衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和五十三年一月五日提出
質問第七号

 欠陥車及びモデル・チェンジに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年一月五日

提出者  柴田睦夫

          衆議院議長 保利 茂 殿




欠陥車及びモデル・チェンジに関する質問主意書


 周知の通り、交通安全対策基本法は、その第三条で、国民の生命、身体及び財産を保護する「国の使命」と、交通安全に関する総合施策を策定し実施する「国の責務」を規定するとともに、第六条では、車両等の製造事業者の、製造する車両等の構造、設備及び装置の安全性向上に努める「責務」を規定している。また、消費者保護基本法は、その第二条で、消費者保護に関する総合的施策を策定し、実施する「国の責務」を規定するとともに、第四条では、商品の品質向上及び消費者からの苦情の適切な処理に努めることなどの「事業者の責務」を規定している。にもかかわらず、今日なお、自動車の品質欠陥による事故や排ガス規制対策車の欠陥、車体等の錆つき、穴あき、水漏れ欠陥などが随所で問題化し、また、こうした欠陥車に対する対策をなおざりにしたままひん繁にモデル・チェンジを繰り返しているメーカーと、これを事実上野放しにしている政府の行政指導の在り方に国民の批判が高まつているのである。自動車に対するこれまでの行政の在り方は、いまや省資源、省エネルギーの立場からも、交通安全対策基本法や消費者保護基本法の立場からも、抜本的に再検討すべき時期に来ていると言わなければならない。
 そこで、こうした立場から、欠陥車問題及びモデル・チェンジ等に対する政府の今後の対策、行政指導の在り方等について政府の具体的な見解を伺うものである。

一 「長寿命車」開発構想の策定について
 (1) 周知の通り、世界の自動車先進諸国では省資源、省エネルギー、消費者保護の立場から、安全で、欠陥のない、低整備費、良燃費の自動車、つまり「長寿命車」を目指して国のイニシアチブのもとに国をあげ、メーカーをあげて研究、開発に力を入れている。昨年十一月二十五日の本院商工委員会でも指摘したように、例えば、西ドイツ政府の場合、昨年七月、ハンス・マッドヘーファ研究技術大臣がボンで記者会見し、二十年間、三十万粁を走り続けられる中級乗用車の開発構想を発表している。それによると、この「長寿命車」開発構想は、ポルシェ自動車の技術陣と西ドイツの二つの大学の科学者グループの協力によるもので、この開発が成功すると価格は二〇ないし三〇パーセント程度高くなるが、材料費は六〇パーセント、エネルギーは二〇パーセント軽減できるとのことである。また、アメリカ政府もライフタイム・ブレーキング・システムの採用により、十年又は十六万粁の間、点検・整備不要の「長寿命車」構想の実現を唱えている。さらに、オートモティブ・ニュースの一九七六年十月十一日号、一九七七年五月十六日及び二十三日号、同年八月一日及び二十九日号、オートモティブ・インダストリーの一九七六年七月十五日号、同年九月十五日号、ロード・アンド・トラックの一九七五年八月号、メタル・プログレスの一九七七年六月号、オート・カーの一九七七年三月二十六日号、エンジニアリングの一九七五年八月号、モートルの一九七六年十月二十三日号などによると、米自動車協会やフォード、ポルシェなどのメーカーが、省資源、省エネルギーの立場から「長寿命車」開発に力を入れて取り組んでいる実情が詳細に報告されている。
     政府として、こうした文献を取り寄せて、世界の自動車先進諸国の動向を研究すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
 (2) 自動車生産台数世界第二位の地位を占める我が国では、世界の自動車先進諸国のこうしたすう勢と逆行するモデル・チェンジがひん繁に繰り返され、欠陥車問題が今日なお、随所で問題化している。主務官庁たる運輸、通産両省とも、欠陥車問題解決のための有効な対策、措置を積極的に講じようとしていないだけでなく、消費者に過重な負担を強い、資源浪費につながるひん繁なモデル・チェンジを事実上黙認しているのである。
