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答弁本文情報

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昭和二十六年十一月十六日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質第二号
     昭和二十六年十一月十六日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 林 讓治 殿

衆議院議員浦口鉄男君提出地方財政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員浦口鉄男君提出地方財政に関する質問に対する答弁書



一 地方財政の状況は、毎年増加の一途をたどつており、これについては地方行政の規模と内容について検討の余地を有するものと思うが何れにしても現在これがため相当財源不足をきたしているので政府としては、今次補正予算において交付金百億円を増額する外、別に地方債において百億円の増額を行つたのである。平衡交付金制度は、創設後なお日浅く充分完成の域に達していないため、財政收入額を超過する需要額を充分に補てんしているかどうかは総合的な立場から判定する外はないが、さきに交付金増額百億円の両院の決議の次第もあり、政府としては更に充分検討することといたしたい。

二 測定單位は、交付金制度と地方自治との調和と交付金交付の公正を図るため、客観的に明確であり恣意や作為の介入の余地を伴わないものを選択する必要があり、このため若干現実に合致しない点が生じてくることはやむを得ないことである。しかしながら、現在の測定單位について今後充分検討を加えた上、更に改善をする必要のあるものについては、逐次改善を加えていきたいと考える。補正係数についてもその補正事由を同様の趣旨において将又技術的な面から重要であり普遍的であり且つ、主観的要素によつて左右せられないものを選択する必要があり、又その補正係数は、現在合理化の過程にあるため、実情に即さない点が或程度生じてくるのであるが、更に調査研究を遂げ可及的実情に即するように改善を加えて行くことといたしたい。しかして、制度の建前上やむを得ず不充分となるものについては、別途特別交付金制度の運用により補充する予定である。

三 單位費用は、一応地方税收入と交付金の総額等を勘案の上その範囲で可能な程度の行政を維持していくに足る程度に算定しているのであるが、今後検討を加え、合理的なものとして行きたいと考える。

四 基準財政需要額の測定は、客観的な権威ある統計や公簿に登載されている充分な信憑性のある資料の一定期日現在の数値に基いて地方財政委員会規則に定める補正係数、單位費用を用いて算定しているのであり御質問のごときいわゆる査定ということはないのであるけれども運用面に当つては充分留意していきたい。

五 国が地方団体に事務を委託する場合はこの事務を遂行するに足る財源措置をすべきことは、地方財政法にも規定されているとおりであり、地方財政委員会としてもこの点について努力しているのであるけれども、現状はこれが嚴格に実行されていないことははなはだ遺憾であるが、今後ともこれが措置については善処していきたい。なお、国の委託事務を減ずるかについては、別途中央、地方を通ずる行政簡素化の実施とあわせて検討していきたい。

六 普通交付金の算定は、この制度と地方自治との調和又は公正な配分等の要請に基く技術的な制約のため、或る程度画一的な方式を採らざるを得ず、又主として算定技術上の必要から、一定の算定期日を設けその期日現在において算定するため、一般の算定方式により測定し難い財政需要や財政收入及び算定期日後に生じた災害その他特別の事由に因る財政需要や財政收入の変動は当初から予定されないので、これに対処するためには現在の暫定的な特別交付金制度を恒及化しこれによりこれを捕そくして公平な交付金の配分の完全を期する必要があるのではないかと考える。

七 交付金は、従来の地方配付税制度が先ず総額を都道府県と市町村に分割し、これに基いて配分していた方法と異り客観的に測定した基準財政需要額が基準財政收入額をこえる額にあん分する方法を採つているのであるが、今次補正予算による交付金増額をめぐる都道府県と市町村間の意見の相異は、この交付方式に対する充分な理解を欠くことによるものと思われる。政府としては、交付金法の定めるところにより、公正妥当な配分を行いたいと考えている。

八 御承知の如く、地方財政委員会は、昨年五月三十日発足し、委員は五人(うち三人は都道府県、市及び町村の連合組織の推薦するもの。)で両議院の同意をえて内閣総理大臣が任命することになつており、任期は三年である。現在御質問のような委員の構成に異論があるというようなことは部内においてはないのであり、従つて一部編成替をするといつたこともいまのところ考慮されていない。

