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昭和六十年二月二十七日提出
質問第一七号

 第二次大戦中旧日本軍によつて接収された沖縄県下の土地に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年二月二十七日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 坂田道太 殿




第二次大戦中旧日本軍によつて接収された沖縄県下の土地に関する質問主意書


 第二次大戦中、戦場と化した沖縄全島において、旧日本軍が航空基地等構築のため強制的に接収した民有地は、戦後、全面占領支配の下で、米軍の布令、布告によつて「国有地」扱いとされ、現在、大蔵省が「国有財産」として管理している。この土地の所有者であつた旧地主関係者は「強制的接収で土地代も支払つていない」として所有権を主張し、返還を求めてきた。
 昭和五十二年三月十七日の衆議院予算委員会において、当時の福田総理大臣は、現在国有財産とされているこれらの土地について、調査の上必要あるものについては、国有財産台帳からまつ消する旨の答弁をした。
 大蔵省は、その後の昭和五十三年四月十七日の衆議院予算委員会に「沖縄における旧軍買収地について」と題する調査結果報告文書(以下「報告書」という。)を提出し、そのなかで「旧軍が接収した土地は、私法上の売買契約により正当な手続を経て国有財産になつたものであると判断する」との結論を示した。
 ところが、この報告書は国家総動員体制下の状況や関係者の証言を全く無視し、沖縄本島や伊江島に関しては、直接的資料がないにもかかわらず一部離島地域の例を挙げ推測で、「旧軍による正当な買収」と判断するなど、極めて客観性の乏しいものである。
 従つて、以下の点について政府の見解をただしたい。

