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昭和五十二年十一月二十五日提出
質問第二〇号

 公害健康被害補償法に基づく補償給付支給事務に対する国の交付金及び公害保健福祉事業に対する国の助成措置に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年十一月二十五日

提出者  安藤 巖

          衆議院議長 保利 茂 殿




公害健康被害補償法に基づく補償給付支給事務に対する国の交付金及び公害保健福祉事業に対する国の助成措置に関する質問主意書


 公害健康被害補償法は、その第一条で「大気の汚染又は水質の汚濁( ― 略 ― )の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償を行なうとともに、被害者の福祉に必要な事業を行なうことにより、健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図る」とその目的を明示している。
 同法の施行後、すでに三年余を経過しているにもかかわらず、大気汚染など公害による被害者は減少するどころか、むしろ増加しているのが現実である。これは、政府統計の公害患者被認定者数が昭和五十年三月末の一万九千人余から昭和五十二年三月末の五万三千人余へと二・八倍にも急増していることをみても明らかである。
 こうした実状のもとで、政府には、公害健康被害者の救済と保護を徹底し、被害者の苦しみを一刻も早く除去するための強力な施策の遂行がより一層求められている。
 そこで、以下、政府の施策について具体的に質問する。

一 公害健康被害補償法第四十七条によつて都道府県知事、補償法施行令で定められた市の長は、補償給付支給事務の処理に要する費用を支弁することとされており、同法第五十条は、その二分の一の金額について政府が交付することとしている。従つてこの交付金が実状に即して適正に交付されているかどうかは、公害行政の姿勢をみるうえで重要な指標の一つとなるものである。
  政府の補償給付支給事務費交付金交付要綱に基づく交付基準は、「職員給与費等」として、都道府県及び政令で定められた市に対して一定の金額(昭和五十一年度では二百九十万円余)に「実施主体毎に別に定める人員」を乗じた金額の二分の一を交付するとしている。政府の説明によれば、昭和五十一年度の「実施主体毎に別に定める人員」の全国合計数は第一種地域で七十九人、第二種地域を合算しても九十人であるとされている。
 (イ) 交付要綱に言う「実施主体毎に別に定める人員」数は、いつ、どういう基準に基づき、どの機関で定められたのか、明確に答弁されたい。
 (ロ) 昭和五十二年三月末では、この交付金対象一職員当たりの認定患者数は五百九十人余と増加している。政府は、この職員数で補償給付支給事務が適正かつ円滑に進めることが可能であると考えているのか、もしそうであるとしたらその根拠を示されたい。
二 このような政府の助成措置の不備によつて各地方自治体には重大な困難が生じている。
  名古屋市の場合、認定患者数は、昭和五十年三月末の二千百十七人から、五十二年九月末には、三千三百二十九人に増え、さらに増加が予想されているにもかかわらず、名古屋市に対する政府の「職員給与費等」交付金の対象職員数は、わずか四名であり、一職員当たり認定患者数は八百三十二名と全国平均を大幅に上回つている。これに対して名古屋市では、公害患者の救済、保護行政を促進するために、補償給付支給事務にたづさわる専任職員三十八名を従事させている。その給与費等の合計額は、昭和五十一年度で一億二千七百十一万円(名古屋市一般職職員の平均給与で換算)であり、政府の交付基準による対象額が四人分一千百六十二万円であるところから、国の基準単価でみても九千八百八十三万円の持ち出しとなり、深刻な事態を引き起こしている。
 (イ) 政府は、全国の都道府県及び施行令で定められた市において、実際に補償給付支給事務に従事している専任職員数を把握しているか、把握しているならば、その人数を明らかにされたい。
 (ロ) 名古屋市をはじめ関係自治体が政府の交付金対象職員数以上に独自に職員を配置していることを政府はどのように考えるか。この実数こそが、補償給付支給事務を適確、親切に遂行していくうえで必要な職員数とは考えないか、明確に答弁されたい。
 (ハ) 政府が「職員給与費」交付対象職員数を大幅に増やさない限り名古屋市の例をみるまでもなく、関係地方自治体に多大の経費負担を押し付けることになる。こうした現状を放置することは、公害患者の救済、保護を先頭に立つて進めるべき政府の責任回避であり、怠慢であると言わざるを得ない。政府としては、来年度予算をもつて補償給付支給事務に係る「職員給与費」の交付対象職員数を大幅に増員し、関係地方自治体と公害患者の強い要望にこたえるべきと考えるがどうか。そのための具体策及び実施時期を明確にされたい。
三 公害保健福祉事業が、被認定患者の苦しみを少しでもやわらげ、健康の回復と増進を図るうえで必要欠くべからざる事業であることは、何人も異論をはさまないところであり、今日、保健福祉事業の一層の充実が切望されていることもまた衆目の一致するところである。
  補償法施行令第二十五条は、保健福祉事業についてリハビリテーション事業、転地療養事業、家庭療養用具支給事業など具体的には四項目の事業を定めているが、現在、公害認定患者やその家族からは、転地療養事業に応募した者に限らず、いつでも、だれでも望む時に転地療養することのできる恒常的施設の建設を望む声が広範にのぼつている。
 (イ) 転地療養事業については、現在まで一定の改善がなされてきたが、政府としては、こうした恒常的施設の設置を含めた公害認定患者の要望をどのように考えるか、具体的対策を持つているならば伺いたい。
 (ロ) 県、市が独自に保健福祉事業としてのリハビリテーション施設を含む恒常的転地療養施設を建設し、管理、運営する場合であつても、施行令第二十五条の五号にいう「前各号に掲げるもののほか、被認定者の福祉を増進し、又は指定疾病による被害を予防するために必要な事業で環境庁長官が定めるもの」という条項を活用し、政府として適切な予算措置を講ずるべきであると考えるが政府の見解を問う。
 (ハ) 名古屋市では、昭和五十二年度から昭和五十四年度の短期三箇年計画で老人、障害者などが低額で承用できる機能回復とレクリエーションを兼ねた施設として「緑と太陽の村」建設計画を進めているが、ここに公害被認定患者用のリハビリテーション施設も併せて設置し保健福祉事業に供したいという案が検討されている。政府は、各地方自治体の独自の努力を促進する意味でもおおいに、こうした計画に助成措置を考えるべきであると思うが、その基本的見解並びに名古屋市のこうした具体案に対する対応策について明確に示されたい。

 右質問する。





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