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昭和五十三年五月十三日提出
質問第三六号

 沖繩県の雇用及び失業問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年五月十三日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 保利 茂 殿




沖繩県の雇用及び失業問題に関する質問主意書


 本年四月二十八日に総理府統計局が発表した三月分の統計によると、沖繩県の完全失業者は三万二千人、完全失業率七・一パーセントを記録し、全国平均の約三倍という高い数字を示している。
 失業者の大半は、三十五歳未満の若年層と四十歳以上から五十四歳未満の中高年層で、なかでも若年層は全体の失業者の半分を占めている。
 本年二月の沖繩県全体の求職倍率も一〇・二倍に達しており、例えば那覇市の職業安定所では、求職者一万二百四十四人のうち就職できたのはわずか三百七十六人(うち県外就職二百五十九人)という状態である。
 言うまでもなく、かかる失業の深刻な事態は今に始まつたことではなく昭和四十七年の沖繩復帰から今日までなんら解決されることなく一貫して続いており、失業が「慢性化」さえしている。
 しかも、沖繩県は海洋博後の需要落込み、石油ショック特に最近の円高など長期不況の影響を最も強く受け、中小企業の倒産も相次ぐなど雇用、失業情勢は一層悪化している。
 沖繩県における雇用、失業対策は緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 沖繩県の失業の原因は、何よりもまずアメリカが沖繩基地をアジア最大の軍事拠点と位置付け、その再編、合理化を進めるため基地労働者を一方的に大量解雇してきたことにある。
  このことは、復帰から昨年末までの軍解雇者数が一万四百七十八人に達していることをみても明らかである。
  しかも、もともと沖繩県の経済は、二十七年間にわたる異民族の軍事支配のもとで第三次産業中心のいびつな形にとどめられてきたうえ、復帰後六年を経過した今も産業活動にとつて欠かすことのできない多くの土地や財産が米軍基地に奪われているのである。
  さらに、これに加えて政府が、復帰後県民本位の産業、経済の施策を十分に講じてこなかつたために農業や第二次産業の振興が著しく遅れ、県内の雇用機会を極めて少なくしていると考える。
  ここに沖繩県の失業を深刻にし「慢性化」させている根本原因があると思うが、このことについての見解を示されたい。
二 失業多発地域である沖繩県において、とりあえず政府は、失業手当の新設等、失業給付の改善による失業者の生活保障及び公共事業の拡大、失業対策諸事業の統合、拡充により失業者の就労機会の拡大を図るなど緊急対策を講ずべきである。
  このことについて、本年一月二十五日の衆議院本会議で、私の質問に対して藤井労働大臣は「沖繩等の失業多発地帯におきましては、各種の援護措置の活用を図りつつ、広域職業紹介を実施するなどにより、失業者の再就職の促進を図つておるところでありますが、さらに中高年齢者を雇い入れる事業主に対しては、(略)新しい助成措置によつて雇用機会の拡大を図りたい」と答弁している。
  「中高年齢者を雇用する事業主に対する助成措置」のほかは、これまでと比べ特に目新しい施策は講じられていないように思うが、これで雇用拡大が効果的に図れると考えているのか。
三 本年一月二十五日の衆議院本会議で、また私の同じ質問に対して藤井労働大臣は「公共事業については、その法律に基づく失業者吸収率制度を、沖繩においては六〇パーセント、積極的に活用する等によつて、失業者の雇用機会の拡大を図りたい」と答弁している。
  確かに昭和四十六年十二月に沖繩振興開発特別措置法が制定され、特に深刻な沖繩県の雇用、失業問題に対処するため、同法第三十九条には、沖繩振興開発計画に基づく事業などに就労する労働者のうち無技能労働者六〇パーセントの失業者を使用するという、いわゆる「失業者吸収率制度」のことが規定されている。
  この制度の積極的な活用を図り、失業者の就労の機会を確保することは極めて重要なことである。
  しかしながら、昨年の十一月十八日の衆議院沖繩及び北方問題に関する特別委員会では、労働省の谷口労働大臣官房審議官は「六〇パーセントと決まつているけれど、これがほとんど活用されていない」と答えている。
