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平成元年二月一日提出
質問第三号

 アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年二月一日

提出者  東中光雄

          衆議院議長 原 健三郎 殿




アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化対策等に関する質問主意書


 今日、鉄筋コンクリート構造物は住宅、学校、事務所ビルをはじめ、高速道路、鉄道・港湾施設、発電所、堤防等々国民生活に不可欠なものとなっている。しかし、鉄筋コンクリート構造物については、近年、鉄筋の腐食・ひび割れ等コンクリートの劣化現象が頻発し、コンクリート構造物の耐久性に対する不安が高まっている。
 鉄筋コンクリート構造物の劣化現象は、かぶり厚さ不足による鉄筋の早期腐食・塩分による鉄筋腐食によるかぶりコンクリートの剥落及びアルカリ骨材反応によるコンクリートのひび割れ等を原因としており、住宅や道路等の基本材料である鉄筋コンクリートの劣化は国民生活の安全・防災にとって重大な問題となっている。
 しかし、コンクリート劣化に関して万全の対策が講じられているとはいいがたい。かぶり厚さ不足・塩分問題に関する対策は十分ではなく、また、アルカリ骨材反応に関する対策は「暫定」対策にとどまっており、国民の不安を解消し“安全”を望む国民の期待にこたえる抜本的対策及び総合的体制はいまだ確立されていない。
 とりわけ、「コンクリートの癌」といわれるアルカリ骨材反応による劣化は、“セメントに含まれるアルカリと骨材に含まれるある種の鉱物とが反応を起こして膨張し、コンクリートにひび割れ、組織崩壊を生じさせるもの”であり、近年我が国においても実際のコンクリート構造物の損傷による被害事例が増加している。
 政府がアルカリ骨材反応によるコンクリート劣化問題の重要性を打ち出し、国等の大学・研究機関、民間における研究及び技術開発等を総合的に推進して、コンクリート構造物の劣化、特にアルカリ骨材反応のメカニズムを科学的に解明し、土木構造物・鉄筋コンクリート造建築物の劣化と耐久性維持対策に関する抜本的な対策を確立して、補修補強方法・技術、設計・施工基準の在り方等までを含めた技術的対策を講ずることがいま緊急に求められている。
 よって、アルカリ骨材反応対策及び国民生活に影響の大きい住宅、道路、鉄道等々のコンクリート構造物のアルカリ骨材反応による劣化の実態について質問する。

一 現在の暫定アルカリ骨材反応対策について
  政府は、一九八〇年代はじめ以降我が国においてひろく認められるようになったアルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の損傷が全国的に存在する可能性があること、また、アルカリ骨材反応を起こすおそれのある骨材が全国的に分布している可能性があることから、暫定的な対策として、アルカリ骨材反応暫定対策(土木構造物)及びアルカリ骨材反応対策に関する暫定指針(建築物)からなる「アルカリ骨材反応対策」を策定し、一九八七年四月から実施している(一九八六年六月二日、建設省大臣官房技術審議官通達)。
  この暫定対策は、土木構造物・鉄筋コンクリート造建築物のアルカリ骨材反応による被害を防止するため、@アルカリ骨材反応に安全(無害)と判定される骨材を使用すること、A低アルカリ形セメントを使用すること、抑制効果のある混合セメント等を使用すること、コンクリート中のアルカリ総量を抑制すること、B化学法・モルタルバー法による骨材のアルカリ骨材反応性の判定(試験)法、を規定したものである。
 1 暫定対策の実施状況について
   暫定対策の実施に当たり政府は、前記通達が直接適用される「建設省が建設する土木構造物に使用されるコンクリートおよびコンクリート工場製品」及び「建設省が建設する建築物及びコンクリート工場製品等に使用するコンクリート」だけでなく、建設省が直轄で実施する土木構造物・建築物及び住宅等については地方建設局・関係公団等への通知等により、また、一般建築物については都道府県・民間建築関係諸団体への通知・参考送付により、対策の推進と周知徹底を図っているとしている。