     政府として、世界の自動車先進国にならつて省資源、省エネルギー、消費者保護の立場から「長寿命車」構想を早急に策定し、そうした構想=長期ビジョンをもつて業界を指導すべきであると考えるがどうか。「長寿命車」構想策定の決意及び今後の計画、方針等を具体的に明らかにされたい。
二 定期点検整備項目の削減(低整備費化)について
 (1) オートモティブ・ニュースの昨年五月十六日及び二十三日号、オートモティブ・インダストリーの昨年七月十五日号などによると、フォード社の部品サービス部長のフィリップ・E・ベントン・ジュニアは、今後のフォード車は定期点検項目を少なくし、簡単なサービスは消費者でもできるようにするとの方針を明らかにし、その先駆車としてフォード・フェイスタの定期点検項目を、VW・ラビットが九十三項目、ホンダ・アコードが百十七項目であるのに対し、四十四項目に削減するとともに、整備費が走行八万粁でも百七十三ドル位で済むような設計を行つていることを明らかにした。また、オートモティブ・ニュースの一昨年十月十一日号や昨年八月二十九日号などによると、米環境庁は一九八〇年までに、最初の八万粁まではオイルと点火プラグの交換の外はキャブレター、点火系統等の調整不要なエンジンを開発するよう義務付ける方針を明らかにするとともに、同誌の昨年十月二十四日号によると、そのための法案を提出することを決めたとのことである。
     ところが我が国では、「世界の自動車先進国では日本だけ」と言われるような短期ごとの多項目の点検整備を義務付け、ユーザーに過重な負担を強いている。この点については、英国消費者協会発行のウイッチの小型乗用車の期間ごとの定期点検比較でも明らかである。それによると、トヨタのカローラ、日産のサニー、ブルーバード、チェリーの場合、日本国内では五千粁ごとであるのに対し、使用条件がほとんど同じであるイギリスでは一万粁ごととなつており、ホンダのシビック、アコードの場合、日本では五千粁ごとであるのに対し、イギリスでは八千粁ごととなつているのである。
     我が国においてもこうした世界の自動車先進国の例にならい、消費者保護の立場から、設計の初期の段階から信頼性と耐久性、サービス性を目標に、低整備費化を図る方向で業界を指導するとともに、それと並行して中小整備工場の経営を考慮しつつも、短期ごとの多項目にわたる点検整備項目を大幅に削減するなどの措置を講ずべきであると考えるが、この点についての政府の見解を明らかにされたい。
 (2) メーカー関係者等から聞くところによると、運輸省は一昨年暮、日本自動車工業会に対し定期点検整備項目の削減についての検討を依頼し、これに対し自工会は、二五パーセント削減案を出したとのことであるが、運輸省としてどのような検討を依頼したのか。これに対し自工会は、どのような案を出したのかについて具体的に明らかにされたい。
 (3) 運輸省は、自工会の削減案を日本整備振興連合会に持ち込んで検討させたが、削減は整備工場の収益減になるなどの理由で反発され、いまだに結論を出さずに放置しているとのことであるが、事実経過を詳細に明らかにされたい。
 (4) 「日刊自動車新聞」の昨年十二月十二日号によれば、運輸省は近く、五割前後にのぼる大幅な定期点検整備項目削減のための省令改正を行うとのことであるが、その計画の内容と今後のスケジュールを明らかにされたい。
 (5) 右省令改正に際しては、ユーザーや中小整備工場などの関係者を招致して公聴会を開くなどの措置を講ずべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
三 事業用自動車の車両故障事故について
 (1) 運輸省は、昭和二十六年の運輸省令第百四号「自動車事故報告規則」に基づいて、自動車運送事業者等から車両故障事故報告書等を提出させていながら、報告書に基づいて原因(欠陥)究明やメーカーに対する調査、指導をほとんど行つていないため、欠陥事故が多発しているという驚くべき実情である。今日なお、欠陥車が随所で問題化しているという背景に、運輸省のこうした重大な過失と怠慢があると言わなければならない。この点について、政府としてどのように認識しているかを明らかにされたい。