  この制度が発足してからすでに六年を経過し、国会でも何度か指摘されてきたにもかかわらず活用されてこなかつたというのは何故か、その理由を具体的に明らかにされたい。
  積極的な活用を図るため、これまでどのような具体的措置を講じたのか。
四 沖繩県労働商工部では、この「失業者吸収率制度」が活用できていない問題点として、@公共職業安定所に対して公共事業を施行する業者が提出を義務付けられている使用労働者数などを記載した「施行通知書」の提出状況が悪い。A職業安定所と発注機関(国、県、市町村など)の連絡が十分でない。B施行業者の機械化などによつて一工事当たりの無技能労働者の使用数が減少しているうえ、不況の反映で手持労働者が増加しているという趣旨の指摘をしている。
  このことについて同様の認識を持つているのか。
  また、施行業者に手持労働者が増加し失業者の吸収率が悪くなつているとするならば、これに対してはどういう具体的な施策を講ずるのか。
五 「沖繩振興開発特別措置法に基づく就職促進手当の支給等に関する省令」第二条で、国又は地方公共団体等(その事業を施行する者も含む。)は、事業開始前(緊急の場合は事業開始後)に事業に使用すべき労働者数を職種別に公共職業安定所に通知することと義務付けられている。
  にもかかわらず「使用労働者数」の通知状況が悪いというのは、所管省の指導、監督が徹底されていなかつたということになるが、どうか。
六 「失業者吸収率制度」の積極的活用を図るためには、職員の適切な配置を含む必要な態勢をとり、指導、監督を強めるとともに、公共職業安定所と国及び地方公共団体など発注機関との連絡を十分とるべきである。
  また、施行業者が公共職業安定所に対し「使用労働者数」を通知するだけでなく、国及び地方公共団体などの発注機関も施行業者との契約時に当該業者の「使用労働者数」を把握して、公共職業安定所へ通知するなどの措置を講ずべきと思うが、どうか。
七 沖繩県においては、失業者の就業の機会を確保するためにも公共事業の拡大を図つていくことは、特に重要だと考える。
  公共事業の在り方については県民の福祉、生活向上に役立つ雇用効果(失業吸収率)の高い事業で、しかも全国と比べて立遅れの著しい医療施設、学校、保育所、身心障害児のための福祉施設などの拡充、整備事業にも今後重点を置くべきと思うが、どうか。
  また、下水道の建設、河川の改修、公園、排水溝や生活道路の整備、低家賃公共住宅の建設、治山治水、造林、水資源開発など生活密着型の公共事業をさらに拡大していくべきと思うが、具体的な方針を明らかにされたい。
八 昭和五十三年度の沖繩県交通方法変更関係予算は、総額で百三十八億六千三百万円である(昭和四十九年度から五十三年度までの総額百九十三億三千六百万円)。
  このうち交通方法変更に伴う公共事業などについても失業者の吸収、県内企業への優先的発注などの面で十分な措置を講ずべきである。
  昨年十一月十八日の衆議院沖繩及び北方問題に関する特別委員会でも、沖繩開発庁の亀谷総務局長は「できるだけ地場労働雇用に資するよう執行率をあげている」と答弁している。
  失業者吸収、県内企業への優先的発注という点で、どのような具体的措置を講じてきたのか。
  その結果、どういう効果をあげてきたのか。
九 公共事業の発注については失業、雇用対策の面からも県内企業に資するよう優先して行うべきである。
  例えば沖繩県当局が行つた土木・建設関係の昭和五十一年度県内、県外別発注状況は、全体の発注件数が八百六十二件で、そのうち県内企業八百三十七件、県外企業二十五件と九〇パーセント以上を県内企業に発注している。
  ところが昭和五十二年度上半期で国が行つた公共事業は、県外企業が五〇・八パーセント、公団、公社にいたつては県外企業が七六・三パーセントということである。
  もし、このことが事実ならば、公共事業を拡大してもそれが必ずしも県内企業に資するということになつていないことになる。
  現在、公共事業の発注状況はどうなつているのか。
  県内企業に優先的に発注されているのかどうか、明らかにされたい。
  もし、そのとおり発注されていないとすれば、その理由は何か。
  また、それを解決するためどういう施策を講ずるつもりか。
十 国が行う公共事業については、大半が本土大企業や地元大企業に発注されているという批判もある。