   政府はこの対策が全体としてどの程度周知徹底され、実際の工事で遵守・実施されていると認識しているか。とりわけ民間部門の工事ではどの程度遵守・実施されていると認識しているか。
 2 骨材の反応性試験及び試験体制について
   反応性のない骨材を使用することは、アルカリ骨材反応発生メカニズムの解明が不十分な現状にあっては、アルカリ骨材反応を防止するための原理的な対策である。このため骨材について公的試験機関等でアルカリ骨材反応試験を行っている。
  (1) アルカリ骨材反応を起こす骨材の岩種は安山岩、チャート、流紋岩等とされているが、これらは日本全国に分布しているものである。建設省は骨材(砕石)についてアルカリ骨材反応試験をしているが、これについて、
    @ 調査試験箇所数を前記通達以前・以後別に示されたい。
    A 調査試験結果について、次の点を明らかにされたい。
     (イ) 反応性のある岩種名
     (ロ) 反応性のない岩種名
     (ハ) 反応性の判定できない岩種名
     (ニ) 反応性の有無はすべての岩種で判定されたのかどうか。
    B 今後の調査試験予定(対象地域・対象岩種)を示されたい。
  (2) 公的試験機関では、骨材・セメントについて、(注)アルカリ骨材反応試験(化学法)、(注)アルカリ骨材反応試験(モルタルバー法)、(注)セメント中のアルカリ量測定、の試験設備をもち、アルカリ骨材反応試験を実施している。
      このうち、(注)(注)(注)の試験設備をもつ機関は十八都道府県であり、その他の二十九府県(青森、福島、栃木、新潟、埼玉、千葉、群馬、富山、岐阜、三重、福井、滋賀、京都、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)では試験設備をもつ公的試験機関はない。
    @ (注)(注)(注)の試験設備をもつ試験機関において、これら試験に従事できる人員は一機関当たり何名か。
    A 公的試験機関のない府県ではどこで骨材の反応性試験を行っているのか、県別に試験所名を示されたい。
    B 現状の試験体制は質的にも量的にも問題が多くその試験結果が公的に評価され得るようになっていない。公的試験機関の人員・設備の整備が急務であるが今後の整備拡充計画を示されたい。
 3 骨材反応性の判定試験法について
   骨材反応性の判定試験法については、モルタルバー法は「試験に要する時間が3ヶ月ないし6ヶ月と長すぎる」、化学法は「骨材の種類によっては、反応性を判定できないものもある」(生コンクリート品質対策委員会中間報告「アルカリ骨材反応に係る品質対策のあり方」、一九八五年十二月)と指摘されている。
  (1) これらの骨材試験判定法は対策の実施に当たり十分に機能していると考えているか。
  (2) 暫定対策以降、判定試験法の改善、新しい試験方法の研究開発はどのようになっているか。研究開発を行っている政府・研究機関名及びその進捗状況を明らかにされたい。また、「反応性の判定できない岩種」の試験方法・使途についてどのような研究開発をしているか。
 4 セメント問題について
   アルカリ反応性のない骨材を使用することとともに、@低アルカリ形セメントを使用すること、A抑制効果のある混合セメント等を使用すること、Bコンクリート中のアルカリ総量を抑制すること、が対策のもうひとつの柱となっており、特に低アルカリ形セメントを使用することが対策を効果あるものとする不可欠で重要な条件となっている。
  (1) 対策を確実なものとするため、低アルカリ形セメントを十分に生産し使用に供していくことが必要と考えるが、政府はこのためにどのような対策を策定し、セメント業界に対しどのような指導をしてきたのか。
  (2) 低アルカリ形セメントの生産状況について、一九八三年以降の総セメント生産高、低アルカリ形セメント生産高及びその比率を年次別に示されたい。
  (3) アルカリ骨材反応を防止するためセメント生産の面からも政府の対応・研究体制を確立することが重要であるが、政府はこれについて「極めて技術的なことでありますから、きちっと研究をいたさせます」(一九八六年二月二十一日 衆議院商工委員会 通商産業大臣答弁)としていたところである。通産省はその後セメント生産に関しどのような研究体制をとったか。またその進捗状況はどうなっているか。
