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答弁本文情報

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昭和三十二年十一月十二日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質第一号
    昭和三十二年十一月十二日
内閣総理大臣 岸 信介

         衆議院議長 (注)谷秀次 殿

衆議院議員岡本(注)一君提出京都府井手町有林濫盗伐事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員岡本(注)一君提出京都府井手町有林濫盗伐事件に関する質問に対する答弁書



 質問の件は、京都地方検察庁検察官が、昭和三十二年五月三十一日、いずれも不起訴処分に付した小林清章に対する公文書偽造等被疑事件及び木田善之助外一名に対する背任等被疑事件のことと思われる。
 右事件は、昭和二十九年五月二十六日同地方検察庁検察官が右木田善之助外四名に対する背任等被疑事件を不起訴処分にした後、同事件と同一の被疑事実を含む事実につき新田義一等より告訴及び告発されたものであり、右告訴又は告発にかかる事件の被疑者及び罪名並びに告訴又は告発の年月日は次のとおりである。

公 文 書 偽 造
同行使森林窃盗
山   林   業 小 林 清 章
  (旧名清晴)
昭和三十年八月三日
背       任 井手町町議会議員 木 田 善 之 助 昭和三十一年十月十日
背       任 井手町町議会議員 森 田 守 三 昭和三十一年十月十日

 右告訴及び告発を受理した京都地方検察庁では、鋭意捜査を遂げた結果、右各事件につき犯罪の成立を認めるに足る証拠がなく、結局犯罪の嫌疑なきものとして右三名を前記のごとく不起訴処分に付したものである。

 本件被疑事実の要旨並びに不起訴処分理由の概略は次のとおりである。

一 被疑事実の要旨

 第一 被疑者小林清章は、株式会社小林清章商店の取締役社長にして、昭和二十七年末、京都府綴喜郡井手町が町有林を公売するに当り、落札人としてこれを買い受けたものであるが

(一) 同年十二月二十八日、右町有林買受人として、当時の井手町町長木村延次郎との間に同町字山吹四、五、六、七番地内の松立木及び山吹地内「スベリ石」の杉、檜立木を金三百五万円で売買する旨の売買契約書を取交したが、翌二十八年一月十日頃、行使の目的をもつて、ほしいままに、右井手町役場において同町吏員武田敬一に対し、右売買物件を不当に拡張して記載した売買契約書二通を示し、「町長の承認を得てあるからこれに町長の記名押印をしてくれ」と要求し、同人をして右契約書二通の売主欄に井手町長木村延次郎の記名押印をさせて同町長作成名義の公文書二通を偽造した上、即時同所において、内一通を右武田に交付し同町役場に備付けさせて行使し

(二) 同年一月下旬から同年四月下旬頃迄の間に、小林清章商店の使用人をして、保安林である同町字滝谷三番地内の山林において、井手町所有の松立木一千二百四十八本(約一千百五十七石)を伐採させてこれを窃取し

 第二 被疑者木田善之助、同森田守三は、いずれも昭和二十六年以降前記井手町町議会議員の職にあつたものであるところ、同町が町有林を売却するに当り、昭和二十七年十一月二十三日当時の同町長木村延次郎から右売却林に関する調査委員を委嘱され、売却予定地域の選定、売却立木の材積調査等の事務に従事し、引き続き同年十二月二十三日町有林売却委員を委嘱されて売却町有林の公売、実地引渡等の事務に従事したものであるが、町有林売却委員として買受人に対し売却立木を引き渡すに際しては、同町町議会議決にかかる売却地域内の立木を引き渡すべき義務があるのにかかわらず、買受人である前記小林清章商店の利益を図る目的をもつて、その任務にそむき、昭和二十八年一月二十日頃、同町山吹及び字滝谷の町有林において、右小林清章商店使用人小林富次郎外一名に対し、議決外の地域である同町字山吹十番地内の松立木及び同地内の巨岩を境とする峰附近の杉、檜立木、山吹十一番地内の松、檜立木、同町字滝谷三番地内の松立木を引き渡し、因つて右小林商店をして、その頃から同年四月下旬頃までの間に、右地域内の松、杉、檜等の立木合計三千三百四十七本(約三千百二十二石)時価百七十一万八千二百円相当を伐採せしめて井手町に対し右金額相当の損害を与えたものである。

