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昭和五十九年十二月五日提出
質問第五号

 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律の運用上の諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年十二月五日

提出者  渡辺嘉藏

          衆議院議長 (注)永健司 殿




大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律の運用上の諸問題に関する質問主意書


 長期にわたる不況と消費需要の低迷の下で、中小小売業者の経営環境はますます厳しいものとなつている。
 それに追い打ちをかけるように、全国各地で大規模小売店舗の進出が相次ぎ、周辺中小小売業者が転廃業を強いられるなど、深刻な事態が発生している。とりわけ、地方中小都市においては、既存商業集積に対する影響だけでなく、地域経済社会、すなわち「まち」そのものに対する悪影響が重大な問題となつている。
 このような事態を未然に防止するため、昭和四十八年「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律」(以下「大店法」という。)を成立させた。また、その際、国会における審議において、当時の中曽根通産大臣らは、「届出を受けたら直ちに事前審査をやり、事実上運用上においては、許可制と同様の効果を期待できる」、「(通産大臣は)法の目的が実現するかどうかということをよく周囲を見渡し、届出内容、本質等をよく精査して、調和がとれるかどうかを確信持つてやれるという場合にこれをパスさせる」、「周辺中小小売業者には原告適格性がある」、「勧告には行政処分性がある」などと明言し、大店法の解釈及び法運用の姿勢について慎重に審議を行い、それを確認した上で可決した。
 ところが、実際には、法の趣旨並びに国会審議における答弁を逸脱している疑いのある法運用及び通達行政が行われているため、さきに述べたような事態を引き起こし、そのため多くの中小小売業者の不信感は増大し、訴訟になつたり、紛争が深刻化する事例が多発していると考えられる。
 本来、公正かつ適正でなければならない法運用のあり方そのものに疑惑を抱かれるような事態を放置しておくならば、行政に対してのみならず、大店法を審議成立させた立法府に対する国民の不信を買うことになりかねない。
 当時の通産大臣は、中曽根総理自身であつた点からいつても内閣の責任において、以上の観点に基づく左記質問事項について明解なる答弁を求める。

一 大店法第七条第一項において通産大臣又は知事は、第五条の「大規模小売店舗における小売業者の届出」があつた場合において、その当該店舗の出店により、周辺の中小小売業の事業活動に相当程度の影響を及ぼすおそれがあるかどうかを審査することになつているが、その審査は具体的にはどのように行われるか。
  これまでのすべての案件について、そのような審査が行われているか。
二 立法段階の国会審議の中で「事前審査を直ちにやる」と答弁しているが、それは具体的にどのように行われているか。調整手続の中で制度化されているか。
三 大店法第七条第一項において、商工会議所又は商工会は、意見の申出者の一つに位置付けられているにすぎない。ところが、実際の法運用においては、商工会議所又は商工会に商業活動調整協議会(以下「商調協」という。)を設置させ、地域の意見の調整を行わせている。
  その法的根拠及び理由を明らかにされたい。
四 最近の事例では、商工会議所又は商工会が出店促進の立場に立つたり、また幹部がデベロッパー、あるいは出店者と利害関係にあつたり、甚だしきは金品の授受が行われたりというケースもあるという。
  そのような商工会議所又は商工会に実質調整を行う商調協を設置しておくことは、調整手続に疑惑を抱かせる背景となると考えるがどうか。
五 大店法第三条の公示後、「事前商調協」を開催するよう通達で明らかにしているが、その法的根拠はどこにあるか。
六 三月以降の新しい通達「大規模小売店舗の届出に係る今後の運用について」等において、四者協議(通産局・県・市・商工会議所又は商工会)が、第三条あるいは第五条の届出の受理及び調整手続をすすめる上での判断に重要な役割を果たしているが、その法的根拠を明らかにされたい。
  招集は誰が行うのか。またその運営、結果についての責任は誰が負うのか。
七 最近・「消化仕入方式」と称し、大店法の手続を経ずして、既存店舗の大改装を行い、実質テナントの入れかえを行う事例が出てきているが、それについて通商産業省は適法であると解釈しているという。
  その法的根拠はどこにあるか。今後どのように対処していく考えか。
八 静岡市における案件(静岡ショッピングビル及びシティサンテラス)について、「事前審査」を行つたか。
  また、第五条の届出の受理後「おそれあり」として大規模小売店舗審議会に諮つたと聞くが、その後、第五条の届出の内容についてなんら勧告が行われていない。それはなぜか。
九 静岡市における商調協委員の人選に当たつて、出店する大型店と取引関係のある業者を委員に選任し、それを通商産業省も認めたという。しかも、自らがつくつた規則「商業活動調整協議会の運用について」に照らし、「取引関係はあるが専属的納入業者でない」とし、問題はないと判断したという。法の公正かつ適正な運用ということでいうならば、疑惑があるというだけでも慎重でなければならない。
  にもかかわらず、取引業者を委員に選任したのはなぜか。その判断に全く問題はないか。
十 商調協委員の任期については、省令「商業活動調整協議会規則」によると二年間と明記されており、「小間切」任期の規定は一切ない。ところが静岡市の場合、商工会議所の常議員会での承認行為がないまま五ヵ月延長されたという。実質調整を行う商調協の構成、その任期、運営などは公明・正大であるべきことは当然である。
  「小間切」任期を認め得る法的根拠は何か。
十一 周辺中小小売業者の原告適格性について、通商産業省は立法当時の答弁を覆し、いわゆる北上・江釣子訴訟においても、最近の国会質疑においても否定している。その根拠を、「ジュースの不当表示に関する判決」(昭和五十三年三月十四日、最高裁判決)においているが、それならば、立法当時に判断の誤りがあつたことになる。
  そうであるならば、政府の責任においても、周辺中小小売業者の権利を確保するために早急に立法段階の国会質疑の趣旨を反映できるよう法改正を行うべきであると考えるがどうか。
十二 昭和四十八年七月十一日、衆議院商工委員会において、当時の中曽根通産大臣は、「行政処分としての勧告、変更命令があつた場合にはもちろん訴訟の対象となります」と明確な答弁を行つている。
  ところがその後、事務当局が勝手に裁判あるいは国会において、勧告には行政処分性はないと主張しているが、これは国会審議を無視するものといえるのではないか。

 右質問する。





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