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昭和五十八年十一月二十五日提出
質問第三一号

 沖縄県北部ダムでの米軍演習に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十一月二十五日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 福田 一 殿




沖縄県北部ダムでの米軍演習に関する質問主意書


 沖縄県民の飲料水、生活用水の大部分を賄う沖縄県本島北部の福地、新川、安波、普久川の四ダムが今年の十月、すべて完成した。
 ダム工事終了とともに、現地の那覇防衛施設局と沖縄総合事務局が、ダムの周辺や貯水池を米軍の演習施設として提供するための具体的な検討に入つていることが明らかにされた。
 これに対して県民は、強い不安と怒りを表明している。
 この問題は政府が、一九七四年一月三十日の日米安保協議委員会と同年二月二十一日の日米合同委員会で、米軍北部・安波訓練場内につくられる四つのダムを米軍と共同使用することを認め、ダムの周辺あるいはダム貯水池での米軍の浮き橋の建設、水質浄化訓練、応急渡河、小舟艇操作、波のり、水陸両用車訓練、ヘリコプターによる空海救助訓練の演習に合意したことにある。
 一九七四年四月、広範な県民が憤激をこめてダムでの米軍演習を撤回せよと反対運動に立ち上がつたのは当然のことである。
 百十五万県民の生命の源であるこれらのダムを、こともあろうに米軍の軍事訓練のために使用させるなど言語道断である。
 ダムの貯水池及びその周辺での米軍の演習、訓練が県民の水資源を汚染し、県民の生活と生命に重大な影響を与える危険があることは明白である。
 しかも、かかる日米合意が基地の一部返還のみせかけで、北部四ダムをアジア地域では唯一の米海兵隊の湖上演習場にしたてあげようとするものであり、断じて容認することはできない。
 従つて、次の事項について質問する。

一 政府は北部四ダムでの米軍演習について取り決めた日米合同委員会の不当な合意事項を直ちに撤回し、沖縄県民の生活と安全を確保すべきである。明確な見解を求める。
二 このダムを演習場にするという米海兵隊は、絶えずその一部が第七艦隊に乗り込み、アジア各地で上陸演習などしており、伝染病を持ち込む危険性が非常に強い部隊である。
  また、同部隊の演習の際、機械油の流出その他で汚染されないという保障は全くない。
  海兵隊の演習を認めて、貯水池の汚染をどうして防止できるというのか。
三 昭和四十九年五月七日の衆議院内閣委員会で、私の質問に対して当時の外務省の大河原アメリカ局長は、米軍がダム貯水池で訓練を行うについて、「水中爆破は一切行なわない、恒久建造物はつくらない、仮設建造物は使用後、直ちに撤去する、貯水池の汚染防止に万全の措置を講ずる」との使用条件を付して、水が飲料として使われる上に支障を来すことがないようにすると答弁している。
  この「使用条件」で汚染を防止し、水質保全、衛生的な安全を完全に確保できると本当に考えているのか。
  「貯水池の汚染防止に万全の措置を講ずる」とあるが、具体的には何か。
四 一九八一年三月、私を含む日本共産党沖縄基地調査団は、北部四ダムの一つ福地ダム上流で、米海兵隊がひそかに湖上訓練を行つていた事実を明らかにした。
  私は、しかもその部隊がダムの湖岸や集水地域内に構築物や仮設便所を建て、空きかん等のごみクズを放置していた現場写真を提示して追及した(昭和五十六年三月三十日衆議院外務委員会、同年六月五日質問主意書)。
  この時、政府は調査を約束し、その後「汚染につながる訓練を行つたということは承知していない」と全く事実と反する答弁を行つている(前記質問主意書に対する昭和五十六年六月十九日の政府答弁書)。
  私が指摘した事実は、政府が再三にわたつて強調する「使用条件」が水源地の汚染防止、その周辺地域の清潔保持にとつて全く意味をなしていないということを示したものだ。
 1 飲料水を供給するダムの湖岸や集水地域で、構築物を建てたり簡易便所やごみクズを放置したりすることが許されるのか。
   このようなことが貯水池や水質の汚染につながるのではないのか。
 2 政府の言うように、「し尿については、簡易便所を使用してドラムかんに貯留し、油で燃焼させた後地中に埋め、ゴミについては、地中に埋め」(前記答弁書)、構築物や簡易便所を撤去するとしても、これで水源地の汚染防止、その周辺地域の清潔保持が完全にできると断言できるのか。
   これが政府の言う汚染防止のための万全の措置か。
五 水道法第二条では、国民は、水道が国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであることにかんがみ、水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持に心掛けなければならない旨、規定している。
  そして、水源や浄水場などの汚染防止、水質保全、衛生的な安全を守るために、水質検査、伝染病の検査、健康診断を始め厳重な措置と管理を求めている。
  水道法の規定でも明らかなように、上水ダムの貯水池やその周辺地域での米軍演習、訓練は、水道法の規定に明確に反する。
  このことについて政府は、米軍の公の活動は特段の定めがある場合を除いて、国内法令は適用がないけれども尊重する義務がある旨、答えている(昭和四十九年五月七日衆議院内閣委員会外務省大河原アメリカ局長答弁)。
 1 上水ダムでの米軍演習は水道法、河川法に反することはもちろん、在日米軍地位協定上の国内法の尊重義務をも逸脱するものと考えるが、どうか。
 2 それとも上水ダムでの米軍演習については水道法、河川法は適用されないということか。
六 沖縄県以外に上水ダム貯水池等で米軍の演習を許している例は、全国にはないと考えるが、どうか。
  自衛隊の場合はどうか(沖縄県を含めて)。
七 福地ダムの湖水面を使用して、既に米軍が恒常的に訓練、演習を行つている事実について、政府は、「昭和五十四年以前の記録はないが、昭和五十五年には月一回の割合でゴム・ボートによる訓練を行つた」と初めて認めた(前記答弁書)。
  福地ダム、新川ダム等の湖面を使用した演習、訓練の実態について具体的に報告されたい。
  昭和五十五年以降、現在までに実施された演習、訓練の内容及び回数についてダム別、訓練種別(浮き橋の建設、水質浄化訓練、応急渡河、小舟艇操作、波のり、水陸両用車訓練、ヘリコプターによる空海救助訓練)に明らかにされたい。
八 那覇防衛施設局、沖縄総合事務局は現在、どのような検討を進めているのか。現地米軍との交渉などについても報告されたい。
九 以上指摘したとおり、水道法や河川法にも違反し、他府県はもとより、世界の先進諸国にも全く前例のないダム貯水池での米軍の演習は絶対に行われるべきでない。
  沖縄県民の生命の源である水源地の汚染をもたらし、米軍に湖上演習場を提供する日米合同委員会の不当な合意事項を撤回することを重ねて要求する。
  さらに、県民の強い要求となつている北部・安波訓練場での米軍のすべての演習をやめさせ、これらの演習場の全面返還を実現するためアメリカ側と交渉することを求める。
  政府の明瞭な見解を伺いたい。

 右質問する。





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