二 不起訴理由の概略

 第一の(一)の事実について、被疑者小林(注)章は、当初井手町長との間に取交した契約書を書き改め本件告訴にかかる第二の契約書を作成した理由は、当初取交した契約書の内容が不明確にして売主買主の別も明らかでなく、かつ売買物件の表示も明確を欠くきらいがあつたので、これらの点を明確にする意図に出たものであつて、右第二契約書に井手町長木村延次郎の記名押印を求めるに当つては、同町役場に出頭し同役場吏員武田敬一に対し、右契約書を示し「町長の了解を得た上でこれに町長の判を押して貰いたい」旨依頼し、同町長の記名押印を得たものであつて、右武田を介して町長の承認を得たものと思つていた旨弁解し、捜査を遂げるも右弁解をくつがえすに足る証拠がなく、又、右契約書の内容を検討しても告訴人主張のごとく当初の契約書に比し売買物件を不当に拡張したものと認め難く、結局被疑者が本件契約書中木村町長作成部分を偽造したと認めるに足りない。
 第一の(二)の事実について、被疑者は、井手町山林売却委員から引渡を受けた立木を伐採したものであり盗伐したものではない旨弁解し、これがくつがえすに足る証拠がない。
 第二の事実について、被疑者木田、同森田の両名は、本件山吹十番地、十一番地内の松、檜立木、山吹十番地巨岩より峰にわたる間の杉、檜立木、滝谷三番地内の松立木等はいずれも売却予定地として調査を行い、その結果に基き町議会においてもこれらの地域を売却地域として議決されたので、その議決に従い引渡を行つたものであつて、各々その任務に背いていない旨弁解するところ、右係争地域内の内山吹十番地、同十一番地内の峰附近の松立木及び滝谷三番地内の松立木については、実地調査をしたか否か、従つて町議会の審議及び議決の区域内であるか否かにつき関係者の供述が一致しないばかりでなく、被疑者の弁解に符合するものもあり、一方、関係者の供述を綜合すれば、本件山吹地域は当時通称を以つて呼ばれていたもので、公簿上の字名、地番が現地のいずれの地域に該当するやも明確でなかつたことが認められ、従つて被疑者等が売却予定地域を調査するに当つても、公簿上の字名、地番によることなく、現地において便宜選定した地勢又は物件を基準として区域を分ち、材種材積等の調査を実施している実情であつたのみならず、町議会の審議、議決においても、議案に表示された字名、地番と現地との符合につき正確を欠く点があつたものと推認され、かつ、公売入札に際して業者の質問に応じ、被疑者木田が当時の木村町長及び本件告訴人である当時の町議会議長古川善太郎等の面前において、前記係争地域全部を含めた地域の立木を売却する旨説明したことが認められ、町議会議事録の記載並びに係争地域における実況見分の結果に徴するも、被疑者等の弁解をくつがえし被疑者等が議決外地域の立木を不当に引き渡したと断ずることは困難である。又被疑者等に前記小林商店の利益を図り、あるいは井手町に損害を加える目的があつたと認めるに足る証拠もないので背任あるいは窃盗の嫌疑あるものと認め難い。
 なお、前記滝谷三番地内の松立木について、被疑者等がこれを保安林と知りながら前記小林商店に引き渡し、同商店使用人をして伐採せしめたとの告訴人の主張についてもこれを断定するに足る証拠はない。
 以上の次第で、京都地方検察庁においては、山林現場の実況見分を始め関係者多数の取調をなし、更に被疑者小林方の押収捜索を実施する等十分捜査を尽した上、本件を不起訴処分に付したものであり、本件に関する検察当局の捜査の経過及び処分結果には、非難すべき点を認めることはできない。

 右答弁する。




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