  従つて、公共事業については県内の中小零細企業に対しても発注すべきである。
  中小零細企業の受注の機会を確保するため分割入札、共同受注などの方法を講じ仕事を保障すべきである。
  このことに関しては、本年二月二十八日の衆議院沖繩及び北方問題に関する特別委員会で、沖繩開発庁の美野輪振興局長は「中小企業の育成という観点からも(略)、できるだけその発注を拡大するということに努力してきた」と答えているが、これまで具体的にどういう措置を講じて努力してきたのか。
  その結果どういう効果をあげたのか、今後さらにどういう措置を講じていくのか。
十一 沖繩県労働商工部の資料によると、昭和五十一年度の国及び地方公共団体等の公共事業で吸収された失業者数は、わずかに千八百三十四人(昭和五十一年度月平均の完全失業者数二万六千人)である。
   従つて、できるだけ多くの失業者に就業の機会を確保するためには、「失業者吸収率制度」の活用、公共事業の拡大と同時に失業者が安定した雇用につくまでの間、失業者対策を目的とした「公的就労事業」をおこしていくことが極めて重要だと考える。
   その意味においても、沖繩振興開発特別措置法第三十八条の「労働大臣は沖繩県知事の意見を聞いて(略)就業の機会の増大を図るための事業の実施その他必要な事項に関する計画を作成し、その計画に基づき必要な措置を講ずるものとする。」とある規定を踏まえて、「就業の機会の増大を図るため」のなんらかの事業を実施すべきと思うが、どうか。
   このために、失業者の要求や実態の把握はもとより、沖繩県においてはどういう種類の事業が適切かつ可能かということ、また、その実施方法等についても沖繩県当局をはじめ地元関係者の意見を聴取するなどの事前調査を実施すべきだと考えるが、どうか。
十二 沖繩振興開発特別措置法第三十八条の規定があるにもかかわらず、昭和四十七年から今日まで「就業の機会を図るための事業」については、なんら実施されてこなかつた。
   昭和五十一年五月、労働省は同法第三十八条に基づき「沖繩県の労働者の職業安定のための計画」を遅ればせながら策定しているが、その計画にさえ「就労の機会を図るための事業」の実施については全く触れていない。
   沖繩振興開発特別措置法第三十八条に基づく「就業の機会を図るための事業」について、これまで実施はもとより計画さえ策定しなかつた理由について明らかにされたい。
十三 沖繩県全体の完全失業者のうち四十歳から五十四歳未満の中高年齢者は、本年二月で二〇・八三パーセントを占めており、その多くは軍解雇者である。中高年齢の失業者については、県内就職はもとより年齢や生活要件など不利な条件も重なつて県外への就職も容易でなく、再就職が極めて困難な状態にある。
   特に中高年齢者の雇用については、昭和四十六年五月十八日の参議院社会労働委員会において「沖繩の特殊事情をも配慮しつつ、中高年齢者等の雇用及び福祉につき遺憾なきを期すること」との附帯決議も採択されている。
   中高年齢失業者に対しては、就職促進のための各種援護措置の改善をはじめ職業紹介、職業訓練の拡充、強化などの対策を進める必要がある。
   これまでどのような措置を講じてきたのか、特に職業訓練についてはその内容も明らかにされたい。
   今後、さらにどのような対策を考えているのか。
   失業者全体のなかには県内で就職を希望する人も多いので、職業訓練については沖繩県の雇用条件など実情に即した、しかも将来農業や第二次産業の振興に伴いそれに従事できる内容のものも十分に配慮していくべきと考えるが、どうか。
十四 中高年齢失業者に対しても「就業の機会を確保していくための事業の実施」は緊急を要すと考える。
   沖繩県の場合、沖繩振興開発特別措置法第三十八条及び同法第三十九条の制定によつて、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」第二十一条(特定地域における措置として中高年齢失業者に対する就業の機会を増大するための計画、実施など)及び同法第二十二条(公共事業に対する国庫補助及び中高年齢失業者の吸収率制度)の適用を除外されている。
   にもかかわらず沖繩振興特別措置法第三十八条に基づく「就業の機会を拡大するための事業」は、これまで一度も実施されたことがないのである。
