答弁本文情報
昭和二十二年八月六日答辯第三号
(質問の 三)
内閣衆甲第七八号
昭和二十二年八月六日
内閣総理大臣 片山 哲
衆議院議長 松岡駒吉 殿
衆議院議員石山賢吉君提出産業科学研究機関の設置に関する質問に対し別紙答弁書を送付する。
衆議院議員石山賢吉君提出産業科学研究機関の設置に関する質問に対する答弁書
御質問の趣旨にあります通りインフレの克服も生活の安定も一にかかつて生産の増加にあり、生産の増加には産業科学技術の振興が極めて重要な役割を果すものであることは申すまでもありません。このために科学を應用し、生産技術の水準を上げるよう努力すべきであることについては誠に同感でありまして、政府としましても産業科学研究の振興には極力力を注いでおり、特に研究が或る程度完成し今一歩研究すれば應用できるというような研究で経費その他の点で行き詰つているような研究に対しては、政府補助金を交付致してこれを助成し、又この種の民間研究機関に対しても優秀な研究業績を有しながら経営上困窮しているものに対しては補助金を交付してその機能を維持せしめるよう努力して参つております。
ただ、産業科学研究機関の新設の点でありますが、現在國家として窮迫した資材、財政事情等では新しい研究機関を設置することは極めて困難なばかりでなく、たとえ新設することができたとしましても、それが十分な研究活動を行う成果を挙げるに到るには相当長い日子を要するものと考えられます。
一方わが國には産業科学研究機関としては相当有力なものがかなりの数あるのでありますが、それらは残念ながら現在種々の理由で活発な活動を阻害されているという現状であります。
かれこれ勘案致しますと現在のわが國の事情では、先ず以て既存の研究機関を最大限に活動できるようにすることが実際上最も時宜に適した有効な方途であろうと考えられるのでありまして、政府としましては、この方面に重点を置いて施策を進めているのであります。勿論画一的な考えではいけませんので、産業科学の部門でも既存の研究機関で果し得ないような研究部門があり、且つ緊急を要するようなものがあるとすればこれに対してできるだけの努力をはらいたいと思います。