質問本文情報
昭和五十一年十一月一日提出質問第一五号
伊達発電所パイプラインに関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十一年十一月一日
提出者 島本虎三
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
伊達発電所パイプラインに関する質問主意書
北海道電力(株)(以下、北電という)伊達火力発電所燃料パイプライン(以下、本件パイプラインという)の環境影響審査に関し、政府はこれまで「電気事業法(以下、法という)四一条による工事計画認可(以下、四一条認可という)の際に行う」旨、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会(以下、公害特という)における答弁並びに内閣衆質七七第三五号答弁書において、繰り返し述べてきた。北電が本年六月二八日四一条認可を申請したことにかんがみ、本年一〇月二六日の公害特において、本件パイプラインの法解釈と運用並びに環境影響審査の進め方と資料に関して質したところ、政府答弁は不明確なものであつた。
行政行為の明確化によつて、住民の安全と環境の保全に資するため、次の事項について質問いたしたい。
1 個別工作物とは何か、明確に定義されたい。
2 伊達火力発電所に係る個別工作物をすべて明らかにされたい。
3 法及び政省令にない個別工作物なる用語とその概念を統一見解において導入したのは、法解釈の必然的帰結であるのか、あるいは法の欠陥に起因するのか。
4 電気工作物には二種類(概括的と個別的)の対象があることを、法二条七項の電気工作物の定義の中で明文化されていないのは何故か。
二 法七条一項の指定期間はすでに二回延長されているが、その理由は、(イ)住民の反対(ロ)北海道知事による消防法の手続きの必要(ハ)(ロ)に係る技術専門員会議報告書の提出(ニ)伊達パイプライン設置に係る環境保全対策(以下、北電環境対策という)等であるとされている。法八条の許可がパイプライン設置を前提としてなされているとするならば、右理由はいずれも当初から事業計画の中で考慮されるべきものである。
1 北電は、法八条一項の許可申請を行つた際に、右記法手続き及び関係住民の意思を無視した事業を計画していたことにならないか。
2 右記(イ)に関し、伊達市関係住民に対する環境保全対策の説明会は、一回でも行われているか。行われていないとすれば、それは何故か。
3 右記説明会を行わないことに関し、通産省はいかなる指導を行つたのか。
三(一) 四一条認可の際に行われる環境影響審査のための資料として、次の項目ごとにその資料の名称、作成年月日、作成者を明らかにされたい。
1 内閣衆質七七第三五号答弁書で「整備することとしている」とされた調査報告書
2 四一条認可の際に行うとされた環境審査の対象となつているすべての調査報告書
3 本年三月二日公害特において、小沢国務大臣(当時)が「道庁に命令をして、いろいろなことをやらせている」(同会議録二四頁)と答弁した結果、提出された調査報告書
(二) 右質問について
1 (一)の1でいう調査報告書の中に、地下水の水文学的特性のうち、流向・流速・層厚はすべて含まれているか。個々の特性に関し、具体的に明らかにされたい。
2 (一)の3でいう調査報告書は、小沢国務大臣の発言の趣旨を全うしたものが提出されているか。
四 本件パイプライン設置に関し、設置予定場所における地下水への影響は四一条認可の際に審査されるとされ、その審査は資源エネルギー庁長官の委嘱した専門家の意見を聴いて行うとされている。であるとすれば
1 右記地下水の管轄責任は通産省にあると考えてよいか。
2 右記地下水の管轄に関係を有する省庁をすべて明らかにせよ。
3 右関係省庁間で、本件パイプラインの設置に係る協議が行われたか。
4 右協議なくして、本件パイプラインの環境影響審査が完了したことになるか。
五 北海道庁消防課が本年八月伊達市民に配布した「伊達パイプラインの安全対策と環境保全」なる文書には、本年三月三一日専門員会議から北海道知事に提出された技術検討報告書の記述(北郷専門員担当部分)に従うことによつて、パイプライン設置による地下水流の変動を設置前後の湿潤密度によつて評価し、地下水流の変動による影響なしと結論している。右文書は四一条認可の際に行われる環境影響審査の資料の一部をなすと思われるが
1 地下水流の変動を湿潤密度で評価することは工学上妥当であるか。
2 北郷専門員が検討に用いた資料には、パイプライン設置前後の地盤の透水性が一〇〇倍も変動することがあることが示されている。地下水流の変動は地盤の透水性によつて評価されなくてはならないのではないか。
六 パイプラインの植生への影響に関する環境審査は四一条認可に際して行われる旨再三言明されているが、その場合採用される影響有無の判定規準を具体的に明らかにされたい。それは、右五の技術検討報告書(田村専門員担当部分)において用いられた「深さ五〇センチにおいて摂氏四〇度以下」なる判定規準とは異なるか。異なるとすれば、その理由は何か。
七 耕併地周囲の樹木は、通常農作業上の必要から育成されている。しかるに消防法の規定では、樹木からの保安距離の規定を欠き、植生へのパイプライン設置の影響は野放しにされている。石油パイプラインに関するスイスの規則には、樹木からの保安距離を三メートル必要としていたと思うが、我が国では耕作地周囲の樹木への影響は無視してよいのか。農林大臣の見解を承わりたい。
右質問する。