 (2) クラッチ・カバーの破裂事故を起こし、歩行者らにけがをさせていた「いすずBU型バス」の欠陥について運輸省は、昨年十月三十一日、メーカーからリコールの届出があつてはじめて腰をあげるというようなありさまであるが、同型バスの欠陥については、昭和四十七年十一月二十七日の兵庫県神戸市長田区における第一回目の車両故障事故報告で、クラッチ・カバー破損等に欠陥がある(推定)と報告されていたのである。メーカーも早くから欠陥に気づき、昭和四十六年にこつそりと手当をし、欠陥車を回収しないでそのまま放置していたのである。運輸省が、第一回目の事故報告又は、メーカーが手当した時の構造変更届が出された時点で本気で原因(欠陥)を究明するという姿勢で臨んでいたならば、第二、第三の欠陥事故は未然に防止できたはずである。同型バスの欠陥事故の責任は、欠陥があることを知りながらリコールもしないでひた隠しにしてきたメーカーと、これを事実上野放しにしてきた運輸行政にあると言わなければならない。
     政府として、欠陥部品の回収、交換を早急に行うよう特段の指導を行うとともに、被害者に対しては、国とメーカーの責任で完全な被害補償を行うべきであると考えるが、これらについて政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 「いすずBU型バス」のクラッチ・カバー破裂事故の事故原因について警察は、フライ・ホイールにき裂が生じて破裂したためであると推定しているが、その推定根拠を明らかにされたい。併せて、運輸省として、同型バスの車両故障事故の事故原因(欠陥)についてどのような判断(推定)をしているかを明らかにされたい。
 (4) 重大なことは、こうした「いすずBU型バス」と同じような事例が多数あるということである。昭和四十七年以降だけをとつてみても昭和四十七年=三十八件、同四十八年=三十件、同四十九年=二十二件、同五十年=二十二件にも達しているが、これらのほとんどが報告書を提出させるだけで、その後原因究明がなされないまま放置されている。しかも、昭和五十一年分については今日なお、その件数すらつかんでいないというありさまである。
     政府として、昭和四十七年以降運輸省に届出のあつた事業用自動車の車両故障事故について、各件ごとに事故概要(事故発生年月日、車名、型式、年式及び被害状況)と事故原因(推定を含む)及び報告を受けてからとつた措置(原因究明のための調査、再発防止のための行政指導等)並びにそれに対してメーカー側が講じた対策を速やかに公表すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。併せて、公表時期を明示されたい。
 (5) さらに重大なことは、これだけ随所で欠陥問題が起きているというのに、欠陥車業務専従職員が、最近になつてようやく本省に一名、東京と名古屋の陸運局に各一名が配置されているにすぎないということである。こんな貧弱な体制で、「安全対策を中心にした業界指導」ができるとは思えない。
     政府として、欠陥車業務専従職員を早急に、大幅に増員すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。予算上又は総定員法上できないというのならば、差し当たり、公正な民間機関等に委嘱するなどの暫定措置を直ちに講ずべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
四 排ガス規制対策車の品質欠陥について
 (1) 排ガス規制対策車の品質欠陥については、日本自動車ユーザー・ユニオンがトヨタ、日産系車種について告発し、メーカー側もあわてて一部の車種についてリコールを届け出るという事態があつた。私も昨年十一月二十五日の本院商工委員会で、日産のEGI仕様車に品質欠陥があることを指摘したが、その後私の指摘通り日産が十二月二日、EGI仕様車三十万台のリコールを届け出たことは周知の通りである。
