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答弁本文情報

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昭和三十一年二月二十八日受領
答弁第五号
(質問の 五)

  内閣衆質第五号
    昭和三十一年二月二十八日
内閣総理大臣 鳩山一(注)

         衆議院議長 (注)谷秀次 殿

衆議院議員阿部五(注)君提出漁船の遭難救助に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部五(注)君提出漁船の遭難救助に関する質問に対する答弁書



一 現在、政府は海上保安庁に、巡視船九十五隻(うち遠洋の救難行動に従事できる二百七十トン型以上五十四隻)、港内艇二百九隻、ヘリコプター六機を有し、船艇の基地として全国主要港八十八箇所にわたりまして、海上保安部署(海上保安監部一、海上保安部五十、海上保安署三十七)を設け、その他の主要地域に五航空基地(函館、館山、大村、舞鶴、新潟)を設置し、巡視船艇は、海上保安部署に、ヘリコプターは航空基地に、それぞれ配置し、何時いかなる海難救助にも対処できますよう、常時、船艇、航空機を待機せしめまして、現有勢力をもつて最大効果を挙げるよう海難救助態勢の確立を図つております。
  なお、本年三月には、遠距離行動の可能なビーチクラフト二機が館山に配属される予定でありまして、救助態勢の向上を期待することができるのであります。
  このように政府は、従来、救助施設の整備充実に努めてきたのでありますが、なお、一層整備強化する必要が認められますので、今後ともこれに努力する所存であります。

二 海難が頻発し、あるいは大規模な海難が発生したため救助活動に要する船舶運航費、その他経費に不足を生じました場合には、既定経費を差し繰り万全の措置をとる所存でありますが、なお不足の場合には、予備費支出の手段を講じましても救助活動に当る所存であります。

三 昨年九月労働者災害補償保険法を改正してからの漁船に対する同法の適用状況は、法律改正直前の八月末における適用労働者数六万四千九百人に対し、昭和三十年末における適用労働者数は十一万八千四百三十九人となり約二倍の増加率を示しております。
  また、これに対する補償費の支払状況は、改正前においては毎月平均して件数において約六百二十件、金額において約八百八十三万円でありましたが、改正後においては毎月件数において約八百十五件、金額において約二千三百万円となり、いずれも著しく増加しております。
  次に総トン数五トン以上の漁船を強制適用とし、それ以下の漁船を強制としなかった理由は、

 第一に、五トン未満の漁船は一般に陸地に近接した場所で操業しておる関係上、災害の発生が比較的少なくなつていること。

 第二には、一般に漁船に乗り組む労働者数は、五トン程度の船においては大体平均五人位となるのが実態であつて、他の一般の製造工業等においては常時五人以上使用している場合に労災保険の強制適用事業としている関係上これとの調整を考慮したことに因るものであること。

 第三に、総トン数五トン未満の漁船による事業は、近代的保険関係に入る態勢がきわめて不備であること。

 等によりますが、しかし一方においてはこれらの船主に対しましても努めてその態勢を整備せしめて任意加入するよう積極的に指導勧奨し、労働者の不安の除去と保護に遺憾なきを期したい所存であります。

四 国民の生命を保護するための措置を講ずることが国の基本的な任務でありますから政府が海難救助を実施する任務を有することは明らかでありますが、このことの結果として、個々の国民が法律上国に対して具体的な救助の請求権を有することになるとは思われません。従つて国による債務不履行が成立する余地はないのでありますから、国は、当該国民に対しその損害を賠償すべき法律上の義務を有しないものと存じます。
  しかしながら、国民の生命を保護することが国家の本質的な使命であつて、個々の国民に対し恩恵として与えられるものでないことは申すまでもないところと存じます。

五 第一栄光丸の捜索については、該船の遭難地点が本邦南方洋上七百五十浬の遠距離であつたため米軍航空機の出動を要請いたしまして海空よりする一週間にわたる捜索を行つたのでありますが、諸般の状況を勘案して、同船の生存の見込がほとんどないものと判断致し、かつ、たまたま該船船主からその労苦を深謝せられ、捜索を打ち切られたいとの連絡を受けましたので捜索を打ち切ることにしたものであります。
  なお、政府におきましては、人の生命が至高の価値を有することを常時念頭に置いて万難を排して海難救助の業務遂行に当つているものであります。

六 政府は、本船の代船の取得のため、必要がありますれば、融資のあつせんにつき努力する所存であります。

七 船員保険は、被保険者たる船員及び被保険者を使用する船舶所有者が拠出する保険料を財源として、船員の相互救済及び船舶所有者の船員に対する災害補償責任を保険することを目的として運営されるものでありますから、法定の給付を行うことのほかに、本件のごとき場合において特別に見舞金その他の金品を支給することは、その性質上行うことができず、又、別途遺族に対して見舞金等を支給する処置をとることは、考えておりません。

 右答弁する。




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