衆議院

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昭和六十年六月二十五日提出
質問第四七号

 憲法第九条の解釈に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年六月二十五日

提出者  森  清

          衆議院議長 坂田道太 殿




憲法第九条の解釈に関する質問主意書


一 自衛権発動の三要件について
 政府は、憲法第九条のもとにおいて許容される自衛権の発動については、「従来からいわゆる自衛権発動の三要件(わが国に対する急迫不正の侵害があること、この場合に他に適当な手段のないこと及び必要最少限度の実力行使にとどめるべきこと)に該当する場合に限られると解している。」といつているが、この三要件について次の問題をどのように考えるか。
 (一) 自衛隊法第七十六条の防衛出動を命ずる場合のみの要件であるか、それとも、防衛出動発令後のすべての武力の行使にもこの三要件が必要であるか。
 (二) 後者であるとすれば、どの段階の武力の行使についてこの三要件を判断すべきものであるか。
 個々の戦闘員についても適用があるか。そうでなければ、どの程度の指揮官レベルで判断すべきことであるか。
 (三) 自衛権の発動について政府は、さらに「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に対処する場合についてのみ許されると解釈しているが、
   (ア) この国民とは、全体の国民であるか、一部の国民の場合も発動されるか。
   (イ) 一部の国民の場合でも発動されるのであれば、在外邦人を救出するための海外派兵が憲法上許されないと解釈しているのは何故か。
   (ウ) 多数の国民という意味であれば、どの程度の国民についてこのような事態になれば、自衛権が発動できるのか。
   (エ) 防衛出動を命ずるには、「国民の……権利が、根底からくつがえされるという急迫不正の事態」にならなければならないと政府は解釈しているが、敵国の開戦の仕方にもよるが、通常は、このような判定はできないのではないか。わが国が昭和十六年十二月、真珠湾を攻撃した場合と同じ態様の攻撃を受けた場合に、防衛出動を発令することができるか。
     例えば、海上自衛隊の基地に碇泊中の自衛艦数隻が爆撃された場合に、直ちに、「国民の……権利が根底からくつがえされるという急迫不正の事態」であると認定できるか。
     その他、軍事施設の一部が敵機又はミサイルによつて攻撃された場合はどうか。
二 自衛隊の武力の行使について
 (一) 自衛隊法第八十八条において、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、「必要な武力」を行使することができるが、この武力の行使は、当然に武器の使用が中心である。
     ところが、自衛隊のこの武力の行使、武器の使用には、政府の解釈によれば、憲法上自衛権発動の三要件に該当する場合でなければならないと思われるが、そうであれば、この三要件は、個人の場合の正当防衛と同じく、「急迫不正」の侵害がなければならない。
     警職法においては、正当防衛の場合はもとより、緊急避難に該当する場合及び同法第七条各号に該当する場合に他人に危害を加える武器の使用が認められている。従つて、防衛出動の場合の武器の使用は、警職法の場合に比し、より限定されていると考えてよいか。
 (二) 自衛隊法第八十二条、第八十四条、第九十五条の規定は、同法第七十六条の規定による防衛出動を命ぜられた自衛隊にも適用があるか。
三 自衛権の及ぶ範囲について
  政府は、自衛権に基づき、自衛隊の行動できる範囲は、我が国の領土、領海、領空並びに、公海及び公空に限り、我が国に対し武力を行使している国といえどもその国の領土、領海、領空では行動できないと解釈しているが、そのとおりであるか。
  そうであれば、隣接したその国とは、事実上空戦などはできない場合があるが、それでよいか。
四 集団的自衛権の行使について
  政府は、集団的自衛権はあるが、その行使は、「憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであつて許されない」と解釈しているが、現在の国際法の下においては、自衛権に基づくものでなければ、いかなる国も一切武力を用いることが禁止され、個別的自衛権及び集団的自衛権の行使のみが認められている。
  そこで、我が国が集団的自衛権の行使が憲法上認められないのは、憲法第九条第一項によつて戦争を放棄したからであるか。第二項で「陸海空軍その他の戦力」の保持を禁止したからであるか、或は、「交戦権」が認められないからか何れであるかその根拠を明らかにされたい。
五 自衛隊と交戦権
 (一) 政府は、自衛隊に、交戦権がないこと、自衛隊法によつて任務が制限されていることから、諸外国の軍隊とは異なり、国際法上軍隊あるいは軍艦に適用される法規も、すべて適用になるのではなく、適用される場合もあると解釈している。そうであるならば、自衛隊員特に各級指揮官は、この戦時国際公法のうち適用にならないものを明確に知つておかなければならない。そこで、戦時国際公法で我が国に適用にならない条項を具体的に明示されたい。
 (二) 自衛隊員が敵兵を殺傷し、捕虜となつた場合、交戦権があれば国際法上の捕虜として待遇が与えられるが、交戦権がないものについては、この国際法の保障がなく、敵国の国内法規に従つて処断されると思うが如何。
     政府は、我が国の自衛権に基づく行為であるから、交戦権がなくとも、一定の場合敵兵を殺傷することができると解釈しているが、この解釈では、我が国の国内法上正当化されるだけであつて外国には通用しない。外国に通用するのは、国際法のみである。この敵兵を殺傷することが違法でないという国際法上の交戦権を我が国が自ら否認しているのであるから、我が国から国際法上の捕虜の取り扱いを要求する権利はないこととなると思うが如何。

 右質問する。



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