いかなる形で運輸大臣になされたか。また、変更申請があれば、それは、いつ、いかなる形でか。そのすべてを列挙されたい。
 (2) かかる認可は、それぞれ、いつ、いかなる形で行われたか。
 (3) 規程第八号として、昭和四十六年十二月一日付けで空港公団総裁今井榮文名で出された空港公団業務方法書が、かかる業務方法書であるとしてよいか。
 (4) かかる業務方法書の第六条第三項によれば、運輸大臣の承認を受けた基準に従つて、航空機給油施設の建設及び管理を行うものとされている。そこで、かかる基準(空港公団航空機給油施設の建設及び管理規程)の承認申請は、いつ、いかなる形で、運輸大臣に対して行われたか。
 (5) かかる承認は、いつ、いかなる形でなされたか。
 (6) 竹田質問に対して、空港公団総裁今井榮文氏は、形式的には、まだご認可の書類はいただいておりませんと述べている。運輸省から空港公団へ、かかる書類の物理的な輸送に要する時間はどれほどか。
 (7) ところで、空港公団航空機給油施設の建設及び管理規程(以下「建管規程」という。)の第二条によれば、給油施設の建設及び管理については、航空法、消防法、道路法、その他の法令に定めるもののほか、この規定の定めるところによるとある。池田(注)弘氏とか、松木洋三氏とかは、かかる規程が消防法を援用していることを知らなかつたとしてよいか。
 (8) 空港公団業務方法書では、航空機給油施設の建設及び管理の基準については言及しているが、完成検査については一言もふれられていない。完成検査は、さきの建管規程の中で処置されるとしてよいのか。
 (9) 建管規程では、第二章で建設について、第三章で保安管理についての基準を与えるだけで、第一章総則第二条で言及される航空法及び消防法をのぞけば、完成検査についての規定はない。航空法には、飛行場及び航空保安施設についての完成検査の規定を定めてあるが、給油施設についての完成検査の規定はない。一体、完成検査ということについてどのように考えていたのか。誰れが、どのような法的根拠に基づいて行うのか。
四 消防法の適用に関して質問する。
 (1) 千葉港頭施設及び場内施設については、消防法による設置許可を受けたのか。受けたとすれば、各々の許可申請及び許可の日時(年月日)と内容を明らかにされたい。
 (2) 空港公団は、関係する地方自治体に対し、本件について消防法による設置許可の必要性その他について問い合わせをしたのか。それぞれの自治体について問い合わせの日時(年月日)と形式及び内容について明らかにされたい。消防法第十一条による設置許可が必要であるとすれば、本件の場合、富里村について千葉県知事の許可になるほかは当該の市長及び町長の許可が必要であることになる。
 (3) 成田市、酒々井町、佐倉市、四街道町、千葉市及び千葉県から、かかる許可の必要性その他についての公文書による問い合わせが、消防庁に対してなされたか。それは、それぞれ、いつ、いかなる形でか。その内容は何か。
 (4) 消防組織法第十九条によれば、消防庁は、本件許可にかかわる事態に直接責任を有していないとしてよいか。
 (5) 消防庁が、本件の工事が行われているという事実を法的に公式に知つたのはいつか。また、いかなる方法によつてか。
 (6) 消防庁は、本件許可に関し関係する自治体からの照会の存否にかかわらず、助言、勧告、指導を行つたか。時期と内容、対応する自治体名とにつきそれぞれ明らかにされたい。
 (7) 竹田質問に答えて、空港公団総裁今井榮文氏は、設計あるいは施行方法等につきましては、運輸省、建設省、消防庁と十分なお打ち合わせをした上でうんぬんと述べている。かかる打ち合わせは、技術基準についてなされたか。法律上の手続きについてなされたのか。その打ち合わせの日時(年月日)及び内容を明らかにされたい。
 (8) 土井質問に答えて消防庁予防課長永瀬章氏は、消防庁の見解としては、本件について、消防法の適用であると述べている。消防法の解釈について消防庁より優先する省庁はどこか、明らかにされたい。
 (9) 本件について、地方自治体等により、道路法、河川法等の許可を受けているが、これらには完成検査がない。これらの許可を受けたのは建管規程の第二条に定められているからなのか。許可を必要とした法的理由は何か。
五 事業法と消防法の適用について質問する。
 (1) 事業法第四十条第二項によれば、消防法第三章の規定は、事業用施設による石油輸送については適用しないとある。このことからして、事業法が対象とするような施設であつても、事業法の施行以前には消防法の対象になるのが当然ではないか。にもかかわらず、何ゆえに対象とならないとするのか。
 (2) 空港公団はいわゆる「暫定」パイプラインの設置に当たり、危険一般取扱所として消防法に基づく設置許可を昭和四十八年五月二十六日に成田市長長谷川録太郎氏より受けている。かかる許可を受けた時点において、消防法、危険物の規制に関する政令及び同規則のうち本件に関係する部分について、事業法が施行される以前で、本件工事が着手されたときのものとくらべて改正された点があれば明らかにされたい。
 (3) 「暫定」パイプラインの設置許可について、消防庁は成田市長より照会を受けたか。それは、いつ、いかなる形でなされたか。また、これに対してどのような対応が、いつ、いかなる形でなされたか。
 (4) 空港公団法は、いかなる法的根拠により消防法を適用除外することとしたのか。特別法と一般法の関係であると主張されるならば、その法的根拠も併せて明らかにされたい。
 (5) 「暫定」パイプラインは、なぜ消防法の許可を受けたのか。空港公団法第二十四条の業務方法書に基づく諸規定にだけ従つて設置していてはいけないとする理由(法的根拠)は何か。
 (6) 空港公団法の規定と事業法との規定ではどちらが優先するのか。その理由は何か。
六 事業法施行以前に行われた本件の工事が、消防法第十条及び第十一条に違反しないとするならば関係する一切の法令を引用して、可及的に詳細に述べられたい。
七 事業法施行以前に行われた本件工事が消防法第十条及び第十一条に違反しているとした場合について質問する。
 (1) 空港公団総裁が違法行為を犯したことになるのか。その他誰れが違法行為を犯したことになるのか明らかにされたい。
 (2) かかる違法行為に対して消防法第四十二条は罰則を用意しているが、かかる犯罪が時効となる期限はいつか。それはいかなる根拠によるか。
 (3) 刑事訴訟法第二百三十九条第二項によれば、官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならないとある。本件に関与する者は、空港公団及び関係する地方自治体であつて、消防組織法第十九条の規定により、消防庁は直接の当事者とはなり得ないので、空港公団を監督する立場にある航空官僚が告発人となるべきであると考えるがどうか。
 (4) 関係する航空官僚も、航空局長、飛行場部長及び新東京国際空港課長とあるが、航空局長が本件にかかわる犯罪の告発人となることが最適と思料するがどうか。
 (5) いつまでに告発させるつもりか。その理由は何か。
八 空港公団に、新東京国際空港を適法に設置する能力があるとするならば、可及的詳細にその理由を明らかにされたい。

 右質問する。





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