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昭和五十二年十月二十六日提出
質問第八号

 合成洗剤の安全性等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年十月二十六日

提出者  島本虎三

          衆議院議長 保利 茂 殿




合成洗剤の安全性等に関する質問主意書


 合成洗剤は、その安全性についてかねてより数々の疑問が提起されており、使用方法等により人体に対する影響も生じている等、環境衛生上重大な問題となつている。
 また、合成洗剤は、生活排水となつて河川・湖沼・海域における汚濁の大きな原因となるとともに、富栄養化を促進している。
 特に、その含有するリン分は、閉鎖系水域において赤潮発生の主要な原因の一つとなつている等、公害対策並びに環境保全の面からも対策が急がれているところである。
 よつて、以下の諸点について質問する。

一 合成洗剤の毒性に関する調査研究の評価について
 1 合成洗剤の急性毒性及び慢性毒性に関し、次に掲げる研究者の著作等における有害性を認めるデータをどう評価するか。
 (1) 柳沢文徳(東京医科歯科大学難治疾患研究所疫学部門教授)
      「食品薬品公害」(有斐閣)
      「食品衛生とは何か」(医歯薬出版)
 (2) 柳沢文正(柳沢成人病研究所長)
      「日本の洗剤・その総点検増補版」(績文堂)
      「合成洗剤の科学」(学風書院)
 (3) 三上美樹(三重大学学長)
      「昭和四十八年度 中性洗剤特別研究報告書」
      「昭和四十九年度 中性洗剤特別研究報告書」
 2 合成洗剤の毒性に関しては、次に掲げる事項が研究報告されているが、これに対してどう評価するか。また、政府は、これら毒性について確認のための調査研究をすべきであると思うがどうか。
 (1) 電子顕微鏡写真による肝細胞壊死等の病変の確認
      「合成洗剤による肝障害の超微形態的研究」(合成洗剤研究会誌No.1)
        名古屋市立大学 渡 仲三 他
 (2) 動物実験における胎仔奇形及び胎仔末梢血中の白血病細胞の確認
      「昭和四十八年度 中性洗剤特別研究報告書」
      「昭和四十九年度 中性洗剤特別研究報告書」
        三重大学 三上美樹 他
 (3) バクテリアの変型
      「合成洗剤が細菌の発育に及ぼす影響」(日本公衆衛生雑誌23巻10号・24巻9号、合成洗剤研究会誌No.1)
        川崎市衛生研究所 小林 勇 他
 (4) 人間の精子変型
      「界面活性剤がヒト精子に与える影響」(合成洗剤研究会誌No.1)
        川崎市衛生研究所 小林 勇 他
 (5)血液中の赤血球細胞膜の溶解作用
      「洗剤汚染」(合同出版)
        川崎市衛生研究所 小林 勇 他
 (6)コレステロールの増加による高血圧症患者の増大
      「日本の洗剤・その総点検 増補版」(績文堂)
        柳沢成人病研究所 柳沢文正
 (7) 化学物質が界面活性剤と共存した場合における腸壁からの吸収増加による化学物質の複合影響
      「日本の洗剤・その総点検」(績文堂)
        柳沢成人病研究所 柳沢文正
 (8) いわゆる川崎病の原因としての合成洗剤による慢性アレルギー
      「小児科臨床」(22巻11号)
        名古屋大学 坂本 陽 他
 (9) 水中のLAS等による魚類の体表面の粘液分泌、エラ呼吸等の阻害、魚類の舌の味覚細胞を破壊することによる水中汚染物質摂餌の助長及びウニ卵の死滅
      「界面活性剤の魚に対する作用について」(日本水産学会誌一九七四、四十巻十二号)
        ライオン油脂 富山新一
      「Detergents; effects on the chemical senses of fish Ictaturus natalis」
      (Science. VOL 148. 1965 p1605)
        Bardach JE. Fujiya M
      「ウニ卵の発生による洗剤類の急性毒性実験」(合成洗剤研究会誌No.1)
        鳥羽市水産研究所 石川貞二
 (10)皮膚浸透性
      「洗剤の恐怖」(新時代社)
        門奈仁之
 (11)おむつかぶれ
      「近年急増した乳児寄生菌性紅斑の疫学的調査」(第三回山形県公衆衛生学会資料)
        牧野好夫 他
二 合成洗剤の安全性に関する厚生省の考え方について
 1 厚生省は、LASの安全性は確認したといわれているが、その根拠は何か。また、LAS等の許容量は、どの程度か。さらに性差、年齢差、個体差及び胎児への影響についてどう考えているか。
 2 厚生省は、科学技術庁から委託された合成洗剤に関する研究について、すべての調査研究結果及びこれに対する公式見解を明らかにすべきではないか。
三 合成洗剤等の製造、販売、使用等の規制について