     しかし、これらは品質欠陥のうちのごく一部であり、トヨタ、日産系だけでもこの外に欠陥の疑いのあるものが多数出ている。それは、トヨタでいえばスプリンター(アフター・バーニング多発)、マークII(エンジン回転のムラとアフター・バーニングが多発)、カローラ(燃費が悪く、加速がきかない、力がないとの苦情が多発)などであり、日産ではスカイライン、ブルーバード、プレジデント(EGI仕様車の電磁ポンプ不良、エンスト多発)、五十年対策車セドリック(ディストリビューター、キャブレターの品質不良によるエンスト、力不足に対する苦情が多発)、五十一年対策車サニー(燃費過大、ノッキングがひどいとの苦情が多発)、五十年対策車フェアレディZ(ときどきエンストする)、五十一年対策車シルビア(点火プラグのくすぶりで触媒が真つ赤になりエンジン・ミスを起こす、加速が悪いとの苦情が多発)などである。メーカーは、こうした欠陥があることを知りながらリコールもしないでそのまま放置している。多くのユーザーは、不当な修理費を強要されている。
     運輸省は、こうした事実を知つていると思うがどうか。
 (2) 右のような苦情や欠陥については、経済企画庁所管の国民生活センターや各都道府県の消費生活センター、通産省所管の日本消費者協会、通産省本省の消費経済課や各通産局の消費者相談窓口、運輸省自動車局整備課や各陸運事務所、行政管理庁の地方行政監察局の行政相談窓口などに多数持ち込まれているはずである。
     運輸省としては、国の各行政機関や外郭団体等に持ち込まれた苦情や相談内容等を早急に取りまとめて分析、検討するとともに、メーカーや修理工場などへの立入調査などを行つて、欠陥の有無、被害の実態を究明すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 右分析、検討、調査と並行し、「欠陥あり」と判明したものについては全体の調査結果を待つのではなく、判明した時点で直ちにリコールさせるとか、保安基準上欠陥のある構造、部品について警告書を出すとか、民法上、品質欠陥として無償修理させるとか、あるいは、保安基準上問題がなくても商品上欠陥のあるものについては、関係省庁と連絡調整して消費者保護の見地から無償交換・修理させるなどの必要な対策を講ずるようメーカーを指導すべきであると考えるが、これらについて政府の見解を具体的に明らかにされたい。
 (4) 少なくとも、私が(1)で指摘した具体的事例については、これまでのようにユーザーの告発やメーカーの通告を受けてはじめて腰をあげるということではなく、直ちに調査、指導に着手すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
 (5) 私が指摘し、メーカーがリコールを届け出た日産EGI仕様車の品質欠陥については、私が内偵調査したところによると、日産のある技術部門では相当以前から欠陥があることを確認していたとのことである。
     政府として、日産がいつ頃から欠陥があることを知つていたかを具体的に調査し、その結果を公表すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
五 自動変速機の品質欠陥について
  トヨタのマークIIやコロナ、カリーナなどの自動変速機について、「バックが入らなくて交換したが、また同じようになる」とか、「二ないし三速のシフト・アップが不能になる」、「バックへ入れると前進する」、「き裂が生じてオイル漏れがする」、「レバーを前進に入れても発進しない」、「自動変速機はどうしてこんなに早く故障するのか」、「設計、品質上の欠陥ではないか」などという苦情、トラブルが多発している。
  これらについても、メーカーや整備工場への立入検査を実施し、苦情の実態とその処理状況を検分するなど、進んで欠陥の有無を調査し、メーカーにリコールさせるとか、構造、品質欠陥についての警告書を出すなど、メーカーが必要な対策を直ちに講ずるよう積極的な指導を行うべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
