答弁本文情報
昭和二十六年四月二日受領答弁第七三号
(質問の 七三)
内閣衆質第七三号
昭和二十六年四月二日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 林 讓治 殿
衆議院議員足鹿覺君提出食糧対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員足鹿覺君提出食糧対策等に関する質問に対する答弁書
一 政府は、食糧事情が現在より惡化するとは考えていない。
輸入食糧の見透しについては次の通りである。
イ 政府は、十月 ― 十二月及び一月 ― 三月外貨予算において、それぞれ一億ドル乃至一億二千万ドルの多額にのぼる外貨予算を編成して買付を急いでおり、更に四 ― 六月外貨予算においても相当額を組むべく努力しているので、外貨資金面からする食糧買付の不安は全くない。
ロ 昨年末から本年頭初にかけて、外国食糧の価格及びその船賃は相当の値上りををみせたが(別紙一参照)最近両者とも或る程度の落着きを示しており、必要量の確保に支障がないものと考える。
ハ 最近の到着実績は、一月二六万トン、二月二〇万トンであり、逐次上半期における輸入不振を取戻しつつあり、更に三月においては戰後最高の配船を行つた状況であるので、目下のところ食糧の積取りに要する船腹の不安は先ずないものと思われる。
ニ 主要供給国の供給力は別紙二の通りであり、特に、米国はわが国にとつてきわめて有力な供給源である。
ホ 世界の政情不安から昨夏以来、諸国が食糧の確保に努力しているのは周知の通りであるが、政府としても愼重な注意と格段の努力をもつて、食糧の輸入については万全の配意をなし食糧事情に不安なからしめる所存である。
別紙(一)
最近における外国食糧の価格及び運賃
一 一九五〇年四月以降十二月までの価格については、四半期毎の価格の中から最高価格をとつた。
二 本年一月以降における価格は、民貿により買付られた価格中買付ごとにその買付価格の最高をとつた。
三 価格は、CIF価格をとつたが、タイ米についてはFOB価格である。
四 銘柄は、タイ米、エジプト米、アメリカ小麦及び大麦、カナダ小麦をとつたが、その他のものについては、継続して買付を行つていないため比較を行うことができない。
五 タイ米については碎米混入率五%〜二〇%のものに限定した、なお、香港経由によるものは除外した。
別紙(二)
三 政府は輸入麦を操作することによつて、市価の暴騰を抑制しうることを確信している。したがつて、米の供出が強化されることもない。
四 政府が、麦類について政府売渡を命ずる場合は、国際情勢の推移、経済事情の変動等により、国民食糧の確保が国民経済全体の安定確保のため特に強く要請される場合である。
二十六年産麦は、統制を撤廃しても、現状では国民生活を脅かすことはないから、今後客観情勢にいちじるしい変化のない限り二十六年産麦について政府売渡を命ずることはないと信ずる。
五 万一米が不作であつた場合には、外米の輸入の増加を図ることはもちろんであるが、麦についても輸入補給金を附した原麦を需要量に応じ放出し、麦製品を安く消費者が入手しうるようにすれば、米の消費は麦によつて代替されるから、米価が暴騰することは抑制しうる。不作の場合いたずらに米作農家にのみ負担を加重するような措置は絶対にとらない。
六 麦の政府買入価格は、今後の国民経済全体の動向を考慮し決定すべきものと考える。したがつて対米価比についても、再検討すべきものがあれば、再検討する。
七 政府は、麦価の安定について確信を有するから、麦価が、米価に影響する線まで騰貴することは先ずないもの考える。
二重価格制の採用は、現在の財政の基本構想からその実施はきわめて困難に近い。
八 麦の国内流通量の約三分の二を政府がは握しているので、思惑の余地はほとんどないものと考えられる。麦の政府買入価格は農業パリテイ指数によつて定められるから、物価があがれば麦価もそれに応じてあがり、農家が麦を政府に売渡せば、農家が麦作の再生産持に困難を感ずるような事態が発生するおそれはないものと確信する。
右答弁する。