 1 赤ちやんのおむつかぶれについては、全国的な実態調査を行い、その結果に基づいて、国公立施設等におけるおむつ洗いへの合成洗剤の使用禁止などの措置を早急に講ずべきであると思うがどうか。
 2 POE系、SAS、AES、アミゾール等の新型洗剤については、急性毒性、慢性毒性に関する試験、特に皮膚塗布試験により早急に安全性の確認を行うべきであると思うがどうか。
 3 寄生虫卵保有者は減少しており、また、農薬付着の野菜、果物が少なくなつてきている現状にかんがみ、野菜、果物洗いに台所用合成洗剤を使用しないよう、政府は、行成指導を行うとともに、台所用合成洗剤について早急に主婦の手荒れ等の実態調査を行い、その結果を踏まえて製造、販売の禁止等の措置を検討すべきであると思うがどうか。
 4 市販卵の大半は、卵洗浄用洗剤で洗浄処理されているが、そのため残留合成洗剤との相乗作用でコレステロールが多量に吸収され、その結果高血圧が増加しているとの説がある。政府は、卵洗浄用洗剤の規制について検討すべきであると思うがどうか。
 5 高級アルコール系等のシャンプーは、皮膚刺激性、浸透性が強く急性毒性もLASと相似しているので、早急に被害の実態を調査し、その結果を踏まえて製造販売の禁止等の措置を検討すべきであると思うがどうか。
 6 リンスに含まれる陽イオン系界面活性剤は、急性毒性が大きいので、早急に被害の実態を調査し、その結果を踏まえて製造販売の禁止等の措置を検討すべきであると思うがどうか。
 7 高級アルコール系(AS)歯みがきは、皮膚障害も激しく、口内粘膜からの吸収量も多いので早急に被害の実態を調査し、その結果を踏まえて製造販売の禁止等の措置を検討すべきであると思うがどうか。
 8 陽イオン系の界面活性剤を主成分とする柔軟剤については、「おむつ洗い不適」等の注意表示を義務づけるとともに、成分の種類及び含有量について規制を強化すべきであると思うがどうか。
 9 合成洗剤に含まれる増白剤、青味剤等は、人体に対する有害性が指摘されており、また、洗浄本来の目的に逆行するものであるので、その使用を禁止あるいは規制すべきであると思うがどうか。
 10 螢光剤については、その発ガン性が指摘されている折から、洗剤へのビルダーとしての添加及び衣料品の加工処理に使用することを禁止すべきであると思うがどうか。
 11 スプレー洗剤中の噴霧剤として使用するフロンガスは、米国では、有害とされており、また、有機溶剤及び非イオン系界面活性剤も有害で被害例も出ている。
    従つてスプレー洗剤は、当然販売禁止すべき製品と思うがどうか。
 12 家庭用品品質表示法に基づく石けん、洗剤の表示は、LAS等の混入品を石けんとして認める等の多くの問題点を含み、消費者保護基本法等の精神に逆行するものであり、早急に改正を図るべきであると思うがどうか。
 13 合成洗剤の広告及び表示について「無公害」、「人体に安全」、「手を荒らさない」などの表現は、不当表示と思われるので、このような表現は禁止すべきであると思うがどうか。
四 その他について
 1 厚生省は、合成洗剤が衣類に残留することはないとの見解のようであるが、その見解の根拠及びその基礎を明らかにされたい。
 2 レストラン、食堂、学校給食等における食器にLAS等が残留しないよう監視指導の強化を図るべきであると思うがどうか。
 3 水道水の水質基準は、ABS〇・五ppm以下となつているが、WHO勧告のABS〇・二ppm以下とすべきであると思うがどうか。
   また、その他の界面活性剤についても早急に水質基準を設定すべきであると思うがどうか。
 4 学校教育においては、教科書等で合成洗剤の有害性、使用上の注意等及び石けんの使用方法等について取り上げるべきであると思うがどうか。
 5 学校給食における現場調理員の手荒れ被害を防ぐため、政府は、石けん用洗浄機械を導入し、合成洗剤の使用を止めさせるべきであると思うがどうか。
 6 繊維の防縮、柔軟、染色等の加工処理にあたつて使用される化学薬品については、その安全性を確認したうえで製造及び販売を行わせるよう措置すべきであると思うがどうか。
 7 界面活性剤は、本来人体に有害なものであり、食品への添加、化粧品及び医薬品への使用を大幅に制限すべきであると思うがどうか。
 8 二百海里時代を迎え、沿岸漁業の振興を図るため、赤潮発生の原因物質の一つであるリンについては、合成洗剤への添加の制限、工場・事業場から排出するリンの規制等の諸対策を講じ、さらに、赤潮による漁業被害に対して十分な補償を行うべきであると思うがどうか。
 9 合成洗剤を含む生活排水については、農地への流入等により稲の減収等の被害をもたらしているといわれているが、これに対する対策をどのように考えているか。
 10 安全性に問題のある合成洗剤にかえて、石けん等代替品の開発及び普及を促進するとともに、その円滑な利用が行われるよう、洗たく機等洗浄設備の改善について、政府は援助に努めるべきであると思うがどうか。
 11 家庭廃油は、石けんの原料として再利用できるよう回収措置を講ずべきであると思うがどうか。
 12 油脂原料資源の確保を図るため、政府は、菜種等の作付けを奨励すべきであると思うがどうか。

 右質問する。





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