六 補助ブレーキの保安基準等について
  大型トラック、バスなどで、補助ブレーキ欠陥により主ブレーキの使用ひん度が多くなり、それによるブレーキ効き不良、ライニングの異常摩耗、加熱などのトラブルもひん発している。
  政府として、大型トラック、バスの補助ブレーキ(排気ブレーキ等)について、型式認定や保安基準等においてどのような規制をしているのか、その内容を明らかにされたい。規制していないということであれば、今後の方針について政府の見解を明らかにされたい。
七 車体等の錆つき、穴あき、水漏れ欠陥について
 (1) 車体の錆つき、穴あき、水漏れ欠陥による苦情が多発している。特に、昭和四十六年以降生産のトヨタのクラウン、コロナ、セリカ系全車種、日産のセドリック、ブルーバード、ローレル、スカイライン系車種の車体の錆つき、穴あき、水漏れ欠陥が随所で問題化している。
     錆つき欠陥に対する苦情は、運輸省自動車局整備課や各陸運事務所をはじめ、通産省の消費経済課や各通産局の消費者相談窓口、各地方行政監察局の行政相談窓口、経済企画庁所管の国民生活センター、通産省所管の日本消費者協会などに多数持ち込まれている。発錆は、二年ないし一万粁走行程度以降の車に多発しているため、保証期間経過後であるということで五万円前後の修理代を負担させられているユーザーが相当数にのぼる。この間にメーカーは、一定の暫定対策を講じているが中途半端な対策であるため、再発し、モールが浮き上がり、ガラス取付部分が腐食し、衝突したらガラスがとび出す危険性のあるものもある(保安基準第十八条違反)。その被害金額は、総額五百億円以上に達するものと思われる。
     ところが政府は、国の各行政機関や外郭団体等を通じてこうした事態を知り得る立場にありながら、原因究明はもとより、被害の実態すらつかんでいないのである。消費者保護行政をあずかる経済企画庁は、「経企庁は、消費者保護行政の総合調整を任務としており、個個の商品についてはそれを所管する省庁が行う」などと言つて責任逃れをしている。運輸省も、「保安基準に係る事項については所管しているが、錆つき問題は商品性の問題であり運輸省の所管であつても、そこまで手がまわらない」と言つて何もやろうとはしていない。通産省の消費経済課などは、消費者相談室で錆つき欠陥の苦情を多数受け付けていながら、何らの対策をもとつていないだけでなく「自動車の問題は自動車課の所管であり、うちではよくわからない」などと言つている。自動車課は、「商品性という点ではうちの所管であるが、消費者保護という問題は消費経済課の所管だ。うちではよくわからない」などと言つてタライ回しをやるという始末である。
     そこで伺いたい。自動車の車体の錆つき、穴あき、水漏れ欠陥問題について、消費者保護行政を所管するのは一体どこか。その省庁名と所管局、部、課(室、官を含む)名を明らかにされたい。
 (2) メーカーや整備工場関係者などを通じて調査した結果、発錆の原因が対米輸出車に対する安全対策上、ウェザー・ストリップ方式工法をとらないで接着ウィンド方式を採用したため、塗膜面に発生する静電気と金属のモールやクリップなどにより、一種の電食作用が起きやすくなるためであるということが判明している。その証拠に、メーカーは、合成樹脂のクリップやファスナー、モール・スペーサーを採用するなどの暫定対策をひそかに講じている。また、各メーカーは、ユーザーからの苦情に対して昭和四十七年から四十八年にかけて、クレーム処理基準についての指示文書を各ディーラーに出したり、集中的に「六一〇錆対策」(日産)を実施するなど、ある程度メーカーの責任と負担で修理しているのである。