   このために沖繩県の中高年齢失業者は、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」第二十一条の適用を除外されたうえ、沖繩振興開発特別措置法第三十八条に基づく事業の実施も行われず、就労の機会も確保されないまま困難な状況に置かれていると指摘せざるを得ない。
   中高年齢失業者に対して就業の機会を確保していくということについて、どう考えているか、明確に答えられたい。
十五 雇用機会の拡大を図るために広域職業紹介に力を注いでいるようだが、「Uターン現象」もあつてあまり実効をあげていないようである。
   沖繩県の資料によると昭和五十一年度の県外常用就職者は五千四百九十五人で、同年度に「Uターン」した者は二千八百八十八人という状況である。
   しかも「Uターン」者のうち四六・九パーセントは「県内で働きたい」との希望を持つている。
   現在の状況のもとで、広域職業紹介を進めることはある程度必要だと考えるが、何よりも県内で就職できる条件をできるだけ早くつくることが大前提だと思うが、どうか。
   また、県外への就職が定着しないということについて受入れ側の企業の対応にも問題があるとの指摘も聞いている。定着しない要因がどこにあると考えているのか。県外への就職を図るために、今後どのような措置を具体的に講ずるつもりか。
十六 昭和五十二年十一月十八日の衆議院沖繩及び北方問題に関する特別委員会で、沖繩開発庁の亀谷総務局長は「(沖繩県の)雇用問題の基本は、産業基盤を整備し、雇用機会を確保することだ」と述べている。
   しかし、沖繩総合開発審議会総務部会が出した昭和五十一年十月の「沖繩振興開発中期展望」では、「県内での雇用拡大は産業振興なくしては考えられない」と指摘しながらも、産業振興による雇用拡大は相当の期間を必要とし、沖繩振興開発計画の後期五年では見通しは極めて暗いという趣旨の判断を下している。
   従つて、これまでの雇用、失業対策を続けていくだけでは、沖繩県の深刻な失業は解決されず、少なくともさらに五年間今日のような事態が続くということが予想されるのではないのか。
   仮にそうだとすると、復帰後十年間もこの異常とも言うべき失業情勢が続くということになる。
   実際に予想されるこの事態についてどういう認識を持つているのか。
十七 沖繩県の深刻な失業を根本的に打開するためにも、これまで指摘した点の改善も含め雇用、失業の緊急対策を講ずるとともに、雇用、失業対策の面からも沖繩県の農業、漁業、伝統工芸産業をはじめとする工業、観光業の県民本位の本格的な振興を図るべきと考える。
   このことについてこれまでどのような施策を講じてきたのか、また、このことに関する今後の基本的な考えと方針を明らかにされたい。
十八 昭和四十七年十二月に政府が策定した沖繩振興開発計画のなかで、交通、通信体系の整備については、水資源開発とともにとくに重視して位置付けている。
   その交通、通信体系の整備の中核として、沖繩県に国鉄の導入を図るべきと考える。
   国鉄の導入は沖繩振興開発の背骨をなすものであり、生活基盤と産業基盤を確立していくうえで、重要な意味をなすものである。
   しかも、沖繩県民のほとんどの人が導入を強く望んでおり、そのための鉄道建設事業は長期にわたり相当多くの失業者を吸収できる効果を持つと考える。
   このことについて、昭和五十年二月二十六日の衆議院予算委員会第五分科会で私の質問に対して、当時の木村運輸大臣は「どういう交通システムで、経営主体はどういうのがいいのかということをよく調査してかかるのが先決である。(略)沖繩における陸上の交通機関としては、道路だけでは将来を考えた場合不十分であるので検討していきたい」旨の答弁を行つている。
   さらに同じ私の質問に対して、昨年二月四日の衆議院本会議で福田総理大臣は「慎重に検討したい」と答弁している。
   しかしながら、その後において調査はもとより検討したということも見られないようだが、どうなつているのか経過を含め明らかにされたい。
   沖繩県に国鉄を導入するという方向で調査、検討すべきだと考えるが、どうか。また、その意思はあるか。
十九 共産党は、向こう五年間に少なくとも一兆円を超える財源を「沖繩復興特別資金」として国が保障し、産業振興を本格的に図るべしとの提案をしている。
   このことについて検討する用意があるか。

 右質問する。





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