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昭和五十八年七月二十三日提出質問第一五号
米軍用ホテル提供に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十八年七月二十三日
衆議院議長 福田 一 殿
米軍用ホテル提供に関する質問主意書
政府は七月一日の閣議で、米軍用宿舎・山王ホテル(東京・千代田区)の返還と引きかえに安立電気の建設による新ホテル(東京・港区)の米軍提供を決め、続いて十四日、その提供に伴う日米政府間協定(代表者、日本=北村外務省北米局長、米=バーカー在日米軍参謀長)を締結した。
新米軍用ホテル(名称ニューサンノー米軍センター)は、敷地七千二百平方メートル、建物一万八千平方メートル、地上七階、部屋数百五十室といわれ、約二ヵ月後に正式オープンの運びと説明されている。
この政府の一連の措置に対して、港区議会が一九七八年十二月の建設反対の請願採択、七九年十一月の「区民との十分な話し合いがつくまで着工を見合わせる」等の意見書採択に続いて、七月四日、「地元住民の納得を得るまで施設の開設を見合わせよ」との要望書を全会一致で採択したことに示されるように、地元住民は強い不信と批判の声を表明している。これは軍事施設の設置に伴う地域環境の激変、風紀悪化、犯罪多発、さらには戦争に巻き込まれる恐れ等を心配し、「環境を守れ」と設置反対運動を続けてきた地元住民の納得、合意を政府がなんら得ないまま、建設を強行し、そのうえ一方的に提供決定を重ねたからにほかならない。
そもそも新軍事施設地は世上、高級住宅地といわれるような閑静な住宅街にあり、聖心女子学園など十六校に及ぶ学校や児童施設が立ち並ぶ文教地域でもある。とりわけ同施設地の周囲百メートル以内には慶応幼稚舎など三つの児童施設があり、このような場合、日本の旅館業法はホテルの開設を許可しないケースがあることを明記している。それにもかかわらず政府が同地を米側に提供したのは、米側の@もより駅から徒歩で十分Aヘリポートから車で十五分Bアメリカ大使館に近いこと、という東京の住宅・交通事情や環境をまつたく無視した三条件に唯々諾々と従つたからにほかならない。
こうした立地条件に根本的な欠陥をもち、地元住民の理解と合意を得ていない施設の提供は、政府の度し難い対米最優先、国民不在の姿勢をあらためて浮き彫りにするだけで、直ちにその提供をとりやめるべきである。そこで以下の点につき質問する。
二 新施設の建築確認をおろした東京都の決定に対してはその後住民から「建築確認は違法」との審査請求が行われ、現在、都の建築審査会で審査が続行中である。建築審査の結論がでていないのにもかかわらず、外国軍隊に施設を提供するのは、審査結果いかんによつて重大な外交・政治問題を招きかねないと考えるが、どうか。
三 政府の窓口、防衛施設庁は、「地元の安全・環境対策は地元と連絡協議会をつくつてそこで具体化したい」と述べている。同連絡協議会の規模、構成メンバー、そのうち住民代表の人数をどのくらいと考えているか。また、連絡協議会が設置されなかつたときは安全・環境対策をどう進めるのか、政府は自主的に安全・環境対策をとる意思をもつているのかどうか。
四 新施設の管理、運営に責任をもつ部隊名を明らかにされたい。従来、山王ホテルに置かれていた在日米軍広報部は新施設に設置されるのか、また、施設内部のバーやスナックなど娯楽関係の設備名も明らかにされたい。
五 新施設では、山王ホテルで行われていた日米合同委員会を開催する予定があるのかどうか。
六 政府と新施設所有者安立電気との賃貸契約の期間及び賃借料を示されたい。
右質問する。