 5 生コンクリートメーカーについて
   対策実施にさいし、生コンクリート協同組合等は生コンの品質管理を行っている。
  (1) 生コンクリート製造業者は何社あるか。うち、生コンクリートJIS規格(JISレデーミクストコンクリート)を取得しているのは何社か。
  (2) 生コンクリート製造業協同組合、生コンクリート製造業工業組合は何組合あるか。うち、生コンクリートJIS規格を取得しているのは何組合か。また、協同組合、工業組合の試験場は何箇所か。うち、アルカリ骨材反応試験のできる試験場は何箇所あるか。
  (3) 生コンクリートJIS規格に適合した生コンクリートメーカーの試験設備を整備拡充するためどのような施策を講じようとしているのか。
二 コンクリート構造物の調査点検・監視体制及び補修補強方法・技術の確立について
  アルカリ骨材反応によるひび割れ等によってコンクリート被害が発生する危険のある鉄筋コンクリート構造物、特にアルカリ骨材反応抑制措置のとられていない既設鉄筋コンクリート構造物について、政府の責任においてアルカリ骨材反応に関する、@全面的な実態調査を行うこと、A調査試験方法の研究開発をいっそう推進して調査方法及び調査試験体制を確立すること、B調査点検等による損傷・被害等の実態・状況を収集・集中し対応策等をとる監視体制を確立すること、Cアルカリ骨材反応による損傷・被害に対する補修補強方法・技術の研究開発を積極的に推進して補修補強方法・技術を確立すること、D国民に対しアルカリ骨材反応に関する知識の普及、政府の対策等の広報を積極的に行うこと、が求められている。
 1 既設コンクリート構造物の調査点検及び調査点検体制等について
   アルカリ骨材反応対策を確立するには、既設鉄筋コンクリート構造物について全面的な実態調査を行うとともに調査方法及び調査試験体制を確立し、損傷・被害に対して補修補強、廃棄等必要な措置をとることが不可欠である。
  (1) 政府は既設コンクリート構造物の調査点検について、いつから、どのような体制をとっているか。政府部内で国公団地方公共団体等施行の施設等について調査点検を指示した省庁公団等名、省庁公団等ごとに調査点検対象とした施設名(住宅・道路・医療・文教等施設)、調査点検主体(国公団等・地方自治体等)及び調査試験機関(国公団等・調査機関委託)を明らかにされたい。
  (2) 現在どのような方法で調査点検しているか、目視等の調査点検方法を挙げられたい。
  (3) 外観に変化等がみられない段階においてコンクリートの耐久性調査・診断を行うことが必要と考えるがこのような調査点検をしているか。又は今後かかる調査点検をする方針はあるか。
  (4) 目視調査等が困難な@道路・鉄道等の橋梁の地中・水中部分A中高層コンクリート造建築物の基礎工事部分等について調査点検しているのか否か、調査点検している場合はその調査点検方法を挙げられたい。
  (5) 調査点検に当たる調査技術者に対し調査点検方法をどのように周知徹底・教育しているか。またいつから、どのような教育養成方法・体制で調査技術者を養成しているか。
 2 新しい総合的な監視体制の確立について
   既設コンクリート構造物、特にアルカリ骨材反応抑制措置のとられていない構造物・建築物はアルカリ骨材反応による損傷・被害の生じる可能性を有しており継続的な調査点検が必要である。この調査点検は国公団地方公共団体等施行の構造物だけでなく民間施行の構造物等をも対象としなければならない。アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の耐久性破壊の重大性からみて第一にコンクリート構造物の全面的な調査点検を実施する必要がある。またこの調査点検は、アルカリ骨材反応発生メカニズムからも、また同反応を抑制する技術が確立されていない現状にあっては、一定時点のものにとどまらず継続的・定期的に実施される必要がある。
   このさい政府は、アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化の危険から国民生活の安全を守るため、新しい総合的な機能を有する監視体制を確立する必要があると考える。
   調査点検及び対応策にかかる総合的な監視体制の確立は国の防災対策、とりわけ地震防災対策の充実強化を図るうえからも必要とされるところである。
