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昭和五十三年六月十四日提出
質問第五四号

 国選弁護制度の改善に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年六月十四日

提出者  加地 和

          衆議院議長 保利 茂 殿




国選弁護制度の改善に関する質問主意書


 刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案(以下「特例法」という。)が現在、国会で審議中である。連合赤軍事件のような世間を騒がせた大事件の判決が、現在の裁判制度を前提にし、一ヵ月に二回程度の開廷だと第一審判決が下されるまでだけでも三十年位の期間を要すると言われている。三十年も日時が経過すると、証人も記憶が薄れたり、死亡したりして正しい判決が下されるかどうかもわからない。また、裁判の教育的効果から考えても、どんな大事件でも二年か、三年の期間で判決が下されることを多くの国民は望んでいると思う。そうすると、大事件の場合だと一週間に二日間位は公判を開かねばならなくなるであろう。これの準備のために、毎日、弁護士は膨大な記録を読み、メモを取り、頭の中へ叩き込み、関係者と打合せ等をしなければならなくなり、一週間のうち、ほとんど大半の時間を大事件のために費やさねばならなくなる。大事件の審理促進に協力しようとすれば、担当弁護士は他の事件の依頼をほとんど全部断らねばならず、弁護士は生活して行くことができない。
 弁護人抜き裁判法が成立して、審理は促進されても、弁護士が十分に準備できない内容の貧弱な裁判では、民主々義国家ではない。迅速、かつ、充実した裁判を実現するには、特例法を作るだけでなく、国選弁護制度の充実と発展を図ることが不可欠だと思う。
 そこで、次の事項について政府の見解を求める。

一 弁護士の生活の全部又はほとんどの精力を大事件の国選弁護のために費やし、他の事件の収入がほとんど途絶えるような場合には、国選弁護料を大幅にアップしなければ、大事件の国選弁護人となる者がないのではないか。
二 現在、国選弁護料は、刑事訴訟費用等に関する法律第八条の「刑事訴訟法第三十八条第二項の規定による弁護人に支給すべき報酬の額は、裁判所が相当と認めるところによる。」という規定を根拠として定められている。
 1 大事件の国選弁護を引き受けるか、どうかの場合に、当該弁護士としては、この事件を引き受ければどの位時間を要するのか、この事件を責任を持つて担当するとすれば、他の事件をどの位依頼があつても断らなければならないのか、そのためにどの程度減収になるのか、これだけの犠牲を払いながらこの国選弁護事件を引き受ければ、いつ、どれだけの報酬を、どんな基準で貰えるのかわからなければ、引き受ける人はいないのではないか。国選弁護についても、着手金の支払い、毎月の支払い、明確な計算基準を定めるべきであると思うがいかがか。
 2 時として弁護士は、依頼者のために裁判官と争うこともある。ところが、争いの相手方である裁判官が一方的に弁護士の報酬を何の明確な基準もなく定める現在の制度は、改善を要するのではないか。(公務員の場合には人事院、労働者の場合には労働組合の力を借りて、働く者の意見は何かの形で賃金決定に反映できるようになつているが、国選弁護人の場合のみ、働く立場の者の意見が何も反映されないのはおかしい。)
 3 報酬の額が国選弁護人にとつて不満の場合に、控訴や、上告によつて争う手段がないのも、制度として不備ではないか。
三 昭和二十三年には裁判官俸給(判事三号俸)が月一二、〇〇〇円、国選弁護料報酬基準額(地裁開廷三回)は一、二〇〇円であつた。昭和五十三年四月には裁判官俸給(判事三号俸)が月六五三、〇〇〇円、国選弁護料報酬基準額(地裁開廷三回)は三三、三〇〇円、同じ法曹でありながら裁判官の給料の上昇に比して、国選弁護料の上昇が極めて悪いのは何故か。
四 法務省、最高裁判所の努力にもかかわらず、他の省と比べ予算の獲得が極めて少なく、そのシワ寄せを国選弁護人に与え、かつ、正しい者を裁判で泣き寝入りにさせている。国選弁護料は、地方裁判所事件で開廷三回の場合には、裁判官俸給(判事三号俸)の一〇パーセント程度と定める等して、政治的圧力の大小によつて、法治国家として必要な経費まで削減されてはならないのではないか。大蔵省は、国選弁護料予算の決定は、何を基準にして行つてきたのか。
五 特例法のみが成立し、一から四までに述べたような国選弁護の改善がなされなければ、感情的に裁判官が公判期日のみを一週間に二日位と決め、弁護士がそれの準備に時間的、経済的に対応し得ず、形骸化された裁判になつてしまうのではないか。特例法の制定以外に国選弁護制度の改善について政府は妙案を考えているのか。

 右質問する。





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