衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成元年二月四日提出
質問第四号

 天皇「代替わり」儀式問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年二月四日

提出者  村上 弘

          衆議院議長 原 健三郎 殿




天皇「代替わり」儀式問題に関する質問主意書


 前天皇の死去と相前後して、天皇にかかわる問題が重大な政治問題となっている。
 天皇に関する問題は、憲法にかかわる国家機関の問題であり、たんに「個人」の問題として扱うことのできない問題である。したがって、その「代替わり」に伴う「儀式」については、憲法で「国権の最高機関」(第四十一条)と定められた国会で、その態様の是非、具体的内容の是非を含めて十分議論すべきものである。この間の、天皇の「代替わり」に伴う「儀式」についての政府の対応及び国会答弁には、憲法の「主権在民」「議会制民主主義」の原則等に照らして、見過ごすことのできない重大な問題が含まれている。
 以下、この問題について具体的に質問する。

一 もともと天皇の「代替わり」に伴う「儀式」については、皇室典範が、「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う」(第二十四条)、「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」(第二十五条)と定めているだけであり、その具体的内容を定めた法律も前例もない。政府は昨年、これらの「儀式」についての「大喪諸儀概要」なる具体的文書を作成し、それに基づいて、天皇死去の当日(一月七日)に「剣璽等承継の儀」を、九日に新天皇の「即位後朝見の儀」をそれぞれ「国事行為」として行うとともに、「大喪の礼」など、天皇「代替わり」に伴う今後の諸「儀式」の内容を決定し発表している。
  ところが政府は、これらの「儀式」に関する日本共産党議員の質疑や説明要求に対して、事実上答弁や説明を拒否してきた。たとえば、東中光雄衆院議員が衆院決算委員会で、これらの「儀式」の具体的内容についての政府の計画・見解をただしたのに対して、「儀式は、憲法の趣旨に沿い、かつ、皇室の伝統等を尊重したものになると考えております」などと抽象的に答えるのみで、「具体的内容につきましては、現在、お答えのできる段階ではございません」と、事実上答弁を拒否した(小渕官房長官答弁、八八年十一月八日)。また、柴田睦夫衆院議員が、「儀式」の具体的内容についての質疑を行うにさきだって、関係省庁の事前の説明を求めたのに対しても、「こういう時期なので、ひたすらご回復を祈っている段階であり、レクチュアは勘弁してほしい」などの理由を挙げて拒否した(八八年九月二十六日)。
  「天皇の病気」を理由に答弁や説明を拒否することは、戦前の専制的天皇制のもとでの「不敬罪」の発想に類するものというだけでなく、天皇を特別扱いして、国家機関である天皇についての国会議員の質疑を許さず、「国権の最高機関」としての国会を無視することを意味するといわなければならない。また、本来国会議員は、憲法上、国政にかかわるいかなる問題についても政府に質問し、説明を求める権利を有する。まして、天皇の「代替わり」に伴う「儀式」は戦後はじめてのことであり、しかも、憲法・法律制度にかかわる重大問題である。主権者国民を代表する国会議員が、この問題について、憲法・国会法が保障する審議権・質問権を行使して、政府に質問したり説明を求めたりすることもきわめて当然のことである。
  政府は、いかなる根拠に基づいて答弁・説明を拒否するのか、具体的に答えられたい。さらに、政府は、国会議員のこれらの権利が、天皇の「代替わり儀式」問題に関しては及ばないと考えているのか、明確に答えられたい。
二 政府は、これらの「儀式」を、「憲法の趣旨に沿い、かつ、皇室の伝統等を尊重し」て行うなどとしていたが、実際の「儀式」は、明治憲法下の旧皇室典範・旧皇室諸令をほぼそのまま踏襲する内容と形式で行われるものである。いうまでもなくこれらの旧法令は、現憲法と両立できないものとして、憲法の、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(第九十八条)との規定にしたがって失効・廃止されたものである。
  政府は、これら明治憲法的発想に立つ「儀式」を事実上復活させることと、憲法の「主権在民」の根本原則が両立しうるものと考えているのか。もし、そうだとすれば、いかなる理由と根拠に基づいて両立しうるというのか、具体的に示されたい。
三 皇室の主宰により神道にのっとって行われる「葬場殿の儀」に、首相はじめ三権の長が出席するとともに、政府は、「国事行為」としての「大喪の礼」と「葬場殿の儀」を一体のものとして挙行し、かつ、内外の招待者に対してこの両者への参列を誤導しようとしている。また竹下首相は、おなじく神道儀式として来秋行われる予定の「大嘗祭」について、従来の、「(政教分離を定めた)憲法二十条第三項の規定がございますので、そういう神式のもとにおいて国が大嘗祭という儀式を行うことは許されないというふうに考えております」(一九七九年四月十七日、衆院内閣委員会での真田法制局長官答弁)との政府答弁を、「許されないとは言っていない」などとねじまげたうえ、「国事行為」として行うかどうかについて「予見をあたえるようなことはしない」「答える必要がない」などと述べており、渡辺自民党政調会長は、「大嘗祭」を「国事行為とするかどうかは今後の課題だ」が「ぜひやらなければならない」(一月十一日の講演で)と述べている。
  政府は、このような宗教儀式に国が関与することが、「政教分離」の原則を保障した憲法第二十条の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」との規定に反するものとは考えないか。違憲ではないというのならば、その具体的根拠を示されたい。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.