   政府は、@当該継続調査点検事業の計画を立案し、A一定期間ごとの調査点検の実施及び民間からの損傷等の通報・情報提供による損傷・被害等の実態・状況を収集・集中し、B条件・状況に応じた損傷・被害部分の試験、その他のコンクリート劣化要因等を含めた原因解明、補修補強措置の指示等々の対応策を策定する、C国全体としての統合的機能をもつ監視機構を政府部内等に設けるべきである。この監視機構はあわせて、アルカリ骨材反応発生メカニズムの知識、これによる構造物への影響・対応策、政府の対策等々を国民に普及・周知するための広報活動を行う必要がある。政府は必要な予算措置を講じ、このような監視体制を確立する必要があると考えるが見解を示されたい。
 3 補修補強方法・技術の確立について
   アルカリ骨材反応による構造物の劣化・損傷に対する補修補強方法・技術を確立しその耐久性を保持していくことは、アルカリ骨材反応防止対策とならんで、極めて重要な課題である。
  (1) これまで、国公団地方公共団体等施行のコンクリート既設構造物等において、アルカリ骨材反応又はその疑いによるひび割れ等の損傷・被害に対しどのような補修方法を実施しているか、その方法、箇所数、施行実施機関を挙げられたい。また、これら補修方法は耐久性の保持(耐久性、耐用年数等)に関しどのような効果を示すものと判断しているか見解を示されたい。
  (2) アルカリ骨材反応による膨張を抑制するための補修方法は何か。また、これら補修方法は耐久性の保持(耐久性、耐用年数等)に関しどのような効果を示すものと判断しているか見解を示されたい。
  (3) アルカリ骨材反応による損傷・被害の補修補強方法・技術を研究している国等の研究機関はどこか。これら研究について補修補強方法等を確立・規格化し実用化できるのはいつごろと考えているか。
三 今後の抜本的総合的アルカリ骨材反応対策について
  現在のアルカリ骨材反応対策は“現段階で推奨できる”「暫定」対策であり、その後の研究の成果及び対策実施による実績等の総合的検討を基に規制策を含むより万全な抜本的対策を確立することが求められている。また、既設コンクリート構造物の劣化を防止しその耐久性を維持するため、調査点検方法及び補修補強方法・技術に関する規定を対策に正当に組み入れ、総合的な対策を早急に講ずる必要がある。
 1 骨材及び骨材判定試験法の規格化について
  (1) コンクリートの材料として使用される骨材については、アルカリ骨材反応を防止するため、法令等に基づく使用義務づけ等の規格化の措置が必要と考えるがどうか。
  (2) 骨材のアルカリ反応の早期判定法の確立のための研究開発の推進と同時に、判定試験法を現段階で規格化し、これに適合した試験設備・機器、人員を整備充実して、判定試験を徹底することが必要と考えるがどうか。
 2 セメントの規制について
  (1) 構造物用セメントのすべてを低アルカリ形セメントとすることはアルカリ骨材反応を防止する確実な方法であるが政府の見解はどうか。
  (2) 近年セメントの輸入が急増しているが、アルカリ骨材反応対策を推進するうえでどのような措置を講じているか。
 3 暫定対策の改定について
   現行の暫定対策は政府・関係機関の調査・研究の成果を基に“より完全な対策”として改定され、拡充・強化されるべきものである。
  (1) 改定に当たっては、骨材及び骨材判定試験法の規格化など右に指摘した規制策を含むべきだと考えるがどうか。
  (2) 改定に当たっては、調査点検方法及び補修補強方法・技術に関する規定を含むべきだと考えるがどうか。
  (3) 改定の時期はいつごろになる見込みか。
  (4) 改定に当たっては、現暫定通達でも直接対象とされていない民間における一般建築物の工事施工についてどのような措置で周知徹底を図ることを検討しているか。
 4 アルカリ骨材反応に関する研究開発について
   現在アルカリ骨材反応発生メカニズムの解明は十分ではなく、アルカリ骨材反応を抑制・防止する技術は確立されていないとされている。全面的な調査点検、監視体制を実効あるものとし、国民生活に不可欠なコンクリート構造物の耐久性確保に関する抜本的対策を確立するため、政府は直ちに、国等の研究機関・大学、民間において、先に挙げた補修補強方法・技術の研究開発等を含めて、アルカリ骨材反応及び同防止技術等の研究開発を総合的に振興・推進する施策を講ずる必要がある。