     ところが政府は、錆つき、穴あき欠陥の実態(中古車センターや駐車場に行けば、接着ウインド方式を採用している二年程度経過したトヨタ、日産系各車種に例外なく発錆している実態を見ることができる)とその原因が明らかになつているにもかかわらず、何らの措置をもとろうとはしていない。例えば、国民生活センターの場合、昭和五十一年度に受け付けた苦情、相談のうち、八月に受け付けた神奈川県のユーザー(日産ローレル)の苦情に対し、錆つきの原因が接着ウインド方式にあると推定しておきながら、再発防止のための措置については何らの手も打つていない。同センターを所管する経済企画庁も、前述の通り、責任逃れをして何らの措置をも講じていないのである。通産省にしても、運輸省にしてもこれと全く同様である。
     政府として、国の各行政機関や外郭団体などが受け付けた苦情、相談の内容とその処理状況(公的な機関に持ち込まれたものの大半は「原因不明」のものを含め、メーカーの責任と負担で修理している)についての資料を一個所に集めて集中的に分析、検討するとともに、中古車センターや駐車場などでの実態調査、メーカーや修理工場への立入調査などを行つて、速やかに欠陥の全ぼうと原因を究明すべきであると考えるが、これらについて政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 一昨年十月五日付「日刊自動車新聞」によると、オンタリオ州のフォード車所有者五名がフォード・カナダ社を相手取つて車の錆つき問題で、一昨年五月、同州上級裁判所に損害賠償訴訟を提起していたところ、同社が損害賠償計画を提出したことにより和解が成立したとのことである。その計画は、@錆の出たすべてのフォード車に最高三百ドルの修理代を負担する(総額五千万ドル)、A七七年型車に対する三百ドル相当の下取りを保証する、B七七年型車について三年間の錆止め保証計画を導入するというものである。
    一、二年経過後、走行一万粁程度で錆ついて穴があくというような品質欠陥に対して、我が国でも、メーカーと国を相手取つて損害賠償請求訴訟を提起しようとする動きがある。政府としては、訴訟が提起される前に消費者保護の立場から欠陥の実態と原因を明らかにするとともに、メーカーに対し、メーカーの責任と負担で完全なる対策と補償措置を講ずるよう指導すべきである。この錆つき、穴あき欠陥の全ぼうが明らかになつた場合、おそらく史上空前の欠陥車補償になるであろうが、政府としては、それを恐れず、消費者保護の立場から重大な決意をもつて実態と原因の究明、メーカーに対する指導を断行すべきであると考えるが、この点について政府の決意と今後の段取り等を明らかにされたい。
 (4) メーカーを指導する際には、最低限、次の各事項を実行するようにさせるべきであると考えるが、各事項ごとについて政府の見解を明らかにされたい。
   @ 各メーカーから、フォード・カナダ社が提示したような損害賠償計画を提出させること。
   A 右計画に、保証期間経過後であつても一定期間(四、五年間)についてはメーカーの責任と負担で修理するという内容を盛り込ませること。
   B 半ば強制的に修理代金を支払わされたユーザーに対し、修理代金の返還又は修理代金相当額の補償措置を講じさせること。
   C 錆つき、穴あき欠陥再発防止のための万全の対策を講じさせること。
   D 中古車については、「原因が定かでない」ということで中古車ディーラーと中古車を購入したユーザーに多大の迷惑を及ぼしているので、@の計画に、この救済対策についての具体的計画を明記させること。
 (5) 車体の錆つき、穴あき欠陥だけでなく、ラジエターなどの冷却系の発錆による穴あき、エンジンの水漏れ事故も、トヨタのコロナ、マークII、カローラ、日産のブルーバード、チェリーなどで保証期間経過後から二年程度経過の車に多発し、ユーザーは、一万六千円前後の修理代を不法不当に負担させられている。この原因についてメーカーや整備工場関係者は、「メーカーがコストを下げるため肉厚を薄くしたためである」と語つている。この種の水漏れ欠陥は二、三年前、北米に輸出しているトヨタ系全乗用車に多発し、問題になつたものであるが、我が国では今日なお、随所で問題化しているのである。
