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答弁本文情報

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昭和二十五年三月十四日受領
答弁第七八号
(質問の 七八)

  内閣衆質第五四号
     昭和二十五年三月十四日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員小(注)忠君提出肥料配給公団存続に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小(注)忠君提出肥料配給公団存続に関する質問に対する答弁書



一 化学肥料の需給状況について

1 肥料の価格、農家の購買力等の経済的條件を考慮の外におき、且つ農業構成も一応現状のままであるとして、農業生産の最高を確保するためには、少くとも窒素質肥料は硫安換算二五〇万トン、燐酸質肥料過燐酸石灰換算一八〇万トン、加里質肥料は加里塩四〇パーセント換算で四五万トン程度必要であると考えている。
2 肥料に対する農村の購買力、すなわち有効需要がいくばくであるかということは、現在においても測定することは極めて困難であるが、参考までに昨年秋農林省が調査当時の消費者価格より六割値上げすることを前提として全国農家より報告を求めて集計した結果によれば、窒素質肥料硫安換算二一五万二千トン、燐酸質肥料過燐酸石灰換算一四九万四千トン、加里質肥料加里塩四〇%換算四九万トンとなつており、これに官公需用、工業用その他を勘案すれば、窒素質肥料二三一万六千トン、燐酸質肥料一六一万トン、加里質肥料五三万トン程度が見込まれる。
  本年八月以降来年七月末までの二十五肥料年度については、価格補給金の大幅な削減が予定されており、消費者価格の値上りがあるので、有効需要量が果していくばくになるかをにわかに測定することは困難である。
3 前に述べた如く、今後有効需要量の推移を正確に、具体的に予測することは頗る困難であるが、有効需要量が著しく低下して農業生産を阻害するような事態が生じるおそれも考えられるので、農林金融、価格政策等多方面から総合的な政策を改めて樹立して、そのような事態の生じることを未然に防ぐよう、極力具体案を検討中である。
4 二十五肥料年度について申上げると、窒素質肥料の生産は電力及び原料の事情に俟つところが多いが、一応硫安一四三万五千トン、石灰窒素四二万トン、計一八五万五千トン程度を見込んでおり、燐酸質肥料は燐砿石の輸入が予定通り行けば約一六〇万トンを供給する見込である。
5 (イ)窒素質肥料については、一九五一米会計年度の援助資金による輸入は現在のところ期待できない状況であるが、前年度の援助資金による輸入のずれを約二〇万トン位見込んでいる。
  (ロ)燐砿石の輸入は約九〇万トン予定している。
  (ハ)加里質肥料は約三五万トンを輸入によつて確保するよう努力する。
6 前に述べたように、国内の肥料の生産能力は相当伸びたとはいうもののなお燐砿石、加里塩類以外の輸入をしないとすれば、肥料配給の円滑を確保するうえからみて、非需要期の肥料のストツクが多少あつても年間を通じてみればなお輸出する余力はないと思われるので、今のところ肥料の輸出は考えていない。

二 肥料価格の値上りについて

1 肥料価格差補給金は一応二十六年三月までの予算を組んでいる。廃止により各肥料の生産者価格はどれ位になるかということはそれまでに電力、原料資材、輸送費等の価格改訂があるので、唯今のところ推定はむづかしい。
2 硫安の生産者価格は早急に一本化するよう、その時期について研究中であるが、一本化した場合でも国内総生産量が現在以下に減少するとは思わない。
3 終戰直後の経済的混乱を速やかに收拾復興するため、食糧増産のために必要な肥料供給を確保するため、肥料工業を重点産業の一つとして取上げ、いわゆる傾斜生産を続行したことは御承知の通りであるが、これがために肥料工業に対して御意見のようにぼう大な利潤が保障されているということはいえない。
  ただ肥料工業も今や相当程度復旧してきたので、国庫支出の補給金の漸自削減と併行して、今後は肥料生産者配給業者消費者等各段階の価格、手数料等については、ますます適正に決定してゆくつもりである。
4 パリテイーの費目中の肥料だけの値上り分を考えるならば、本年八月消費者価格が七〇%値上りした場合、米価は石当り約三百円見当値上りする見込である。
5 来肥料年度の需給計画が決定していないので、価格値上げにより、農家の支出増がいくらになるかは、算定できないが、本年の春肥だけについてみれば、約七〇億円の支出増となると見込んでいる。
  価格値上りによる増加営農資金は農業手形の活用等によつてまかなうよう指導し、極力需要減退のおこらないようにしたい。

三 肥料配給公団廃止の時期について

1 肥料がわが農業生産に占める地位の極めて重要であるのにかんがみ、肥料配給公団を一挙に全廃することは農業生産に不測の支障を生じるおそれがあることと、その機能を民間に移讓する際その受入態勢を漸時準備させるために漸進的な方法をとつたのである。
2 御意見の趣旨はよくわかるが、肥料配給公団令第七條にもとずいて経済安定本部総務長官の命令で同公団は何時でも解散させることができるのであるから、存続期間を一応一年延長する法律改正を行つて、県段階以下廃止後、中央段階の整備をまつて可及的速やかにする方がより妥当であると考えるからである。
3 現行の小売業者の登録によつて各都道府県内に複数の卸売業者を選出する。これらの卸売業者は小売業者と同じく、農林大臣の認可を得て公団が指定するようにする。肥料配給公団は各都道府県段階の卸売業者に消費者最寄駅で肥料を販売するようにするつもりである。
4 公団廃止の際には、できるかぎりストツクを少なくする方針をとるつもりであるが、廃止の際のストツクについては受入側の民間業者に引取資金を融資して、その讓渡態勢を整えてから漸時円滑に引き取らせるようにしたい。

四 肥料割当制度について

1 農家の購入希望に対応する方式すなわち相当程度有効需要に即応して配給し得るような方法を目下研究中である。
2 消費者価格の値上りを段階的に行つて不需要期の肥料引取を強要したというのは誤解であつて、補給金削減の要請が生じる以前から肥料の需要期と不需要期との間に価格差を設定するという考え方はもつていたのであり、たまたま補給金削減の必要が、この考え方と一致した時期にあらわれたのである。又補給金を漸時に削減する方が、一時にそれを全廃するよりも農家経済えの影響がより少くて済むと考えたからである。
  需要期と非需要期との価格差を設けるという考え方は今後も研究して制度化してゆき度い。
  なお非需要期の肥料の予備貯蔵的な機能は、御意見のような方法を講じたいと思う。

五 公団廃止後の肥料の金融政策について

  大蔵省預金部資金の活用、肥料配給手形制度の創設等の融資方法を目下検討中である。

六 肥料審議会の設置について

御意見の通りであるので目下この種の審議会の構成、性格設置の時期等について鋭意研究中である。

 右答弁する。




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