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昭和五十八年四月十五日提出
質問第一九号

 老人保健法の施行に伴う老人の歯科治療及び歯科診療報酬改定に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年四月十五日

提出者  浦井 洋

          衆議院議長 福田 一 殿




老人保健法の施行に伴う老人の歯科治療及び歯科診療報酬改定に関する質問主意書


 本年二月一日の老人保健法の施行に伴い、あらたに「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」を公布し、七十歳以上の老人に対する医療費は特別扱いすることとなつた。
 これは、老人の歯科治療に差別を持ち込み、医師が必要とする治療を制限するものとなつている。
 我が国の老人歯科医療費は、国民医療費の〇・三八%を占めるに過ぎず、西ドイツ、アメリカの四分の一である。
 このことは、老人の歯科治療の不十分さを物語つており、老人の残り少ない自然歯を大切にし、老人の特性に見合つた治療ができるものにすることが求められている。
 また、同時に行われた健康保険法の診療報酬の改定で、歯科材料として安全性等で種々問題点が指摘されていた鋳造用ニッケルクロム合金が保険に導入されたが、これは歯科治療の水準を低下させるものである。
 国民がよりよい歯科治療を保険で受けられるようにすることこそが求められているにもかかわらず、今回の診療報酬の改定をみると多くの問題点を持つており、改善が必要と考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 老人用歯科診療報酬の改定について
 1 有床義歯指導料が新設されたが、検査及び処置行為を含めた指導料としたことにより、患者のため義歯装着後の調整回数を増やすほど不採算となる。検査及び処置行為とは別個に指導料が算定できるようにすべきではないか。
 2 今回新設された生活指導管理料(二〇〇点)の主病から歯槽膿漏症が除かれ、口腔疾患指導料(五〇点)に含まれることとなつている。そのため従来の四分の一に減額されているばかりか、歯槽膿漏症に必要なポケット測定検査(七五点)、歯間離開度検査(七〇点)等までも口腔疾患指導料に含めている。
   老人が年をとるに伴つて自然歯は少なくなつていく。それだけに老人の歯槽膿漏症の治療は大切であるのに、今回の改定でかえつて老人は歯槽膿漏症の治療を受けにくくなつている。老人が歯槽膿漏症の指導や検査が十分受けられるよう改善すべきではないか。
二 鋳造用ニッケルクロム合金の保険導入について
 1 今回の診療報酬の改定で、歯冠修復、欠損補綴のための歯科材料として、鋳造用ニッケルクロム合金が保険に導入されている。
   「健康保険の診療報酬改正の経過及び趣旨」で、緊急性の高いものについて改善を図るとしているが、同合金の保険導入にどのような緊急性があつたのか。
 2 同合金の保険導入を中医協で決定する前日に、日本歯科医師会の歯科材料担当の常務理事が同合金の問題点を指摘し、「次期の医療費改定まで充分に検討すべきであり時期尚早と考える」という意見を公表している。同合金の保険導入の経過が不明瞭で唐突過ぎると思われるが、経過を詳しく報告願いたい。
 3 同合金の医学的安全性、適格性について多くの議論があるところであるが、保険導入に当たつて安全性等の審査はどのように行つたのか。
   また、薬事法による同合金の承認に当たつて薬事審議会で審議されたのか。
 4 ニッケルの発がん性及びニッケル合金によるアレルギーについてどのように考えているか。
   米国歯科医師会は、ニッケルを含有する合金についてはニッケルを含有していることを明記し、ニッケルに対しアレルギーを起こす人には使用すべきでないことを明らかにするよう義務付けている。日本でもこのような義務付けをする考えはないか。
 5 ニッケルクロム合金には、ベリリュームが、表示されているいないにかかわらず二%以下の範囲で含有されている。
   このベリリュームは、呼吸器系に炎症等の障害を起こすことが知られており、ニッケルクロム合金の溶融時に発生する蒸気、ガスあるいは切削研磨時にでる粉塵等により障害が発生するといわれている。この点についてどのように考えているか。
 6 スウェーデンでは、一%以上ニッケルを含有する歯科用合金の使用は一九七四年以降禁止したのを始め、ヨーロッパの各国で同合金の使用を禁止してきていることについてどう考えているか。
 7 日本補綴歯科学会歯科用金属規格委員会が作成した「歯科用金属の規格並びに銅合金に関する見解」という報告書では、「戦時中以来惰性的に継続してきた安易な代用合金観を厳正に反省し、再検討すべきである。インレーおよびクラウンブリッジ用としては金銀パラジウム合金を最低限とすべきである」と述べている。
   今回同合金の保険導入により、保険による歯科治療の水準を低下させるものと考えるがどうか。
 8 将来、金合金や金銀パラジウム合金を保険適用の歯科材料からはずしていくことはないか。
   また、金価格の動向に応じて適正な価格に機敏に改定しないと、金銀パラジウム合金等は事実上使われなくなる恐れがある。この点二ついてどのように対応するつもりか。
三 「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」及び「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」を直ちに再検討し、歯科治療の必要な老人が安心して治療が受けられる診療報酬とする必要があると思うがどうか。

 右質問する。





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