  (1) 現在、アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化等について研究開発を行っている国の研究機関及び国立大学等はどこか。国の研究機関及び国立大学等別にその研究件名、予算及び人員等の研究体制を示されたい。
  (2) 現在、アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化等について研究開発を行っている民間の研究機関、大学等はどこか。
  (3) 右研究開発体制は現行暫定対策を“より完全な対策”として強化していくうえで十分なものと考えているか。また当該研究開発について今後予算の増加、研究開発体制の充実強化策を検討しているか。
 5 建築物等の修繕・改築費用への助成措置について
   アルカリ骨材反応による損傷・被害が確認され当該建築物等が危険と判断されたときは修繕・改築等の事態が生じる。これら費用については、公営住宅、民間マンション等をも対象とする財政的助成措置を講ずることを検討すべきと考えるがどうか。
四 既設構造物のアルカリ骨材反応による損傷・被害実態について
  政府の責任において、すべてのコンクリート構造物等のアルカリ骨材反応による損傷・被害状況を明らかにすることは、国民の認識を深め、また、抜本的総合的対策を確立するうえで極めて重要である。ここでは、国民生活の安全確保にとって影響の大きい住宅、道路、鉄道等々に限定して、アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化の実態について具体的に質問する。
 1 建設省及び同省管轄の公団・公社の工事にかかるアルカリ骨材反応による損傷・被害実態について
  (1) 建設省等による実態調査について
    @ 建設省は自ら又は委託等により、建設省及び管轄公団・公社の既設構造物について、コンクリート劣化(アルカリ骨材反応による劣化を含む)に関する実態調査を行ったことがあるか。調査を実施した場合はアルカリ骨材反応に関する調査結果を明らかにされたい。調査を実施していない場合は調査の必要性を認めない理由又はその他の理由を示されたい。
    A 建設省及び管轄公団・公社の既設構造物について、建設省が把握しているアルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の損傷実例を、道路、橋梁、ダム、堤防、住宅等別に挙げられたい。
  (2) 住宅について
      住宅のコンクリート劣化は所有者・居住者にとって耐用年数、安全確保及び補修等々深刻な問題となっている。
    @ 建設省は「昭和三十年以降に建設された建築物」について「コンクリート劣化に関する実態調査」を行った。このうち、住宅についてアルカリ骨材反応を原因とするコンクリート劣化はどのくらいあったか調査結果を明らかにされたい。
    A 住宅・都市整備公団は公団施行の住宅についてアルカリ骨材反応の調査をしたことがあるか。調査したことがあればその調査結果を、調査していない場合は調査しない理由を明らかにされたい。
    B 地方公共団体又は住宅供給公社施行の住宅についてアルカリ骨材反応調査が行われたことはあるか。調査が行われた場合は建設省が把握しているその調査結果を明らかにされたい。
  (3) 高速道路について
    @ 高速自動車道路のコンクリート劣化について、ひび割れ、鉄筋腐食、コンクリートの浮き及び崩落等について、各高速自動車道路別に、調査の有無、調査方法、損傷・被害状況、原因(アルカリ骨材反応を含む)、箇所数及び補修補強工事等の対応策等その全容を示されたい。
    A 近畿自動車道路のコンクリート落下事故について
      一九八八年七月二十八日、日本道路公団・近畿自動車道路吹田松原線の大阪市鶴見区茨田大宮一丁目付近の高架道路床板のコンクリートが剥離・落下する事故が発生した。
      このコンクリート破片断面の砕石にはアルカリ骨材反応特有の「反応リム」が認められており、亜硫酸ガス等を含んだ雨及び振動による疲労が剥離の原因とは考えられない。
     (注) 当該事故の原因調査について、調査試験機関、調査内容・方法を示されたい。アルカリ骨材反応に関する調査試験は含まれているのか。また調査結果はいつ判明する見込みか。
