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昭和五十二年一月二十八日提出
質問第二号

 成田空港の開港に係わる福田内閣の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年一月二十八日

提出者  小川国彦

          衆議院議長 保利 茂 殿




成田空港の開港に係わる福田内閣の対応に関する質問主意書


 福田内閣は、発足と同時に成田空港の強行開港に動き出した。よつて、その間の経緯を明らかにすべく福田首相の御見解を賜りたい。

一 一月一日の朝日新聞朝刊(三面)等によれば、運輸省・新東京国際空港公団(以下「公団」という)は、今年を成田空港問題最終結着の年とする方針を決め、開港目標を十一月一日とし、そのため地元千葉県などから出されている環境対策・交通対策などの要求については、「全部の解決を待つては何時開港にこぎつけられるかわからない」とし、事実上の見切り発車することにより、五十二年度中結着の公約を果たすとしていると報じられているが、
 (1) 「運輸省・公団が、今年を成田空港問題最終結着の年とする方針を決め」たことについて
   (イ) 右方針は、何時どのような形で決められたのか。
   (ロ) 右の「成田空港問題」とは何を意味するのか。この言葉に包摂される内容のすべてを項目別に明らかにされたい。
   (ハ) 右の「最終結着」とは何を意味するのか。この言葉に包摂される内容のすべてを具体的に明示されたい。
 (2) どのような事情から開港目標を十一月一日とするとしたのか。算定根拠等を具体的に示して、その理由を明らかにされたい。
 (3) 何故「見切り発車」をせねばならぬ事態となつたのか。
 (4) 「五十二年度中結着の公約」は、何時、何処でどのような形で、だれに対してなされたのか。
 (5) 昨年末の会計検査院の指摘については、運輸省及び公団はどのように受けとめたのか。
 (6) 「発足十年以来持ち出し一方という前例のない公団のあり方」について、現在に至るまで大蔵省は、どのような指摘をしてきたのか。年度毎の指摘の内容を示されたい。
 (7) 五十二年度予算案では、成田開港の時期を何時と設定しているのか。またその根拠は何か。
二 一月八日、川上紀一千葉県知事が田村元運輸相に対し、二十八項目の緊急案件の解決を改めて要請したことについて
 (1) 右二十八項目の具体的な内容は何か。
 (2) 右二十八項目のうち、開港前に解決すべきとされた十項目は何か。
 (3) その他川上知事からどのような要請があつたのか。
 (4) 田村運輸相は、川上知事の要請にどのように対応したのか。
   (イ) (2)の十項目について
   (ロ) 開港時期について
   (ハ) 地元要請事項の積み残し、見切り発車について
三 一月十日の川上知事の記者会見の内容について
 (1) 同知事は、「懸案の二十八項目が解決しない限り、開港できない」とか、「二十八項目のうち、アクセス問題一つをとつても解決しないと、飛行機は飛べない」と述べているが、これらは適正な見解か。誤りがあれば具体的に指摘されたい。
 (2) また同知事は、運輸省側が地元要請事項の積み残し、見切り発車の意向を示唆しているのを「あり得ないことだ」と否定し、「見切り発車はできるはずがない」と述べているが、これは適正な見解か。誤りがあれば具体的に指摘されたい。
四 一月十一日の閣議では田村運輸相が成田空港の現状について報告し、今後順調に進めば今秋にも開港できるとの見通しを述べ、そして、各閣僚から活発な意見交換が行われ、このあと福田首相は、「関係各省庁が一致協力して、地元の了解を得て早急に開港できるようにせよ」と早期開港を督励したと報じられているが(朝日新聞・読売新聞など)、
 (1) 田村運輸相の述べた「今後順調に進めば今秋には開港できる」との見通しは、運輸省と公団の報告のみによるのか。それとも運輸大臣が特別に検討した結果によるものなのか。
 (2) 右において、順調な進行のスケジュールを阻害する可能性のある要因を項目別に示されたい。
