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昭和四十九年七月三十日提出
質問第四号

 教科書に現れた「二つの中国」に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年七月三十日

提出者  吉田法晴

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




教科書に現れた「二つの中国」に関する質問主意書


一 昭和四十七年九月に発表された日中共同声明は、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」として、台湾は中国の領土の一部であることを確認している。このことは、その第三項とも関連して「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」はないということを明確にしたものであると考える。
  このことは、第七十二回国会、三月五日の衆議院内閣委員会における私の質問に対して、外務省・中江参事官から「日中国交正常化が一昨年の九月二十九日に行われた際に、日本政府の対中国観といいますか、中国に対する態度がどのように変わつたか……関係部門に徹底いたしたわけでございます……。」と答弁された。
  私の質問に関連して、藤尾議員の逆の立場からの質問があり、中江参事官の「台湾帰属未定論」に基づく答弁があつたので、四月二十六日大平外務大臣の明確な答弁を重ねてお願いした次第である。
二 当時使用された教科書や地図に、「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」が残つているではないかという質問に対しては、外務省(中江参事官)からは、三月五日の内閣委員会で、前出のような答弁があり、文部省からは(文部大臣・岩間初中局長)、同日の衆議院予算委員会第二分科会で「即刻訂正」「十分善処」「新年度からの教科書につきましては新しい記述で編集されますよう強力に指導いたしております。」と言明された。
  しかるに、昭和四十九年度、小・中・高校教科書の中に、日中共同声明の原則を否定し、「二つの中国」ないし「一つの中国と一つの台湾」の思想をもつた内容が記載されているものが沢山ある。以下その具体例を挙げる。
 1 日本書籍発行、小学社会六、昭和四十八年四月十日文部省検定、昭和四十九年一月二十五日発行「日本のあゆみ」の中で、「中国では国内での抗争のすえ、中華人民共和国が生まれ、中華民国は台湾に移り、アメリカと結びました。」と記述し「二つの中国」のあることを認め、これまでの歴史的な経緯(我が国と中華人民共和国と国交のなかつたこと)を隠ぺいし、日中共同声明の発表されたことについても一言も言及していない。
 2 清水書院発行「日本の歴史と世界」中学日本史教科書(昭和四十九年二月二十五日第三版発行)同教科書第十章「新しい日本と世界」の最終項に「中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国との間には、正式な国交が開かれていない。」と述べ、中華人民共和国との国交回復を否定する記述を行つている。
 3 中学・地理教科書(昭和四十九年発行)
  (1) 日本書籍発行「中学社会=地理的分野」
      この教科書の中で、首都、面積、人口、人口密度、産業別人口の統計表を載せ、中華人民共和国と並列に中華民国を表示している。
  (2) 帝国書院発行「中学社会科=地理」の中に、中華人民共和国についての記述の外に、モンゴル人民共和国などと同列に台湾を置いて、「国民政府が支配している。」と述べ「一つの中国と一つの台湾」の立場をとり、台湾が中華人民共和国の領土であることを否定している。
 4 高校・日本史教科書(いずれも昭和四十九年発行)
  (1) 山川出版発行「日本史」
      日中共同声明については一言も触れていない。日中国交については巻末の年表に“日中復交”の四字があるのみ。
  (2) 自由書房発行「日本史改訂版」
      山川出版発行「精撰日本史」
   いずれも日中共同声明についての記述がほとんどない。
 5 高校世界史(いずれも昭和四十九年発行)
  (1) 帝国書院発行「新世界史」
  (2) 学校図書発行「世界史」
  (3) 清水書院発行「世界史」
     右のいずれの教科書も、日中国交回復についての記述がない。
三 以上の経緯、事実に基づいて改めて次の点について政府の見解を求めるものである。

1 日中共同声明が発表されてからこの七月までに一年十か月を経過している。第七十二回国会答弁では、「新年度(昭和四十九年度)からの教科書は、正しい記述の教科書が子供たちの手に渡る」よう「強力に指導」していると言明されたのにもかかわらず、昭和四十八年度の教科書と同じような記述内容となつた理由は何か。どのような「強力な指導」がなされたのか明らかにされたい。
2 日中共同声明に矛盾し、「二つの中国」ないし「一つの中国と一つの台湾」を意味する内容を持つこのような教科書が、文部省の検定を通過し、教科書として使用されるのはいかなる理由によるものか明らかにされたい。
3 かくのごとく、「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」の考えに基づく教科書が検定を通過し教科書として使用されるのは、政府の中に「台湾帰属未定論」があり、文部省の中にも「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」的思想、意識が根強く残されているからではないか、その見解を明らかにされたい。

 右質問する。





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