     (注) 当該箇所付近の道路工事で使用されたセメントのアルカリ量は何パーセントのものであったか。
     (注) 当該箇所及びその周辺では補修工事が行われたが、その目的・補修方法はどのようなものか。また、この補修工事によって規定の耐用年数は確保されると判断しているのか。
     (注) 落下コンクリート破片はその表面から鉄筋の配筋までのかぶり厚さは約二センチメートルであり、手抜き工事の疑いがある。設計図では側壁の鉄筋コンクリート断面のかぶり厚さは何センチとなっていたのか。
  (4) 建設省及び管轄の公団・公社の工事にかかるアルカリ骨材反応対策について
    @ 建設省(各地方建設局)は、所管工事実施にさいし、アルカリ骨材反応対策として骨材の反応性試験を行っているか。反応性試験を行っている場合は試験機関名、していない場合は試験の必要性を認めない理由を示されたい。
    A 建設省管轄・共管の公団・公社は、所管工事実施にさいし、アルカリ骨材反応対策として骨材の反応性試験を行っているか。反応性試験を行っている場合は試験機関名、していない場合は試験の必要性を認めない理由を示されたい。
 2 港湾、鉄道、空港等のアルカリ骨材反応による損傷・被害実態について
  (1) 港湾施設のコンクリート劣化について
      港湾施設のアルカリ骨材反応調査について、調査時期、調査方法(目視等の)、アルカリ骨材反応損傷・被害の認められた港湾名、その施設区分(防波堤等)及びこれらの損傷・被害に対する補修補強措置とその効果を示されたい。
  (2) 新幹線のコンクリート劣化について
      新幹線のアルカリ骨材反応調査について、調査時期、調査方法(目視等の)及びアルカリ骨材反応損傷・被害の認められたものについて、
    @ トンネルの損傷・被害の新幹線別の状況及びトンネル名
    A コンクリート橋梁の損傷・被害の新幹線別の状況及び箇所数
    B 高架部分の損傷・被害の新幹線別の状況及び箇所数
    C これらの損傷・被害に対する補修補強措置とその効果
     を示されたい。
  (3) 旅客鉄道会社のコンクリート劣化について
      各旅客鉄道会社(JR)(新幹線を除く)のアルカリ骨材反応調査について、調査時期、調査方法(目視等の)及びアルカリ骨材反応損傷・被害の認められたものについて、
    @ コンクリート橋梁の損傷・被害の旅客鉄道会社別の状況、箇所数及び橋梁名
    A 高架部分の損傷・被害の旅客鉄道会社別の状況、箇所数及び高架名
    B @A以外の損傷・被害の旅客鉄道会社別の施設名、状況及び箇所数
    C これらの損傷・被害に対する補修補強措置とその効果
     を示されたい。
  (4) 民鉄のコンクリート劣化について
      民鉄のアルカリ骨材反応調査について、調査時期、調査方法(目視等の)及びアルカリ骨材反応損傷・被害の認められたものについて、
    @ コンクリート橋梁の損傷・被害の会社別の被害状況及び橋梁名
    A 高架部分の損傷・被害の会社別の被害状況及び箇所数
    B @A以外の損傷・被害の会社別の施設名、状況及び箇所数
    C これらの損傷・被害に対する補修補強措置とその効果
     を示されたい。
  (5) 空港施設のコンクリート劣化について
      空港施設のアルカリ骨材反応調査について、調査時期、調査方法(目視等の)、アルカリ骨材反応損傷・被害と認められた施設等の有無及びこれらの損傷・被害に対する補修補強措置とその効果を示されたい。
 3 原子力発電所のアルカリ骨材反応による損傷・被害実態について
  (1) 原子力発電所のアルカリ骨材反応調査について
    @ 既設原子力発電所のコンクリート劣化(アルカリ骨材反応を含む)に関する調査について、各電力会社・原発別に、調査時期、主な使用骨材とこれについての試験の有無、コンクリート構造物の試験方法とその結果、外観点検の方法・外観点検の有無とその結果及び全体としての総合評価を示されたい。
    A 原発の安全上の重大性から、既設原子力発電所については一定時点の調査にとどまらず継続的な調査点検が特に求められる。このため原発については特別の体制をとり調査点検の実施、安全確保のための対応策の立案等特段の措置が必要と考えるがどうか。