 (3) 田村運輸相の報告では、航空燃料道路の確保と、二基の鉄塔が障害となつて成田開港が遅延しているということだつたのか。右二点以外に成田開港を遅延せしめているものがあれば、それは何か。
 (4) 福田首相の指示する早期開港の予定期日は運輸省・公団のいう十一月一日を指すのか。
 (5) 福田首相の早期開港の指示は、地元の了解を得ることが当然の前提となつているとしてよいか。裏返していえば、地元の了解が得られぬ限り、他の条件がそろつても開港させないということか。
五 右閣議の席上、石原慎太郎環境庁長官から「羽田の混雑状況は、航空安全の点からも、きわめて危険な段階にきている。この際羽田の窮状について国民一般にもつとPRしてはどうか」の意見が出された旨報じられているが(読売新聞・千葉日報など)、
 (1) 石原環境庁長官の「羽田は過密で危険だ」とする指摘について航空の安全確保もその職責の一つとする田村運輸相は、どのように対応したのか。
 (2) 石原環境庁長官の主張の趣旨は、羽田空港が航空機の航行の安全を図ることを目的の一つとする航空法に違背して運用されているということなのか。その他航空法との関係で明らかにされたい。
六 同じく右閣議の席上、前運輸相の石田博英労働相が、地元対策で「大蔵省が十一億円の対策費を渋つたため、今では四百億円でも解決できなくなつた」とかみつき、元大蔵事務次官の鳩山外務相が「みなさん私の方ばかりジロジロみないで」と防戦する場面もあつたと読売新聞の大井啓資記者は一月十八日付の同紙朝刊七面で報じているが、
 (1) 福田内閣には、「悪貨が良貨を駆逐する」という体質がないといえるか。
 (2) 「大蔵省が十一億円の対策を渋つた」とは如何なることか。佐藤文生運輸政務次官(当時)が指摘した公団から千葉市へ流れるはずの「環境整備費」を大蔵省が出し渋つたということなのか。
 (3) 右において大蔵省が出し渋つた理由は何か。
 (4) 石田労働相の右の指摘に対し、長谷川四郎建設相は、運輸省・公団の用地取得に係わる起業地計画の失敗に開港遅延のすべての原因があると何故指摘しなかつたのか。
 (5) 開港の障害となつていると田村運輸相が指摘した千葉港・新空港間の燃料輸送道路の確保にしても、四千メートル滑走路南側のアプローチエリヤ内にある二基の鉄塔にしても、それらを新空港の強制収用に係わる起業地計画に含めておきさえすれば、公団と千葉市との関係が事後的におかしくなつても建設大臣の行政処分は影響を受けず、従つて燃料輸送路も確保され、また二基の鉄塔も建設され得ないものであつたと何故石田労働相に長谷川建設相は説明しなかつたのか。
 (6) 公団の起業地計画に欠陥があつたからこそ、航空燃料の暫定輸送が必要になり、加えて暫定パイプライン建設のため公団が地元対策としてまず初めに成田市山の作地区に、百万円を支出する形で対処し、次いで同市寺台地区の要求をのみ、これがエスカレートする形で茨城県鹿島地区のぼう大な地元要求をのまざるを得なくなり、結局、安易に「金でケリをつける」という悪しき風潮を作り上げてしまつたのは運輸省・公団ではなかつたのか。
 (7) 鳩山外相は何故右の点を指摘しなかつたのか。また、赤字国債まで発行しなければならないほどのパンク状態の国家財政を処理する責務を有する坊秀男蔵相は、どのように右事態を解釈していたのか。
 (8) 運輸省・公団の「金でケリをつける」という処理の仕方が一方で、土地を強制収用されている例えば故小泉よねさんとの対比において、著しい差別をもたらし、憲法違反の事態を招来すると何故、土地収用法の運用に職責を有する長谷川建設相は指摘しなかつたのか。
七 一月十四日、川上知事が福田首相に二十八項目の緊急案件の早期解決を要請したが、
 (1) 川上知事は、二十八項目にわたる要求のそれぞれの実現さるべき時期と成田開港の時期との関係につき、どのような条件をつけたか。
 (2) 右について福田首相はどのように対応したか。
 (3) 臨時新東京国際空港関係閣僚協議会(以下「閣僚協」という)を、懸案事項の洗い直しと、処理を急ぐため開催するよう園田直官房長官に指示したのか。