     これらについても政府として、メーカーや整備工場への立入調査などを行い、欠陥の実態と原因を究明するとともに、メーカーの責任と負担で予防対策、補償措置を講ずるようメーカーを指導すべきであると考えるが、これらについて政府の見解を明らかにされたい。併せて、保証期間経過後であつても一定期間(四、五年間)については、メーカーの責任と負担で修理するようメーカーを指導すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
八 メーカー等への立入検査の在り方の問題点について
 (1) 我が党は、ここ数年来、欠陥車問題を国会で系統的に取り上げ、政府の行政怠慢を厳しく追及してきたが、政府の自動車行政は、以上のような欠陥車問題のひん発でも明らかなように今日なお改善されていない。その背景には怠慢と国会軽視、業界べつたりの自動車行政という問題があるが、この点に関連し、道路運送車両法第百条の「報告徴収及び立入検査」の在り方について伺いたい。
     欠陥車問題で政府がまずはじめに着手しなければならない問題は、欠陥の実態とその原因を究明することでなくてはならない。そのためには、国の各行政機関や外郭団体などに持ち込まれた苦情や相談などのいわゆるクレーム情報を一個所に集めて集中的に分析、検討するとともに、メーカーなどから部内資料を提出させたり、メーカーや整備工場などを立入検査することが必要不可欠であると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
 (2) この点では現在、運輸省が、道路運送車両法第百条に基づいて行つている「報告徴収及び立入検査」には重大な欠陥、問題があると言わなければならない。各メーカーでは、欠陥対策のためどこも「クレーム情報処理システム」(トヨタ)を確立しているし、また、定期的に「クレーム処理対策会議」などを開いている。運輸省が「安全性第一の自動車行政を行う」というのであれば、「クレーム処理対策会議」で配布、検討された各メーカーの部内資料や「クレーム情報処理システム」のなかで蓄積されたディーラーからのクレーム・レポートや故障ファイル、品質変動情報、累積故障率などの資料を提出させるとか、立入検査でこれらを押さえるべきである。ところが、運輸省が現在やつている「報告徴収及び立入検査」なるものは、メーカーなどの手前勝手な説明をうのみにするだけで二重帳簿を見せられてもわからない、欠陥の実態と原因が一目りよう然になるような肝心な資料を押さえないなどという極めてズサンなものであり、ユーザーなどから「業界べつたりである」と指弾されても反論の余地はあるまい。
     そこで伺いたい。現在、運輸省が行つている「報告徴収及び立入検査」のやり方については、私が指摘したような方向で抜本的に改善すべきであり、現行法制上できないというのであれば、そのために必要な法改正を準備すべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
九 モデル・チェンジについて
 (1) 私が、本質問主意書で指摘した欠陥(自動車の品質欠陥)は、現在、随所で問題化している欠陥問題のうちのごく一部であるが、こうした欠陥を放置し、対策をなおざりにしたまま、一車種二百億円以上ともいわれる巨費を投じてひん繁にモデル・チェンジを繰り返しているメーカーとこれを事実上野放しにしている政府の行政指導の在り方に対し、国民の批判が高まつている。
     我が国の自動車が安全対策上も、耐久性という点でも、欧米車と比べ欠陥・問題があることは、国際的にも歴然としている。例えば、世界最大の米国消費者団体であるコンシュマー・ユニオンの最近のレポートによる四万八千粁又は二年ごとのサービス・コストの比較でも明らかである。それによると、対米国産車の四万八千粁又は二年ごとのサービス・コストは、トヨタ・カローラ=二百三十ドル、ホンダ・アコード=三百七十ドル、三菱・コルト=三百七十五ドル、同・アロー=三百七十五ドル、日産・チェリーF一〇=三百八十五ドル、スバル=三百十五ドルであるのに対し、VW・ゴルフ=百三十ドル、ルノー=二百三十ドル、GM・スカイラーク=百六十ドル、GM・シベット=百九十ドル、フォード・グラナダ=百ドル、同・ムスタングII=百十五ドル、クライスラー・プリムス=百十ドルというように、欧米車の二倍以上となつているのである。