  (2) 大飯一号・二号原発、高浜三号・四号原発のコンクリート劣化について
      関西電力大飯一号・二号原発及び同高浜三号・四号原発におけるコンクリート劣化について具体的に聞く。
    @ 右原発のコンクリート構造物にはひび割れ等が生じ、その原因として大飯一号・二号原発では骨材に堅海(かつみ)砕石、また、高浜三号・四号原発では堅海砕石及びサコダ石(サコ山砕石)が使用されたためとの指摘があるが、前記調査では骨材について反応性調査をしたか。また、堅海砕石は砂岩・粘板岩、サコダ石(サコ山砕石)は安山岩であるがこれらは「アルカリ反応性物質を含む岩石類」ではないか。
    A 右各原発の鉄筋コンクリートには塩分を含む三国砂、網野砂が使用されコンクリートの発錆・劣化を促進しているとの指摘があるが、これらの含有塩分率等の分析調査結果を示されたい。
    B 右各原発の建設工事にさいし、原発建屋、格納容器等のコンクリート用骨材について反応性試験を行ったか、その結果を示されたい。
    C 右各原発のコンクリート構造物について、将来においてもアルカリ骨材反応・塩分による劣化・発錆のおそれはないと判断しているのか。
五 アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化と地震対策について
  我が国においてアルカリ骨材反応によるコンクリート造構造物・建築物の劣化対策が緊急に必要とされるのはまた、東海地震、南関東直下型地震等の大地震の発生が切迫しているからである。地震対策の策定に当たっては、特にアルカリ骨材反応抑制措置のとられていない構造物を含めて、アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化・耐久性低下と地震(耐震性)との関係等が検討・研究されなければならない。また、かかる研究はアルカリ骨材反応研究及び地震研究のなかで積極的に推進されなければならない。これはまた、抜本的総合的アルカリ骨材反応対策の確立にとって不可欠である。
 1 ソ連アルメニア地震について
   我が国の「国際緊急援助隊・耐震専門家チーム」は一九八八年十二月十九日から約一週間アルメニア地震被災地を調査した。
  (1) 同チームにはアルカリ骨材反応研究の専門家は含まれていたか。
  (2) 同チームによる現地調査の結果はいつ出る予定か。
  (3) 我が国にとって今後、アルメニア地震の被害状況、コンクリート構造物の崩壊原因調査、耐震設計基準の在り方等に関する資料が必要となるが、これら資料の入手等についてどのような協力体制をとるのか。
 2 南関東地域地震被害想定調査について
   国土庁は、一九八八年十二月六日「南関東地域地震被害想定調査」結果を発表した。これは、地表加速度、液状化、津波、建物被害、火災被害、道路橋梁被害、電話・通信被害等々十一の想定項目によって地震被害を想定し、被害規模を算定したものである。
  (1) 被害想定に当たり、右の想定項目のうち、コンクリート構造物が含まれる建物被害、道路橋梁被害、電話・通信被害等の想定項目のなかには新幹線、高速道路、超高層・中高層コンクリート造建築物、地下鉄、地下街等々の諸施設を含めて被害を想定したのか。
  (2) 被害想定に当たり、各想定項目・右諸施設について、アルカリ骨材反応によるコンクリート劣化要因は検討対象とされたのか。
 3 地震対策とアルカリ骨材反応によるコンクリート劣化研究について
   アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化・耐久性低下と地震(耐震性)との関連については、アルカリ骨材反応による損傷・被害が発生している構造物及び補修補強後の構造物等が地震によって耐久性を保持できるのか等々極めて大きな問題が提起されているといわなければならない。
  (1) 当該研究は先の(三 4)総合的なアルカリ骨材反応及び同防止技術の研究開発の一環としても振興・推進すべき重要な課題だと考えるが政府の見解はどうか。
  (2) 現在、アルカリ骨材反応と地震(耐震性)との関連について研究している国及び民間の研究機関・大学等はどこか。

 右質問する。





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