 (4) 同席した田村運輸相から「羽田空港は、いつどんな時に事故につながるかわからないほどに危険な状態だ」と現状が報告された(一月十五日付千葉日報一面)とあるが、これは運輸省の判断か。
 (5) 右は、運輸大臣自らが羽田空港は航空法に違背して運用されていることを認めたと解釈してよいか。
 (6) 現行の便数制限(一日当たり、ピーク時当たり及び連続する三時間当たり)が安全を確保する上で不適切であれば、どのような措置(便数制限)がとられれば羽田空港は安全となるのか。
 (7) 右の措置を実行して来なかつた理由は何か。
 (8) 右の措置を実行するつもりか。
八 一月十七日に開催された閣僚協において、田村運輸相から川上知事の二十八項目要求も合わせて「開港までに解決を急ぐ懸案」についての現状の説明があり、これに対し、関係各大臣の意見が出され、年内開港の方針が再確認され、福田首相の「年内開港を実現させるため有言実行の姿勢をもつて各省庁があらゆる困難に立ち向うよう」大号令がかけられたことが報じられている(読売新聞・朝日新聞・千葉日報など)が、
 (1) 田村運輸相の説明した「開港までに解決を急ぐ懸案」とは何か。項目別に具体的に示されたい。
 (2) 右閣僚協において坊蔵相が、「金に糸目はつけない。ご不自由はおかけしません」と述べ、年内開港のため無制限に財政支出する用意のある意向を示しているが、国民経済的観点からして、坊蔵相は、一空港のもつ経済的効果についてどのような認識をもつているのか。
 (3) 成田空港の年内開港は、福田内閣の内政最優先事項であるとしてよいのか。
 (4) 年内開港の大号令を発し、必要な権限を行使し、際限もなく金を使つても、なお十一月一日に成田開港が実現出来なかつた時福田首相はどのような形で責任をとるのか。下野するつもりか。
九 右、閣僚協の記者会見で園田官房長官は、「低空での空中待機が危険きわまりないことは、私は旧軍の経験から熟知している。それが羽田では常態化しているのだから、事故が起きないのが不思議なくらい」と繰り返し強調、促進ムードをかきたてていると報じられている(一月十八日付読売新聞七面)が、
 (1) 園田長官のいう「低空」とはどの程度の高度を指すのか。
 (2) 同じく「低空での空中待機が危険」とする、その危険とはどのような内容をもつた危険性か。
 (3) 園田長官が、旧軍の経験から熟知している低空での空中待機の危険性と、航空法の規定に従つて用意された諸施設、各種サービスを前提としての、羽田空港に係わる空中待機の危険性を同一視した根拠・理由は何か。
 (4) 羽田空港で事故が起きないのが不思議なくらいとする園田長官は、羽田空港の現下の危険性を、福田内閣の一員として、航空の安全にも連帯して責任を負わねばならぬ立場から、どのような緊急措置を暫定的にしろ講ずべきであるとするのか。また何故、右措置を即刻講じようとしないのか。
十 年内開港の大号令を発した福田首相は、その実現に全力を傾けるのは当然としても、その権限の行使に当たつては、憲法や関係法令のワクの中で処理されるべきと思料するが、
 (1) 福田首相が内閣総理大臣の指名を受けるに当たり、日本国憲法と自らの職責との関係についてどのような認識・決意をもつたか。
 (2) 田中(注)榮首相(当時)も、三木武夫首相(当時)も、どんなに緊急性を有する公共事業であつても、法手続に従つてなされねばならないと公式に答弁されているが、福田首相の見解はどうか。
 (3) 現在までになされてきた成田空港建設の合憲性、適法性については、年内開港の大号令をかけるに当たり、自らの責任で認識したか。どのような内容であつたか。
 (4) 前述の大井記者は「上からの問題解決」には思いがけない落し穴があると福田首相の成田開港への対応を危ぐしているが、福田首相は、田村運輸相とともに、運輸省・公団の報告のみに依拠したまま、事の真相を知らされていないとは感じなかつたか。
 (5) 運輸省・公団とは独立に、成田空港問題の真相を究明する考えは福田首相にはないのか。
     しからば、それが福田首相の限界としてよいのか。

 右質問する。





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