一 土地の強制的接収について
 1 旧日本軍が、飛行場建設などのために、強制的に土地を接収したとする当時の関係者の多くの証言がある。
   大蔵省の報告書は、これらの証言を承知した上での結論か。
 2 同報告書は「国家総動員法に基づく収用はなかつた」と述べており、また、沖縄本島や伊江島については直接的資料が発見されなかつたとしながら「旧軍の私的契約による買収」との結論を出している。その根拠として、旧陸軍、海軍の「軍用地買収手続き及び代金の支払方法に関する通ちよう等」と「関係者の事情聴取」を挙げている。
  (1) 通ちようの内容を明らかにされたい。
  (2) 事情聴取した関係者とは、どういう立場の人か、また、その内容はどういうものであつたか。それは、沖縄本島及び伊江島に関するものか。
 3 沖縄北飛行場(現在、読谷飛行場)建設に伴う土地接収について、旧地主関係者は「日本軍がなんの事情説明もなく飛行場を予定する民有地に赤い旗を立て、その一週間後に関係地主が、読谷村国民学校に集められ軍担当官二名が、県警保安課長を伴い緊迫した戦況を説明し『この地域は飛行場に最適地である。戦争に勝つための飛行場設置であるから諸君の土地を提供してもらいたい』」(昭和五十三年三月「旧日本軍接収用地調査報告書」、沖縄県)と軍隊口調による一方的な要請であつたということを証言している。
  (1) この証言の事実を認めるか。
  (2) これは、文字どおり何らの手続きも行わない強制的接収ではないのか。
  (3)大蔵省が、報告書で述べている旧日本軍の「説明会」とは、どういうものか。
 4 私自身も旧地主関係者の集まりで、かかる証言を直接聞いている。旧日本軍が、地主に対して出頭を命じ、用地の提供についてなかば強制的に要請し、有無を言わさず承諾印を押させたのである。沖縄戦突入を直前にした状況のなかで地主は反対することもできなかつたのである。
   更に、接収された自分の土地の地ならしまでさせられた時の地主の気持は、まるで生命を削る思いであつたという。
   また、当時大本営陸軍参謀(後に第三二軍参謀、陸軍中佐)であつた神(注)道氏は、「軍事優先の情勢であり、且つ飛行場建設は緊急を要したので地主達の意志を聴取する暇もなく」(昭和五十三年三月「旧日本軍接収用地調査報告書」沖縄県)着手したと証言している。
  (1) 大蔵省はこうした事情を承知しているのか。これを承知した上で、なおかつ「私的契約による買収」というつもりか。
  (2) 神(注)道氏の証言については、どういう判断をされたのか伺いたい。
  (3) 国家総動員体制下における社会状況及び旧日本軍の土地接収のやり方について、どのように認識されているのか。
 5 関係者の証言を考えあわせると、旧日本軍の土地接収が「正当な手続きを経た私的契約による買収」といえるものでないことは明白である。
   大蔵省がいうように仮に、国家総動員法を直接発動しなかつたとしても、旧日本軍の土地接収が、強制的なものであつたことは認めるか。
二 土地代金の未払いについて
 1 沖縄県が昭和五十三年三月に調査しまとめた「旧日本軍接収用地調査報告書」は、そのなかで旧地主に対するアンケート調査結果を集計している。
   ここでも明らかなように、例えば、沖縄北飛行場(現在、読谷飛行場)の場合、当時、地主に対しては家屋の移転補償や農産物の補償金の支払いが一部なされたようであるが、それも国債や郵便貯金を強要され、ほとんど現金を受領していないばかりか、大部分の地主が、補償金の支払いを受けていないと、回答している。更に土地代金については受領したものはいないということである。私もまた、これらの証言を旧地主関係者から聞いている。
   沖縄県がまとめたアンケート結果について、どういう判断を下したのか、見解を伺いたい。
 2 大蔵省は報告書のなかで「代金は支払われた」といい、更に「正当に契約し代金を支払つたという陳述及び資料もある」と述べている。
   そこで、伺いたい。
   正当に契約し代金を支払つたとの陳述はどういう立場の人であるのか。例えば、旧日本軍関係者なのか、あるいは、正当に契約し土地代金の支払いを受けた旧地主関係者であるのか。
   その人の住所、氏名を明らかにすることは、当然ではないか。それを示されたい。
   併せて、その陳述及び資料の内容を明確にされたい。
 3 多数の旧地主関係者が、土地代金は支払われていないと証言しているにもかかわらず、大蔵省が、「代金は支払われた」と断定する根拠とは何か、具体的に説明されたい。
三 米軍占領下の所有権認定作業について
  激戦地となつた沖縄本島及び伊江島においては、土地の原形が破壊されほとんどの土地の境界が不明となり公図、公簿はもちろん個人の登記関係書類も消失した。
  戦後、全面占領支配下で米軍の布令、布告による所有権認定作業が実施された。しかしこの作業は、@測量器具は不完全きわまるもので、測量技術者も不足し、にわか仕込みの技術者の手によつて測量が行われた。A飛行場用地も含め米軍基地は、立入禁止のため調査測量ができなかつた。B短期間(五ヵ年)に調査を完了しなければならず、時間的余裕がなかつた。C戦争によつて人々は、離散、死亡、行方不明となつた他、海外からの未帰還者が多いなどという状態の下で実施された。
  従つて、その結果作成された公図、公簿は、極めて不正確で不備、欠陥が多く、土地の現地境界を確定し得る程度の信憑性はない。だからこそ「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法に基づいて長期にわたる地籍明確化作業が行われているが、その作業は極めて困難な状態にある。
 1 大蔵省は「国有地」が、「適正」かつ「厳正」に実施された所有権認定作業に基づいて証明され、認定されたことを強調するが、
  (1) 測量技術者の不足、測量器具が不完全な状態の下で行われた作業が「適正」なものであつたといえる理由を説明されたい。
  (2) 原形や形状が破壊された土地の境界を確定し、所有権を認定するという作業期間がわずか五ヵ年間である。これで「厳正」といえるのか。
      しかも、海外からの未帰還者も数多くおり、限られた期間内に所有権認定の申請を提出できたと考えているのか、答えていただきたい。
  (3) 旧日本軍の飛行場など、米軍が基地として使用する目的で管理した用地への立入は禁止され、調査測量ができなかつた事実を承知か。これについてどう考えるのか見解を伺いたい。
 2 大蔵省は「いつたん国有地として証明が交付された後、巡回裁判の結果、所有権が民間人に認定された事例がある」、また、「土地所有権委員会の決定に基づき、旧軍飛行場に食い込む形の土地が、民有地と認定された事例がある」と述べ、あたかも所有権認定作業が適正であつたかのように印象付けようとしている。
  (1) 大蔵省は、巡回裁判により民間人に認定された事例として「読谷村字伊良皆六九七番地、所有権者 上間清子」を挙げている。
      この土地は、沖縄北飛行場(現在、読谷飛行場)から、はるかに離れたところに位置しているもので、登記簿上「沖縄県有地」ではないのか。
      これは、どういうことなのか。また、この土地を大蔵省が「国有地」だと主張した根拠は何か。
  (2) 大蔵省がいう「旧軍飛行場に食い込む形の土地が民有地と認定された事例」について、地番及び所有権者を明らかにされたい。
      この民有地とは、戦前は飛行場の外に位置していたが、戦後の所有認定作業による公図作成の時、誤つて飛行場用地内の位置に配列されたものと考えるが、どうか。
  (3) 大蔵省が事例として挙げたこれらの土地は、いずれも飛行場用地とは全く無関係の土地であり、飛行場用地の強制接収とは別に、国有地としたことが誤りであることが明白であつた。だからこそ、所有権認定申請も受理され、所有権も認められたのではないか。
 3 米軍管理下におかれた飛行場用地について、米軍当局は、村を通じ同用地にかかわる地主からの所有権認定申請を受理させないようにした。これが事実ではないのか。
   接収土地で飛行場用地内の所有権認定申請が受理されたケースはあるか(所有権の認定は別)。あるとすれば、具体的に明らかにされたい。
 4 所有権認定作業が米軍の布令、布告どおり実施されたからといつて、これまで指摘した重大な欠陥をもつて行われた作業が、「適正」かつ「厳正」といえるのか、明確に答えられたい。
四 接収土地の払下げについて
  最後に、昭和五十四年十一月二十八日の参議院決算委員会において、竹下大蔵大臣は、接収土地について、地方公共団体が振興開発にのつとつた利用計画を提出すれば、沖縄振興開発特別措置法、国有財産法に沿つてできるだけ早く、地方公共団体に払い下げる等の処置をとる旨、答弁している。
  これは、政府の統一見解か。また、この方針は旧日本軍接収用地全体に関するものか、それとも一部地域に限定したものか、見解を伺いたい。
  併せて、その対象とする地域名及び土地の所在地、面積について明らかにされたい。

 右質問する。





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