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答弁本文情報

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昭和二十五年十二月八日受領
答弁第六六号
(質問の 六六)

  内閣衆質第六六号
     昭和二十五年十二月八日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員(注)田甚太(注)君提出福岡県における水田用トラクターの使用成績に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員(注)田甚太(注)君提出福岡県における水田用トラクターの使用成績に関する質問に対する答弁書



一 水田用日本製トラクターには現在二種類がある。

 一つは、従来より特に昭和一五、六年の戰時中より相当実用化され最近その普及量三万を超えると推計される自動耕耘機であり、これは水稻作の中最も基本的且つ、重労働である耕起と碎土の專用に使われ、麦作の中耕にも使われる。この基本作業が緩慢な手労働によるときは、適期を失したり、浅耕になつたり、又他の連接作業を粗略化するので、二毛作地の米麦作重複作業や適期間の短かい單作地の増收あるいは二毛作化に重用されつつある。
 今一つは、昭和二十二年末頃ようやく試作機を完成したばかりで、すでに本年普及量六〇〇台を超えているハンド・トラクターであり、これは耕起より收穫までの一連の圃場作業が作業機部分のとり換えによつて全部できるし、エンジンを利用して、動力噴霧、脱穀調整までできる汎用機械である。


二 このような小型トラクターの普及に対する政府の指導対策としては、一般経済合理化の線に沿つて、これ等の機械利用による農業の能率化、精密化、ひいてはその効果として、すでに頭打ちしている土地生産性、土地利用率の向上、労働生産性の引上げのため、極力その普及に努めているが、しかしあくまで各地域の特殊性を考慮し、機械化の経済効果を愼重に分析検討した上、普及を図つているのであつて、その裏付けとして、左の調査研究をしている。

1 トラクターの研究改良の試験
 農林省関東東山試験場、青森県試験場を中心に各地試験研究機関において、專門的に機構及び性能の研究並びに実地試験を継続しており、又製作者の依頼に応じて、常時性能検定を行い、公正信頼できる性能表示を行つて、製作者の改良を促している。現在のところ、なお、改良を要する点も多々あるが、それでも人力の六ないし九倍の能率と1/6ないし1/19のカロリー所要低減を示している。反当收量も最低五%の増收であり、労働当り生産量は約倍になつている。

2 トラクター利用の実態調査情報しゆう集
 トラクター利用の先進地又は多收篤農家表賞にみられるトラクター利用農業の生産技術並びに経営高度化の実態を調査し、一般経営改良の指標を研究している。現在、北海道、青森、宮城、新潟、神奈川、岐阜、岡山等を調査中であるが、すでに普及量二千台を超える福岡県においても、九州大学に委託して、三潴郡木佐木村を中心に調査中である。

3 農村に対する実演指導
 農林省主催又は農業機械化協会等の民間団体の主催、又は共催で農村現地において、実演研究会を昨年来すでに一〇〇回以上開催し、農民の意見を求めて、その土地ごとの適応性を検討して改良と普及に努めている。


三 トラクター普及に対する都道府県の指導措置

 各都道府県においても、農事試験場等において利用試験を行う一方、北海道、東北、北陸、関東の諸県においては助成金を交附して普及に努めている。


四 トラクター普及に対する製作会社の態度

 自動耕耘機メーカーは約二十社、月産能力最大のもの一〇〇、最小のもの四、五台で製作数量は月産約二〇〇台である。ハンド・トラクターは三社(中休止一社)月産一〇〇台である。これらの会社は單独で、あるいは協同で研究会実演会を開催して、次々に改良を加え、または新型機を作出している。又、農業者へのサービスとしては、代理店の再養成をなす一方、農林省の要望に基き農業協同組合の農機具関係者を自工場に無料招へいして利用及び修理技術の短期講習を開いたりしている。その製品に対する責任として、破損理由が農民側にあると否とに関せず、無料新品取替を四回も続けて信用維持に努めているところもある。企業的には苦境にありながらも、従つて不充分とは言え、改良とサービスへの努力と熱心さは巨大なアメリカ農機具会社の範に対応するものと称して良い。その結果一町村一度に一二〇台も導入した事例が見られる。


五 結論

 以上のごとく日本製小型トラクターは最近急激に普及しつつあり、その結果増産並びに経営の多角高度化を進めている(機械のない多角化はかえつて失敗している。)が、問題は一台当り八万−十五万円の高価格である。府県によつては、半額助成をしていることは先述の通りであるが、一般的には農業金融の対象として考慮しなければならない。一台年間作業を一〇町歩とすれば、五、六年で回收できるもので決して危險な融資対象ではない。もつとも故障の防止、修理の簡易化、迅速化のサービスの完備が伴わなければならない。農林省においては農業改良局に農業機械化推進協議会を設けて、機械の改良、合理的な利用法、農法及び経営の改善、サービス機構の整備等日本農業機械化、能率化の問題を、專門家、農業者、製作者等を結集して、研究し推進している。


 右答弁する。




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