     通産省は、「昭和四十九年五月にモデル・チェンジ自粛通達を出して、ひん繁に繰り返さないように指導している」などと説明しているが、通産省の自粛要請通達は全く空文化してしまつている。例えば、運輸省が提出した資料によればトヨタ、日産とも、各車種について毎年一回以上何らかのモデル・チェンジを行つている。通産省が提出した資料でも四、五年のスパンでフル・モデル・チェンジを繰り返しているのである。さらに、トヨタ自工会長の豊田英二氏やトヨタ自販の加藤社長などは、「日刊自動車新聞」紙上などで「排ガス対策をしろというのは、モデル・チェンジしろということでもある」、「何を言われても気にするな、どんどんモデル・チェンジをやる」などと言いたい放題のことを放言し、政府の指導などなんとも思つていないのである。こうした事態は、長寿命車開発に力を入れている世界の自動車先進諸国のすう勢からみて異常であり、省資源、消費者保護の立場から放置して置くわけにはいかない。
     政府としては、ベンツや三十年間モデル・チェンジなしに二千万台を生産し続けたフォルクス・ワーゲンなどの実績にならい、ひん繁なモデル・チェンジを厳しく規制するための実効ある措置を講ずるとともに、差し当たり、モデル・チェンジ規制のための新たな通達を出すべきである。この点について政府の見解を明らかにされたい。
 (2) トヨタ、日産などの各メーカーは、モデル・チェンジ計画をひた隠しにしたまま、昨年暮から今年にかけて旧型欠陥車を大量に売りさばく販売作戦を立てている。私は、昨年十一月二十五日の本院商工委員会で、メーカー関係者や部品メーカーなどを通じて数ヵ月にわたつて調査したトヨタのクラウン、カローラ、スプリンター、コロナ、センチュリー、パブリカ、セリカ・ロングノーズ、三〇B大衆車などのモデル・チェンジ(新型車を含む)計画と日産のチェリー・セダン、フェアレディ、チェリー・クーペ・バン、ローレル、シルビア、セドリック、グロリア、ブルーバード、チェリー・ハッチバックなどのモデル・チェンジ(新型車を含む)計画の詳細を示し、メーカーに対し中止するよう指導することを要求したが、これに対し政府側は、「すべてについては握していないのでコメントを差し控えたい」、「短いスパンでモデル・チェンジをするのはけしからぬ、ということもあろうかと思いますので実態に応じた調査なり、対応策を考えていきたい」(要旨)と答弁した。
     そこで伺いたい。政府として、このあと各社のモデル・チェンジ計画を調査し、中止するよう指導したかどうか、メーカーに対してどのような指導をし、どのような対応策を考えたのかを明らかにされたい。
 (3) 私がトヨタ、日産のモデル・チェンジ計画を示し、消費者保護の立場からそれを中止させるようメーカーを指導することを要求したにもかかわらず、政府は何らの指導をも行つていない。その後内偵調査したところ、メーカー首脳、特にトヨタでは、モデル・チェンジをやらなければ市場が拡大できないので、今後もモデル・チェンジをやる―などと言つている。
     政府としては、ユーザーが旧型の欠陥車をつかまされないよう、モデル・チェンジ計画についての事前連絡や型式指定申請及びメーカーや部品メーカーなどへの立入検査等を通じてつかんでいる各メーカーのモデル・チェンジ計画を直ちに公表し、省資源、消費者保護の立場から中止するよう指導するとともに、私が指摘したモデル・チェンジ予定車について、完全な防錆対策や十分な安全・公害対策が講じられているかどうかを調査し、結果を公表すべきであると考えるが、これらについて政府の見解を具体的に明らかにされたい。
 (4) 消費者の購買心をあおり、モデル・チェンジ競争に拍車をかけている各メーカーの「過剰」ともいえるテレビ、ラジオ、新聞等を通じてのモデル・チェンジ車の宣伝は厳しく規制する必要がある。政府として、そのための実効ある措置を速やかに講ずべきであると考えるが、この点について政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.