九 総ての地方団体に対し、その行うべき行政を充分に遂行するための財源の保障は可及的独立税の如き自主的財源をもつて行うことが理想であるが、税源の地域的偏在のためいかなる税制改革を行つても一万有余の地方団体に普遍的に財源を與えることは不可能であり地方財政調整制度は欠くべからざる制度であり、現行の交付金の交付方式はこの財政調整の方式として最も合理的なものと考えられるので現在の不完全な部分は今後とも十分検討を加え益々合理的な基礎の上に置くことにつとめて本制度を存続したいと考える。


 一 税制懇談会の中間決定によると酒税及びたばこ專売益金の一部を地方に委讓することとされているようであるが、地方財政の窮状を打開するためにはきわめて望ましいことであると考える。租税負担が限度に達している今日、財源を住民の直接税負担の増加に求めることは不可能であつて、この際地方財源を拡充強化するためには国庫收入の一部を地方団体に委讓するの他はないのであるが、酒税及びたばこ專売益金は比較的安定性があり普偏性のある財源であつて、その一部を地方に委讓することは、地方税源の安定及び強化のため、きわめて望ましいことである。

 二 政府としても目下具体案を研究中であるが、酒税及びたばこ專売益金の一部を地方に委讓する際には、これをもつぱら府県の財源に充て、且つ、独立税とするよりも還付税として配分することが適当であろうかと考える。府県税については、シヤウプ勧告に基く、先般の税制改正によつて、市町村の税源が著しく強化されたのに対して府県の税源は殆んど強化されなかつたため、市町村に比して府県の財政がより窮迫していること、府県税制は、事業税、遊興飮食税、入場税等の都市的な税目を中心として組み立てられているため税源の偏在が著しいこと等の著しい欠陷があるので酒税及び專売益金の一部を地方に委讓するにあたつては、還付税としてまず税收入の不均衡を是正し、これを基礎として、平衡交付金を配分することが府県の税源を強化し、且つ、著しい不均衡を是正することとなろうと考える。

十一 現行の地方税制はいわゆるシヤウプ勧告の線にのつとり、一昨年根本的に改正せられたものであるが、その後における社会経済事情の変化はこの地方税をもつてしては、地方財政需要を充足し得ない状況にあるのみならず、税種間の負担の均衡等についても、再検討すべき余地を残しているのである。政府としては、これらの事情を勘案の上目下鋭意検討を加えておるのであるが、住民の租税負担が限界に近い今日單純に財政收入の不足額を地方税の増税に求めることは適当ではない。よつて、先ず地方行政事務の簡素化等経費の縮減を図り、財政規模を極力圧縮した上でこれに見合うべき地方税の所要量を求め、その上で国税との連関をも勘案し必要税收入の確保を図るよう地方税制上所要の改正を加えるべく、目下研究中である。

十二 長期低利債の発行は、地方債の性質上望むところであるが、現在の地方債の融資は全面的に大蔵省資金運用部資金に集中しているので、この融資條件に従つており、この條件は、一般民間金融機関の融資條件に比し相当有利であるが、運用部資金の採算性等をも考慮する必要があるので早急の実現は困難でも、将来できるだけ長期低利債の発行に努力したい。

十三 政府としては、義務教育費を地方財政平衡交付金制度からはずして別途教育費のみの交付金制度を設けるということは目下のところ考えていないが、現行交付金制度については、これに再検討を加え、その改善を図りたいと考えている。

十四 地方自治体として充分な自治行政能力を発揮し得ない程度の小規模地方団体を適正規模まで引上げるため合併することは、地方自治の充実のためにも、又財政的な見地からも望ましいと考えられ、かたがた地方行政調査委員会議の勧告もあり、政府としても、地方団体にこれが勧奨を行つている次第であるが今後とも積極的にこれを推進したい所存である。

 右答弁する。




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